エピソードNINE
「ねえねえ、イトナちゃん。イトナちゃん声優さんでしょ?なんかセリフ言ってよ」
「え!む、ムリです(汗」
「じゃあ歌ってよ!」
「は、恥ずかしい・・・」
大勢のクラスメイトに囲まれている。人の目が沢山・・・怖い。やっぱりメガネ、香月から取り返しておくべきだった・・・。
「そいつさあ、本当に声優かよwセリフも歌も無理ってさあ、ダメじゃんw」
あの不服そうだった男子生徒が、私を見下ろす。
「何言ってんの!この子転校生なんだから、そういう茶化しは勘弁してよ!」
「そうよ!イトナちゃん下向いちゃったじゃない!」
嬉しかった。クラスメイトが、自分を気にかけてくれる。日本にいた頃、そんなことは1度もなかった。優しくされたかどうかも、覚えていない。毎日が苦痛だった。
「イトナちゃん、気にしなくていいからね?あいつ、いつもあんなのだから」
クラスメイトは、私の頭を撫でた。暖かい。優しい手だ。香月以外の人に優しさをもらったのは、初めてかもしれない。
頬を涙が伝う。
「え!ちょっと、イトナちゃん!?」
「どうしちゃったの!?どこか痛いの?」
嬉しさのあまり、涙を流す。暖かい空気をもらって、暖かい優しさをもらって。本当に幸せだ。
「あの・・・うっ・・・私、今まで優しくされたことなくて・・・こんな気にかけてもらえたの、初めてだから・・・嬉しくて・・・」
喋る度に涙が溢れ出る。
「・・・イトナちゃん、日本で何かあったのね・・・」
「辛かったでしょう・・・」
暖かい。
男子生徒を見ると、やはり不服そうな顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます