第二章②
「マローネちゃん、待ってたわよぉ〜」
騎士団の本部に足を
「ジェフリー副団長!?」
「お届け物、ご苦労さまぁ〜」
近づいてくるのは、短く
「わざわざ、待っていて下さったのですか?」
「ええ。あなたが来るのを、首をなが〜くして待ってたわぁ」
副騎士団長自ら
「わたしは、ヨハン殿のかわりに届け物を持ってきただけなのに……なぜ来ると知っていたのですか」
「あら、
ぐいぐい背中を押されて、マローネはジェフリーの執務室に連れて行かれた。
バタンと扉が閉まると、ジェフリーは
「改めて、マローネちゃんの質問に答えようかしら? どうして、アタシが見計らったかのようにあなたを出迎えたか聞きたいんでしょ?」
「はい、直接お部屋にお届けするつもりだったので。こちら、お預かりしたものです」
マローネから包みを受け取りながら、ジェフリーは
「アタシのお気に入りだからよぉ〜。あ、もうすぐ
やはり不可解だ。ジェフリー副団長は面倒見がいい。よく差し入れを持って訓練場に
「ジェフリー副団長は、皆に平等に接してくれる公正な方ではありませんか」
性別も身分も
「もうヤだぁ! 真顔でそんなに
「なんと……!?
「真顔で謝るのも、や・め・て! マローネちゃんは、ちょーっと天然さんよねぇ。向こうで、うまくやれてるの?」
軽口の中に
ジェフリーはその間にも包みを
そして、閉口したままのマローネに向かって、「やっぱりね」とため息をついた。
「アタシがあなたを出迎えて、わざわざ部屋に引っ張ってきたのはね、あなたをどうにかして
「相談、ですか?」
「ヨハンくんからね。今日の手紙には、もっと直接的に書いてあるわよ。
サフィニアの意図を
「――わたしは、ヨハン殿から預かった荷物をお届けに来ただけです。
マローネが断言すると、ジェフリーは苦笑した。
「マローネちゃんはまだ、続ける気なのね?」
護衛騎士のことだと気付いたマローネは、もちろんだと力強く
「だと思った。アタシは、あなたはそんな
ジェフリーは茶目っ気たっぷりに笑った。
「心配? サフィニア様が、わたしを……?」
「王女様が騎士の心配なんて、意外かしら? でも、あのお方の立場を考えれば、自分の周りから人を遠ざけるのは、当然じゃな〜い?」
「……それは、その……
「ええ、それもあるわ。けれど一番は、
だから、人は王女を
「マローネちゃんだって、
ためらいがちに、マローネは頷く。ひどい噂を流す者がいると腹を立てたことがあるが、真に受けてはいなかった。
あんなに優しくて強かったサーちゃんが不要なはずがない。
「マローネちゃん、腕はいいけど思い込んだら突っ走っちゃうところが、玉に
マローネの表情のこわばりに気付いたのだろう、ジェフリーがやれやれといった口調で話しかけてくる。
そういえば、騎士学校時代もエスティに似たようなことを言われたとマローネは思い出す。サフィニアの護衛騎士になるのだと語る自分を馬鹿にしつつも、彼は最後に言っていた。周りを見る
つまり、これは誰の目にも明らかな己の欠点なのだ。
短所をようやく自覚したマローネの胸に、
「……わたしは最悪です。主の心情を
マローネの心情を察したのか、ジェフリーから肩を
「まあ、自覚できただけマシじゃない。まだ期限は残ってるんでしょう?
サフィニア様 に認めてもらえるように、がんばりなさいマローネちゃん。落ち込んでるようだけど、気にかけてもらえるってことは、少なくとも
「……―― !! そ、そうですか!?」
「直接お会いしたわけじゃないから、あくまでも想像だけどね。サフィニア様はあなたが嫌いじゃないから、扱いに困っているように思えるわ。少なくとも、アタシには。……さて、マローネちゃんが諦めてないなら、ヨハンくんの追い出し作戦は失敗だけど……どうするの、マローネちゃん?」
「……もちろん、サフィニア様のお屋敷に戻ります、ジェフリー副団長!」
しっかりと頷くと、ジェフリーも満足そうに頷きを返してくれた。
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