後編
第7話
ある日、俺は家でうたた寝をしていると、外で何かが倒れるような物音が聞こえた。何事かと警戒して外に出ると、そこには見たこともない綺麗な女が倒れていた。
もちろん俺の知り合いでもないし、いつか寝た女でもない。俺の周囲にいるのは、血の臭いをさせるよう奴か、死んだ目の奴等しかいないからだ。
女は気を失っているようだが、このままだと他の連中に食われてしまう。そう思った俺は、一時的に家に匿うことにした。
こいつも外の世界の住人なんだろうか。もしそうなら、目を覚ましたら話を聞こう。
見たところどこも怪我をしていないようだし、頭さえ無事なら話は聞けるはずだ。外の世界の住人に二度も接触できたことを、信じてもいない神に感謝してると女は目覚めた。
「……ここは何処ですか?」
「意識が戻ったか。残念ながらここに名前なんてもんはないぞ」
「私はなんでこんなところにいるのでしょう」
「それは俺が聞きたいんだがな。あんたこそ何処から来たんだ」
「えっと…思い出せません。気付いたらここにいました」
(まさか記憶喪失か)
俺の期待はもろくも崩れたさった。
今すぐ話を聞けないのなら、ここに置いとくのも面倒だなと思案していると、女は俺をじっと見つめ「出来れば私をここに置いてもらえないでしょうか。何でもしますのでお願いします」と、懇願した。このままだと捨てられると思ったのだろう。
俺の同情を誘おうなんて無駄なことだ。そう言って断れば良いだけなのに、俺はその女を手離したくないと思ってしまった。
何故なのかはわからない。この見た目の良さからだろうか?そんなことで俺が揺らぐとも思えないが。
自問自答したところで答えは出ず、「とりあえず今日は泊まっていけ」そう言って保留することが精一杯だった。
それから、見知らぬ住人との奇妙な共同生活が始まったのだが、誰かと暮らした事がない俺にとっては新鮮な体験だった。
女と暮らすのは思いの外楽しかった。楽しいという感情も初めてだが、彼女の無垢な表情を眺めていると、体の奥底から沸いてくるものがある。
その正体は俺には理解できないが、もしかしたら外の世界では、当たり前にあるものなのかもしれない。
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