エピソードNIGHTEEN
今日でパリに来て5ヶ月目。予定では、あと少しで日本に帰ることになっている。
「棗、イトナ。あと少しで収録が終わる。これ終わったら関わる機会も減るだろうからせっかくだし、みんなで食事に行こう。私の奢りで」
監督がそんなことを言ってくれた。キャストさん達はすごく喜んでいた。実際私も嬉しくなかったわけではないが、何か心残りな事があって、食事どころではなかった。
棗さんは、どうなるのだろう。
そんなことを考えながら、学校の廊下を歩く。今日はCanonが仕事で休みだったから私は一人でいる。
「1人で歩く廊下は、寂しくないですか?」
背後から声がして振り向くと、そこには生徒会長がいた。
「いえ。全く」
私は返す。
「そうですか・・・お強いですね。それよりも、本当にフランス語がお上手ですねえ。ぜひとも我が生徒会にいかがですか?」
私は生徒会長から1歩引いた。
「おや・・・避けられましたね。私が何かしたように見えてしまいますよ」
ヘラヘラと笑う生徒会長に、引きつった顔を見せる。
「私が・・・怖いですか?」
怖いも何も、不審でしかない。急に声をかけてきたり、急にお茶に誘ってきたり。面識もないはずだったのに、いつの間にか私の名前やお仕事まで知っていた。
「怖がらなくてもいいのに。あ、そういえば忘れてました。お話したいことがあるんでした。来てくださいますか?」
まただ。
「いえ。これから用がございますので、申し訳ないですが断らせていただきます。貴重なお時間をすみません」
今回も私は逃れるつもりだった。
実は今日の朝、Canonとこんなやり取りをメールでしていた。
ー おはよ!イトナ
ー おはよう!あ、朝っぱらから申し訳ないんだけど、テスト勉強した?
ー 何言ってんの、してないに決まっているでしょw
ーそっか。Canonらしいw・・・ってか、この間私生徒会長に呼ばれただろ?
ー うん。え、もしかして行くの?
ー 行こうと思ってる。話って何か気になるし。
ー え・・・イトナ・・・気をつけた方がいいよ
ー 何が?
ー 生徒会長の事。ヤツは・・・イトナに何しでかすかわかんないから。もしかしたら、イトナを・・・ってのも・・・ありうる。
ー どういう事!?何それw怖いなw
ー 本当だよ!・・・あれ?イトナ知らないっけ。イトナの前に来た転校生の話。
そこから沢山教えてもらった。以前何があったのか。生徒会長の何が危ないのか。Canonのいじめの原因を作ったのが・・・誰なのか・・・。
ーイトナ、くれぐれもヤツには近づかないように!ヤツが来たら逃げること!わかった!?そうでもしないと、私は今日居ないんだから守れない。イトナ1人よ!
メールで会話している時もお仕事で急いでいるはずなのに、きちんと話をしてくれた。
ー 身に危険を感じたら、ここに連絡して!絶対助けてくれるから。
090-@&#*-♡♪☆%
メールのやり取りの最後にそう記載されていた。誰の番号かはわからなかったが、とりあえずあるだけマシだと思った。
「お茶しましょう、イトナさん。お話を」
「いえ、結構です」
いくら断ってもヅカヅカと近づいてくる。
「はぁ・・・仕方ないですね・・・」
突然目の前がくらんだ。なんだ!?何も見えない。何が起こったんだ!?
「少し眠ってもらいます」
何かされた様な感覚がする。
「なんだ・・・これ・・・」
そこで私は意識を手放した。
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