第13話

ミスをしたと思った。相談なんてするんじゃなかったと、私はひどく後悔している。


焦りがあったんだと思う。一向に進展する気配のないタケルちゃんとの関係に、きっと業を煮やしていたんだろう。






私はきっかけが欲しいだけだった。クラスメイトに相談したのも、タケルちゃんとの関係を進めるにはどうすればいいか、ちょっとアドバイスが欲しかったただけ。


それ以上なんて求めてない。手助けだとか祝福だとか、そんなものは一切必要なんてなかったのだ。




それをするのは私の役目。タケルちゃんの手を取るのは、私だけがすればいい。


他の誰かによる後押しなんて、いらなかった。それなのに―――






「だからさ、陽葵と武尊くんって、付き合い始めたんでしょ!」






なんでこんなことになっているのか、私にもまるで分からなかった。








「え…ど、どうしてそういうことになってるの…?」




理解出来なかったけど、それでも聞かなければならなかった。


学ぶためには情報が必要だ。今はそれが圧倒的に足りていない。


この場にいるのはカナだけだから、彼女から引き出す必要がある。


全てはそれから。驚いたように固まるタケルちゃんも気がかりだけど、まず優先しなくてはいけないのはこちらだった。




「んー?キコがさー、教えてくれたんだよ。陽葵が困ってるみたいだって。陽葵が恋愛相談してくるなんてこれまで全然なかったじゃん。傍からみればバレバレなのにさ。昨日だって目に見えて落ち込んでたし、今度は私達が助けてあげようってなったんだ。まぁその必要なかったかもだけど。本気だしたら陽葵ってすごいよね!さっすがぁ!」




バンバンと背中を叩いてくるカナに、私は棒立ちのまま、なすがままになっていた。




(助けてあげよう?なにそれ?)




ふざけるな。そんなの、余計なお世話だ。


タケルちゃんと私の間に、誰も踏み込んで欲しくなんかない。


彼との関係をどうするかは、私が決める。他人にどうこうなんてされたくない。


あんたらはただなにもせず、必要なときに必要なことだけしてればいいんだ。


余計なことなんてしなくていい。タケルちゃんの母親みたく、少しきっかけをくれるだけでそれでいいんだ。私の上に立とうなんてする必要は一切ない。


聞き逃せない情報があるのも、また苛立ちを加速させる。それについて、私は問うた。




「私達って、もしかして…」




「うん、クラスの皆は知ってるんじゃないかな。多分男子も!クラス公認ってやつだね!」






なにが嬉しいのか、カナは笑う。善意に満ちた笑顔で。悪びれもしない楽しそうな顔で。


それが私には、ひどく醜悪なものに見えた。




だけど憤りを感じたところで、時計の針は戻らない。


事態は私の預かり知らぬところで最悪の方向へと転がっていく。




私が変えたかった関係が、他人の手で変えられようとしていく感覚は、恐ろしく不快なものだった。


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