エピソードTWENTYーFOUR

やばい・・・私・・・





そう思った時。何かが私を掴んで、私の体が宙に浮いた。



「棗さん!?」



私を抱いて脱出をしたのは、棗さんだった。



後ろでグラグラと大きな音がした。






「え・・・どう、なってるんだ・・・」



目の前が瓦礫の山になっており、何も残っていない。さっきまであったはずのシェルターは崩れ、ゴミのようになっている。






「棗・・・さん・・・」


私は棗さんの腕を強く掴んだ。








「香月・・・そうだ、香月。香月がいない。どこに行ったんだ。棗さん、さっきここに香月いましたよね。どこに行ったんですか?」



私は棗さんに問う。棗さんは、笑わなかった。





「あ、かくれんぼですか?やだなぁ。香月、もう出ておいでよ」



私は瓦礫を退けて香月を呼ぶ。






「やめなイトナちゃん」



「どうして?だって、探さないと。一緒に家に帰れないじゃないですか」





「やめなって言ってるだろ。香月くんはもう・・・」




棗さんが何かを言いかけた時だった。






「香月・・・の・・・香月!!!」



数枚の瓦礫をどけた先に、香月の付けていたピアスがあった。



私は必死になって瓦礫をどけた。








「やめなって言ってじゃん!」


棗さんの叫び声で動きが止まる。






「これだけ言ってるのになんでわかんないの!?香月くんは、いなくなったの!!!探しても見つかんないんだよ!!!だから、そんな必死になって探すのはもうやめな!」



言っている意味がわからない。香月がいなくなる?そんなはずないだろう。さっきまで、この場所に立っていた。さっきまで一緒に家に帰ろうって、手を差し出してくれていた。






その当本人が消える?神隠しか?





私は言われてもなお瓦礫を退け続けた。




「香月、どこ!?香月」



必死に探す。一緒に帰るって言ったのだ。いなくなるわけないじゃないか。








「イトナちゃん!!血が・・・」




棗さんが私の手を握った。




「あ・・・」



気がついたら、私の手は瓦礫を退けたため血まみれになっていた。痛くない。痛みを感じない。今私は、手よりも心が痛い。







「もう、やめよう?」



棗さんは真剣な目で私を見つめる。






「じゃあ、香月は探さないんですか?この瓦礫の下には香月が・・・」



棗さんが私の口を塞ぐ。









「お願いだからもうやめて!!この手見て!!!血塗れなんだよ!?痛みも感じないの!?そんなに必死になって探したって、この世から消えた人間は戻らないんだよ!」



棗さんの頬に涙が伝う。








香月が・・・死んだ・・・?












私は、香月のピアスを強く握った。





「両親が私を捨てて出てった日・・・」




「え?」






私は、香月との思い出話を語り始めた。

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