第14話
「陽葵ー!ようやく武尊くんと付き合い始めたんだって?遅いよー」
うるさい
「私達ずっとやきもきしてたんだからね!早くくっついて欲しかったのに、ふたりとも奥手だからさー」
うるさい
「でも安心したよ。ようやくカップル成立かー。これはお祝いしなきゃ!放課後クラスのみんなでカラオケ行こうよ!話聞かせてもらうからね」
私を取り巻く、全てがうるさい
学校とは、こんなに不快な場所だっただろうか。友人と呼んでいたクラスメイト達は、今や私の周りにハエのようによりたかり、私とタケルちゃんが付き合っているかについて、根掘り葉掘り聞き出そうとしてくるのだ。
それがたまらなく不愉快だった。
私とタケルちゃんの間に入ってくるな。聞き出そうとするな。
私とタケルちゃんの絆に踏み込んでくるなんて、度し難いにも程がある。
「あはは…あのね、何度も言うけど、まだ付き合ってるわけじゃないんだよ、タケルちゃんとは。そういう話にまで、全然至ってないし…」
いっそこの怒りをあたり一面に撒き散らして、吐き出してやろうかとも思ったけど、それでも私は我慢して、いつも通りの人当たりのいい優等生を装った。
私の中では感情よりも理性のほうがイニシアチブを握っているためだ。
どんな時でも頭のなかに冷静に事態を客観視している自分がおり、判断を下すのは彼女だった。事実、こんなやつらに当り散らすメリットはまるでない。
やったが最後、私のこれまでの地位は一気に瓦解することだろう。
よくて腫れもの扱い、最悪ハブられ、いじめられるまであるかもしれない。
(我慢だ、我慢しなきゃ私…)
ここは耐えるときだった。慎重に誤解を解きながら、タケルちゃんにも説明して上手く誘導すればきっとなんとかなるはずだ。
結局学校に来るまで、タケルちゃんとはろくに話すことも出来なかったのがかなりの痛手だった。
いくら話しかけて呆然としており、フラフラと歩き出すタケルちゃんにハラハラしながら学校にたどり着くまでが精一杯。
あとは着いた途端、クラスメイトに囲まれ、今も話すことができていない。
最悪とはまさにこのことだろう。
だけど、まだきっと挽回は―――
「いい加減にしてくれよ!!!」
そう思った時だった。教室の隅から、誰かの怒声が響いてきたのは。
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