第4話

 この街には灰色の壁がそびえ立っている。いつからそこにあるのか誰も知らない。一説によると、この街が出来たときには既にあったとも言われている。

 壁のその先、見上げると、遥か上空に俺が欲してやまない青空が浮かんでいる。巨大な壁と壁に挟まれた青空を流れていく雲は、とても自由で、それがとても憎らしい。いくら手を伸ばしたところで決して届かない。


 昔から、この壁の何処かに化け物が住んでいると伝えられている。

 子供の頃、度胸試しで壁に登っていった知人が、何者かによって体をズタズタにされ落ちてきた。どの時代でも似たような真似をする奴等はいたみたいだが、どれも似たり寄ったりの最後を迎えている。

 化け物に襲われた知人は、腹を空かしたバカな連中に、あっという間に食われ骨になってしまった。新鮮な肉は、腹を空かしたやつらにとっては貴重なたんぱく源だからな。

 だが、俺は彼を笑い飛ばすことは出来ない。

 度胸試しではなく、あの壁の向こうに何があるのか、この世に生まれ落ちたその時からそれだけを知りたい欲求に駆られている。

 その欲求に比べれば、本来持っているはずであろう食欲も性欲も殺戮欲も、霞んでしまうというものだ。

 だが、他の奴等にこの話をしても、全く興味を示す奴はいない。

「そんなもん知ってどうするんだ」

「壁の向こう?そんなもんありゃしねえよ」

「そんなこと考えるだけ無駄だろ」

 そんな答えばっかだ。この世界に囚われた哀れな連中は虫以下にも劣る。さっさとくたばりやがれ。

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