第10話
旅の道中に訪れた街で、胡散臭い奴に出会った。
「ようそこの黒い旦那。ここらじゃ見かけない顔だが、この街になんの用だい?」
話しかけてきたのは、見るからに遊んで暮らしていそうな胡散臭い男だった。だが道中で聞いた男の特徴と似ている。
「外の世界に行く為の情報を探しているんだが、あんたの噂話を聴いてな」
「はーあんた外界に渡りたいのか!久方ぶりに見る阿呆だな」
「よく言われる。それより噂は本当なのか?」
「さぁどうかな。本当かもしれないし、嘘かもしれないな」
「……もったいぶらずに話してくれ。こう見えて、暗殺は得意なんでな。あんたの喉笛なんてあっという間にかっ切るぞ」
「まあ落ち着けって。この街は暮らしやすいんだ。俺みたいな適当な奴でも食っていけるくらいに、ほかの連中が働いてくれてるからな」
確かにこの街を治めている一族は、他所では見ない真面目な連中達だ。それにひきかえ、おこぼれに預かっているに過ぎないこいつが、本当に探していた男なのか……。
「いいからさっさと話せ。話さないならさっさと死ぬか」
「だから落ち着けって。噂は本当だ」
「ならー」
「ああそうだよ。外界の行き方は知っている」
「なんせ、外界と行き来していた男だからな」
「クロ。あの胡散臭い男の話信じるの?」
「現状他に情報がないからな。信用はしないが一応は聞いてやろうと思うよ」
クロはあの男が信用できないと珍しく主張し、次の街にさっさも向かおうと俺を急かす。
だが、長旅で歩き慣れていないシエルの脚は疲労が蓄積していたので、この街で数日休憩を取ることにした。
尚も納得していないシエルだが、新たな一面が見れて嬉しかったのは、シエルには内緒にしておこう。
「まさか、シエルを下界で見かけるとはな。世間は狭いな」
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