第6話
この街は不思議な形をしている。高い壁が延々と続き、大地というには無機質なそれが、壁に沿って延々と続いているのだ。果てしなく遠く。暗闇に覆われている。
俺はこの土地から離れたことはないが、遥か遠方から来た旅人の子孫と話ができた。
彼の先祖は何代も何代も、途方もない時間をかけてここまで辿り着いたらしい。その道中では、とにかく水害が多かったようで、幾度も洪水に襲われ仲間を多く失ったみたいだ。
「僕のひいお爺ちゃんのひいお爺ちゃんのさらにひいお爺ちゃんは、外の世界に住んでいたと伝えられています。そこは、目も眩むような豊かな土地で、何不自由なく暮らしていたのですが、ある日天に届くほどの巨人に襲われ、なすすべもなく街全体が壊滅してしまったのです」
「それで巨人から逃げるために旅を続けていたわけか」
「はい。彼の巨人の眼に止まったら、僕達のような矮小な存在は消されてしまいますから、といっても僕のお爺ちゃんの世代からはここに定住してました。ですが、僕はここが安住の地だとは思っていません。ご先祖様が暮らしていた楽園に再び戻れるまで、僕は旅を続けるつもりです」
きっとあの壁の向こうには、想像も出来ない世界が存在するのだろう。どんな化け物がいてもおかしくはない。
俺に語ってくれた彼は旅に出ていった。その後どうなったかは知ることはないが、彼も知らない世界を求める同胞であることには変わりはない。
せめて楽園にたどり着くことを祈りたい。
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