エピソードSEVENTEEN ージョセフ

「大丈夫って言ってるでしょう?私たちが被害を被ることはないんだから、安心なさい」



「でもイトナちゃん・・・」



「じゃあ、あなたが変わる?」



「ごめん・・・なさい」



「よろしい」



マリアーナはいつも言った。大丈夫、あの人に従えば私達は何も無かったかのように生活出来るのだと。



マリアーナは言った。ここは弱肉強食。食うか食われるかの世界で、共存する術はないのだと。



でも、どれだけマリアーナがヤツに従えど、私の心にはいつも、イトナちゃんの優しい笑顔があった。あの優しさは、消えなかった。






「ねえ・・・やっぱりこんなの、おかしいよ」



いつもは文句を言わない私も、その時は言った。



「どうして?ジョセフ・・・標的になりたいの・・・?」



マリアーナは私に問う。



「そうじゃなくて・・・友達を売るのはどうかと思う・・・人として最低だよ・・・」



すると、マリアーナは怒り出した。その時の顔といったら忘れない。




「私達のためにやってるの!ヤツに逆らったらどうなるかわかるでしょう!あなたがヤツを裏切るなら勝手にどっか行ってちょうだい!」




その瞬間、何か抜けていくような感覚に陥って、すごくスッキリした。心にあった鎖のようなものがほどけた気がした。





「わかったわマリアーナ。今までありがとう」



私はそう言って、マリアーナと離れた。マリアーナは、後ろでなにか叫んでいたが、私は気にしなかった。






その日から私は、1人になった。


1人で歩く学校は、とても寂しかった。


「イトナちゃん・・・毎日こんな気持ちなのかな・・・」



そう考えては一人で涙を流す。




謝りたいけど、謝れないでいた。

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