第2話 NPC

「まずいな。まずいぞこれは」


 右と左が押され始めた。そして、中央は押し込みはじめている。


「包囲の形だ」


 相手の指揮官。まるで、現実の戦場を動かすかのように、戦局を動かしてくる。


『戦場の中央を取りました』


 機械NPCから通信が来る。


「じゃあそこで待機」


 とりあえず生け贄にでもなっておけ。


「ええと」


 何人か呼んだ。


「後ろから間違いなく何か来る。迎撃して突破口を開け」


「うしろから、ですか?」


 NPCが疑問を述べる。


「レーダーにも斥候にも引っ掛ってないですが」


「だからだよ。何の動きもないというのが、あやしすぎる」


「なんですかそれ」


 NPCなんだからおとなしく従っておけよ。


「なんですかその顔」


「NPCはおとなしく従っておけよっていう顔だよ」


「へいへい」


「戦場の中央の隊は捨てる。どうせ囲まれて終わりだ」


 ちょっとざわつく。


「逃げるぞ。ここで負けても後で取り返せばいい」


「及び腰じゃん。NPCのくせに」


「ええ及び腰ですよ。NPCですから」


 自分の軍は、自分含めて全員がNPCだった。人はいない。


「よっし。なんか軍人みたいな動きをする人間プレイアブルに、NPCの底力をみせるぞっ」


 おう、というかけ声。まちまちで、ばらばら。


「おいおいおい。しまらねえなあ」


「だって逃げるんだもん」

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