エピソードTWENTYーONE
あれから何時間たったのだろう。時間の流れが全く分からない。
「今度会ったら、絶対に失敗しないと決めていました。絶対手に入れて、大切にするんだと。だけど、彼女には会えませんでした。その代わりに・・・あなたが現れたのです!」
気持ち悪いほどの顔でそんなことを言われても、私はその人じゃないし、成り代わることなんてできない。
それよりも私は、この部屋に窓がないことの方が気になった。
どこを見ても窓がない。入口のドアのみ。外の景色が見えないから、今が朝なのか夕方なのかも分からない。
「何をキョロキョロしているんです?」
気づけばいつの間にか、生徒会長の目の前にいた。
「今、あなたが見ていいのは僕だけですよ?」
イケボが言ったらかっこよくなりそうなセリフ・・・なんて考えている暇はない。
第1、生徒会長にそんなこと言われたら気持ち悪い。虫唾が走る。
「あ・・・そういえばあなた、声優をされているんでしたっけ。じゃあ尚更かっこよくしないと」
しなくていいよ・・・そんな事を考えながら、私が立ち上がろうとした時だった。
「あ、あれ・・・立てない・・・」
立ち上がろうとすればするほど、足が麻痺して立ち上がれない。
「なんで・・・」
「あぁ、ちょこっと麻酔を投与させてもらいましたから、多分それですね」
私の意識がない間に・・・それ、犯罪ではないのか?この国では許されるのか?
「立ち上がれなければ逃げられない。逃げられなければイトナさんともう一度やり直せる・・・ね?もう一度、僕と一緒に楽しい学校生活を送りませんか?」
こいつ、正気じゃない・・・。きっと何を言ってもダメなんだ。こいつは今、己のことしか見えていない。私欲のために私に麻酔を投与し、私欲のために私を誘拐。身動きが取れない状態にしてどうにかしようとしている。
「あなた・・・バカ!?」
「バカで結構。スーパースター生徒会長と呼んでいただいても構いませんよ?」
なんだこいつ・・・調子狂う。どこがスーパースターだ。もはや気持ち悪いを通り越して怖くなってきた。
「さぁ、僕と共に。僕と行動を共にするといい事が続くんですよ?人からハブられることも陰口を言われることも、一人でお昼を過ごすこともなくなるわけです。さらに、生徒会というトップの座をあなたにお渡しすることで、今よりも快適で幸せで楽しい学校生活をあなたにおくっていただけるわけです。まあ、成績に関してはあなた自身のことなので保証はしませんが、環境は大きく替えられます。ね?僕と共にしましょう」
なんだか、とても有名どころのテレビショッピングを見ていたような気分だ。
行動を共にするとは、どういうことなのだろう。私に秘書をしろとでも言うのだろうか。それともお金をむしり取られるのだろうか。
「まあ、いいです。どちらにしろ、これから僕と共になるんですからね・・・」
その言葉はとても意味深だった。
この時の私は、重大なことに巻き込まれてしまったということにまだ気づけなかった。
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