エピソードSEVENTEEN

「イトナ!!帰ろ!」



「おう」


あれから私は、Canonと仲良くなった。Canonと一緒に登下校して、Canonと一緒に放課後遊んで、Canonと一緒にお芝居の練習をして。


今までずっと一人でやってきた行動を友達と一緒に、なんて夢のようで、すごく毎日楽しい。



「・・・で・・・ってイトナ、聞いてる?」



Canonは私の顔を覗いた。



「ごめんw聞いてなかったwCanonが可愛いなあって考えてた」



Canonが私の手をブンブン回す。


「はい!!イトナ様のキラキラ笑顔&イケボ、頂きましたぁ♡イトナ最高!!そんな事言われたら聞いてなくても許しちゃうよw」



こうやってCanonが笑っている瞬間を見るのが、最高だったりする。






ドン!


誰かとぶつかった感覚がして、謝ろうと振り返った時。



「ごめんなさい!・・・ん?イトナちゃん!?」


私がぶつかったのは、いつも双子のように一緒にいる女子生徒のジュリアの方だった。



「あ・・・げ、元気?イトナちゃん」


「お、おう・・・」



最近避けられていてろくに話も出来ないでいたため、話すだけですら気まづくなっている。



ふと、ジュリアがCanonの方を振り返った。


「えっと・・・Canonさん・・・ですよね・・・」



「は、はい・・・ジュリア様・・・」



その姿からは、ジュリアを怖がっていることが見受けられた。それもそうだ。私を避けている女子生徒2人のうちの1人なのだから。




「あの・・・イトナちゃん」


ジュリアが改まったように向き直って、私を見つめる。



すると、Canonが私を守るかのように前に出て、私の手を離さなかった。



「イトナに・・・何かするんですか・・・?」



ジュリアは困ったような顔をした。



「ううん。何もしないわ。ただ・・・謝りたくて」



謝る?なんの事なのだろう。ジュリアに何かされたっけ?




「マリアーナのこと・・・ごめんなさい。ずっと、無視されていたでしょう?」



言われて、なるほどなとやっと気がつく。無視されるくらい気にしない。日本にいた頃、それが当たり前だったから。だから謝られても、はいそうですかと言う事しか出来ないのだ。




「あの人、自分中心な人だから。ヤツの気に触らないように、イトナちゃんを売ったんだと思う。マリアーナの代わりに謝るわ。ごめんなさい」




「う、うん。謝らなくてもいいよ。今こうしてCanonと出会って仲良くなったし」



Canonがいるから、別にどうってことない。






「私・・・マリアーナと喧嘩したの・・・」



突如、ジョセフは下を向いた。



「あんたは弱いって、怒られちゃった・・・今思えば、マリアーナと一緒に居なくても生きていけるなあって」




「イトナちゃん・・・負けないで!」


そう言って、ジョセフは去っていった。







「ジョセフ様って、あんなに優しかったのね」



「そうだよ。優しいよあの人は・・・」




その背中は、強い女の人の背中だった。

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