第一章③
『というわけで、一時サフィニア様預かりになった、マローネちゃんだ。メアリばーちゃんは知ってるよね?
一時預かりという立場になったマローネは、その日のうちに屋敷の使用人と顔合わせを果たした。だが、なんと
ヨハンの祖母であるメアリ、祖父のジョン。そして料理人のセイル。彼らは
紹介を受けた三人は、表立ってマローネを拒絶したりはしなかったが、誰もが
しかし、マローネにくじけている時間はなかった。
『それじゃあマローネちゃん、さっそく屋敷の
その後も、与えられる仕事は延々雑用ばかり。部屋はメアリと同室だが、ヨハンたち男手が
そのまま寝るには体が痛いからと、メアリがクッションを用意してくれたが、
当然、目覚めは最悪――かと思いきや、マローネ自身はサフィニアのそばにいられる嬉しさから、毎日とても元気だった。メアリより早く起きては庭で
そして四日も過ぎれば、マローネもだいたい察するようになっていた。
この屋敷は、
そう心に決め、早朝から水くみ作業をしていたマローネに、メアリが声をかけてきた。
「ねえ、マローネちゃん。こんな仕事ばかりで、嫌にならないかい?」
「え?」
「本当は騎士様のすることではないだろう?」
「でも、やらねば困る仕事でしょう?」
「それは、そうだけどねぇ」
「わたしの仕事が、サフィニア様の快適な生活に
こうして目の前の仕事に向き合い、役に立つことを示せばきっと認めてもらえるはずと伝えれば、メアリは困った顔をする。
「出て行こうとは思わないのかい?」
老婆の
「そんな、もったいない! せっかくサフィニア様の下に留まることが許されたのです! お
メアリに一礼すると、マローネは走り出した。
その後ろ姿を見送ったメアリは、そっとため息をつく。
「だ、そうでございます、サフィニア様」
振り返り呼びかけると、壁の
「あなた様のお役に立てることが嬉しいだなんて、いい子でございますね」
「……――知っています」
「でしたら、なぜこのような意地の悪い
「私の目の前から、いなくなって
地面に視線を落とし、サフィニアが呟くとメアリは眉を下げた。
「一度、向き合ってみてはいかがでしょうか? 年寄りの目から見ると、あの騎士は本当にあなた様を思っている、
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