第2話 イツカヘノ憧憬
世が更け、朝が来る。当然のことだ。僕らはその当然を二度と送れなくなる日々がいつか訪れる。それは必然的なものでは無い。
その事に抗うことが出来るのならどうする?
その未来を帰ることが出来るのなら君はどうする?
仮に君が抗う道を選んだのなら、辛く厳しい破滅の道を歩むこととなるだろう。
しかし、僕らは決めたんだ。この2人で、あの雨の日から狂いだした運命の歯車を、修正してみせると・・・
「むにゃむにゃ・・・てとー」
まだ眠そうな様子が手に取るような声が隣から聞こえる。どうやら、まだ自分がどんな行動をしでかしているのかを理解出来ていないようだ。
「てとー?」
本来なら返事をするべきなのだろうが、状況が状況過ぎた
「お前はやっぱり理解し難い生き物だな」
「ふぇ?」
僅かばかりに寝癖がついている。銀嶺のような髪を左右に揺らしながら彼女、フェルは周りを見渡した。
「・・・何で、私のベットに居るの?」
「たわけ、僕のベットにお前が来ているんだ」
フェルはぽやーっとしながら、やっと理解したようだ。
・・・当然ながら頬を真っ赤にさせながら
「テトの、バカァァァァァァ!!!」
僕はフェルのビンタをくらい、暗転していく意識の中、
(100君の方が悪いよ、フェル・・・)
とボヤいているのであった。
「悪かったわね、いきなりビンタしちゃって・・・」
僕は起きると朝食(黒ずんだスクランブルエッグのようなもの)と彼女のまだ赤みが引いていない顔に出迎えられていた。
「いいよ、別にフェルは悪気はないんだし。それより、朝食作ってしまったの?」
「何よ、悪いの?黒いスクランブルエッグって珍しいわよね。私の料理の才能が開花して新しいものが出来上がったのかしら!」
僕は内心ではコレを食べて生きていられるだろうかと思いながら、いかにも残念そうな料理が置かれている席の前に座った。
・・・案の定舌がエクストリームでヘビーでホッピングするような味付けでなんかもう、安心しました。
食事を終えたら、僕らの日課である戦闘訓練が始まる。僕は、強化魔法のおかげで彼女の体力に何とかついて行っているけれども、自分が劣っているということに嫌気がさしてくる。
「私との訓練・・・楽しくない?」
フェルが不安げな表情で顔をうかがってくる。
「いや、不安にさせて悪かったフェル。自分の体の弱さが恨めしくなっただけだからさ・・・」
なぜ僕は、こんなにも弱いのだろう。そして、時々フェルのことを羨ましく思ってしまう。
「テトは、弱くなんかないわ」
「えっ・・・?」
「私が強ければテトとの練習試合なんて全て私が勝つはずよ。それなのに未だに勝ち越せないじゃない。」
僕は、胸の内に抱えていたモヤが優しく解けていく。
「でも、僕が君に勝ち越せないのも事実だ。」
「そうよ!悔しいけれどね。でも、それならそれでいいじゃない。昨日負けたけど今日は勝った。この前のジャンケンだって私が勝ったけどね!」
「君は、なんで2ヶ月も前のこと持ち出すんだ・・・」
「だって、あのジャンケンで負けたのほんっとに悔しかったんだもの!今でもあの時に戻りたいわ!」
「「プッ・・・アハハハハ」」
「君はやっぱり負けず嫌いだな。」
「あんただって負けず嫌いじゃない。」
くだらないことにこだわっていた自分が馬鹿らしくなっていき、次第には彼女に諭されてしまった。
しかし、楽しい時間というものが過ぎ去っていくのはいつも早いのだった。
カーン、カーンと対魔物用に設置しておいた警報が鳴る。
「・・・何っ!」
「魔物用の警報が鳴ったんだ!急いで向かうぞ、フェル!」
僕らはその先に衝撃の光景を目にすることとなる。
林をぬけ自分達の家が建っている場所へと向かうと、そこには片腕を失った行商人と思われる人を咥え、返り血を浴びてもなお、爛々と獲物を探す巨大な熊の魔物の姿があった。
「フェル、覚悟を決めろ。ここで死ぬかもしれない。」
「なーに、辛気臭いこと言ってるの?テト、私たちの英雄譚はこっからよ、こっから」
2人の小さな勇者は己の障壁となりうる敵へと駆け出して行った。
次回は、VSマッド・ベアー戦です
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