第63話 書庫(5)

 ミュウがどれぐらい凄いのかっていうことについては、今更語るべきところでもない……。語るに落ちる、といったところだ。ミュウが爆発的なポケモンの人気を生み出したといっても過言ではないのだろうけれど、実際にはそれ以外にも様々な理由があったりする。


「……まあ、実際はそれをどう操っていくかって話ではあるけれどね。今年まで二十五年間も人気が続くなんて、きっと開発者は誰一人予想していなかったんじゃないかな? まあ、自分の開発したゲームが面白い! と思うことはあるかもしれないが。ただ、流石に二十五年も引っ張れるかと言われるとな……。デジモンだってメダロットだって妖怪だって、それを上回る可能性こそあったものの、結局は十年も持たなかった。デジモンに至っては墓場から掘り起こされたなどと揶揄される始末だ。メダロットに至っては本編がソシャゲになってしまったし……、妖怪も何故か最新作が学園物になってしまって、売り上げも大爆死らしいからな。ところでレベルファイブってどうするつもりなのかねえ、レイトンもイナイレも妖怪もムサシも出てこない。もううしろを今更PSPに出してドラクエ9のリメイクで最後の花火を打ってしまえば良いじゃないか、なんて思ったりするのだけれど、まあ、そう簡単にはいかないよな。何せドラクエ9はレベルファイブが版権を持っている訳ではないのだし。スクエニがやりたいと言っても、それをレベルファイブに発注しなければやらないだろうからな。ほら、ドラクエ8のリメイクがアルテピアッツァになったのと同じだ」

「……いい加減にしてください」


 ゲーム談義が嫌になったのか、めぐみさんが口を挟んできた。ぼくもそろそろこの話し合いが終わらないかななどと思っていたからとても有難いことではあったのだけれど――。


「――ドラクエ7のリメイクを担当したのが原作も開発したアルテピアッツァで、ドラクエ8のリメイクを手掛けたのは様々なゲーム開発を手掛けたトーセですよ?」


 ……だめだ、この人。まさかボケに回るとは思いもしなかった。


「トーセだったか! いやあ、トーセもなかなか仕事するよな。スタフィーシリーズが数少ない名前を公表している仕事の一つで、基本的には非公開を貫いているんだよな。下請け企業のエリートと言っても差し支えないだろうし……。最近はどんなゲームを作っていたっけな」


 そう言ってスマートフォンを操作していく。

 仕事しろ、仕事を。


「ええと、ペーパーマリオ、うたわれるもの、スプラトゥーン、セキロウ……なんだ、色々と手掛けているなぁ。かつてはファイナルファンタジーやドラクエも手掛けていた訳だし、信頼は高いだろうな。トーセって、京都では有名な企業らしいからね。ほら、広告も出ているらしいし」


 そうなのか。知る人ぞ知るみたいなイメージが強かったけれど、それは井の中の蛙と言ったところなのかもしれない……。いずれにせよ、それが自分の人生にどう影響するかと言われると、微塵も影響しないのだけれど。


「ゲーム会社と言えば、セガはどうなんだい、セガは。メガドライブミニを発売してからどうなったんだ?」


 言ったのは六実さんだった。六実さんはセガハードが好きでしたか。メガドライブにセガサターン、ドリームキャスト……。セガハードには独特の魅力があるのだ。だから今でもセガハードを遊ぶ人は居る訳だし。セガなんてだっせーよなプレステで遊ぼうぜ、なんて時代もあったのだ。多分。


「それをリアルタイムで聞いていた子ども達って、今は三十代ぐらいになっているのかしらね……。あと、そのメッセージちょっと違うから。実際は『プレステの方が面白いぜ』だから。確かセガはそのためにわざわざライバル企業のSCEにプレステの使用許可取りに行ったんだっけ……。まあ、丁寧というか、そんなことしなくても良いのにって思うのだけれど……。でも、どうしてセガってああなっちゃったのかしら。今やゲームセンター事業も畳んでしまったし。でもアミューズメント事業は続けていくのかしら?」


 どうだかな。そりゃあ、プリクラ事業を展開していたアトラスを傘下に収めているのだから、未だそっちに未練はあるのかもしれない。まあ、バーチャロンにバーチャファイター、ソニックに初音ミク……、最近はあれか、龍が如くも売れているらしいな。ああいうゲームは遊んだことがないけれど、好きな人は好きなのかね?


「そりゃあ、好きな人も居るだろうよ。セガは良く分からないゲームを定期的に出してくるんだよなあ……。DSで言えば、きみのためなら死ねるとか、赤ちゃんはどこから来るの? とか。せがれいじりは流石にセガではないと思うが。セガガガは確かドリームキャスト撤退決定後のソフトだったかな? ドリームキャスト、良かったんだよねえ。あの起動音が好きだよ。しかし、あの後に参入したのが黒船と例えられたXBOXだったと記憶しているが……、あれはどうなんだい? 確か磐梯が遊んでいるらしいけれどね……」

「XBOXユーザーって、今じゃ結構レアじゃないですか? だって、XBOX360こそ百万台ぐらい売れたそうですけれど、その次世代機に至っては十万台ぐらいしか売れていないなんて聞いたこともありますし。出るソフト全てがパッケージで出ないで、ダウンロード版だけなんて事例も多々あるとか。……そういや、XBOXの最新ハードって一切パッケージ版出ていないんじゃないか? 幾らダウンロード販売が主流になりつつあるからって、方向転換し過ぎな気もするけれどな。確か任天堂は巣ごもり需要でメチャクチャダウンロード版売れているらしいし。コナミも桃鉄がメチャクチャ売れたらしいしな……」

「ああ、桃鉄はやっぱり面白いからねえ。今はこのご時世、皆で集まって遊ぶってことは出来ないから、オンラインプレイで遊ぶってのが一番のやり方だと思う訳だよ。……確か、二百万本売れているんじゃなかったかな? 今までの最高売り上げが百万本超えるか超えないかぐらいだったのに、凄い躍進ではあるよな。その勢いで休眠しているIPを復活させて欲しいものだけれどね」

「例えば?」

「天外魔境とか、ネクロマンサーとか」


 全部ハドソンじゃねえか。

 ボンバーマンが復活したから、いつか復活するだろう……多分。


「魔界村も復活したのだし、そういう古いIPも復活する機会はあると思うけれどねえ。まあ、カプコンはもっと他のIPを活用しろよ、って話だけれど」


 逆転裁判はやっと今年の年末に出るっていうんだから、我慢してやれよ。カプコンはバイオハザードとモンハンが忙しいんだと思うよ。それが結構売り上げの中でメチャクチャウェイトを占めているからなあ……。デビルメイクライみたいに久しぶりに出して売れたのもあるけれど、あれって久しぶりに出してあの実力であって、バイオハザードみたいに定期的に出していたらどうなるか分かったものでもないしな。


「カプコンと言えば、ロックマンじゃないの?」

「それは昔の話。まあ、最近最新作が出たけれど、まさか全ハードに出してくるとは思わなかったな……。多分あと一年早かったら携帯機にも無茶な移植していたと思うよ。その代わりスイッチには出ていなかったかもしれないな。……あ、ロックマンといえばあれも忘れてはならないな」

「何だ?」

「ロックマンDASH3」


 あーあー聞こえない。

 取り敢えず本題に戻るとして……、さっさと情報を手に入れようぜ。人払いが出来る呪術師って、東京にはどれぐらい居るんだろうな?


「呪術師というカテゴリだけなら、三百人は居ますよ」


 ……何だろう。そう具体的な数字を言われると、一気にやる気をなくしてしまうな。

   

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