第5話

 この街には、外の世界に関する情報が全くと言っていいほど存在しない。外に出るには例の化け物が待ち受けている。真っ正面から突破しようものなら、それは自殺と同じだ。そもそも興味を持つものがいないのが、情報を得るための最大の障害となっている。

 しかし、イレギュラーで極々稀に、外の世界から落ちてくる奴がいる。そんな奴に出くわすのは一生に一度あるかないかの出来事だ。

 俺は運良く一度接触したことがあるが、そいつは落ちてきたショックのせいで手足が折れ、記憶も混濁していた。命があるだけ僥倖とも言えるが。

 応急処置を施した結果、外の情報が得られなかったのが悔やまれる。そいつはその後、腹を空かせた連中に食べられちまった。


「おい!大丈夫か!俺が見えるか?俺の声が聴こえるか?わかったら返事しろ」

 手足が全てイカれてやがる。内蔵もぐちゃぐちゃだ。これじゃあ長くはもちそうにないな。

「あ…う…あ」

「なんだ?はっきり言ってくれ」

「こ…ゎ………い」

 怖い?何が怖いというんだ。

「よく聞いてくれ、お前は外からやって来たのか?外はどんな世界なんだ。どうやったら外に行ける!」

「あ…う…つか……ま……る……」

 つかまる?捕まる?何に捕まるというんだ。

「おいっ!まだ死ぬな!何に襲われたんだ」

 …………。

 死んじまったか。せっかくの情報源だったんだが。だが、どうやら外の世界も一筋縄じゃいかなそうだな。

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