エピソードELEVEN

間に合え!私は全力でその場所まで走った。




パシャッ



頭からつま先まで、全身に水を被った。冷たい。


「うわ!やっちまった!逃げるぞ」


卑怯者の声だ。私は直ぐに顔を上げた。



「大丈夫だったか」


私は、自分の腕の中にいた女子生徒に声をかけた。


「ええ・・・」


良かった・・・この女子生徒は無事だ。


今何があったのか理解出来ていない人もいるだろうから、説明しよう。


さっきまで私は、2人のクラスメイトと話しながら歩いていた。正確には挟まれて歩いていたのだか。ふと私が窓を見た時。1人の女子生徒が目に入った。上を見ると、女子生徒に水を吹っ掛けようとしている輩どもが見えた。やばいと思って、とりあえず飛び降りて自分が壁になったということ。



女子生徒は戸惑っている様子。


「あ、あの・・・」


「ん?」


女子生徒は何かを言おうとしている。


「お礼を・・・」


「良いですよそんなの。怪我されなくて良かったです。じゃあ」


私は置いて来てしまった2人のことが心配になり、失礼かもしれないが、お礼などどうでもよかった。もし私が窓から飛んだ事が先生たちにバレてしまったら、私ではなく傍観者の2人が咎められてしまう。


それに元々お礼などもらうつもりもないのだ。



私が急いで校舎に入ろうとした時だった。


「あ、いた!イトナちゃん!!」


ちょうど校舎から出てきた2人と出くわした。


「もう!!びっくりしましたわ!イトナちゃんったら、足場関係なく窓から飛んでいってしまうものだから」


「私達の方がハラハラしましたわ・・・」


2人は胸を撫で下ろす仕草をする。




「あら、そちらの女子生徒さん・・・イトナちゃん、どうしたんですか?」


マリアーナが、私の後ろにいた女子生徒に手を向けた。


「そうなんだ、あ・・・」


女子生徒を見ると、下を向いていた。



「この子の上に蜂がいたから、危ないと思って追い払いに行ってたんだ(汗」


2人はほっとした様子だった。


「良かったですわ。その子と何かあったのかと思いまして」


「さあ、行きましょう、イトナちゃん」


私は頷いて、女子生徒の方を振り返った。



「気を付けてくださいね。じゃあ」


「・・・はい・・・」



私は女子生徒から離れて、ふたりと一緒に歩き出した。

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