第5話甲羅の持ち主
変な話だって言うなよ?
俺、カッパってかなり賢いと思うんだ。
あんなに目立つ甲羅を「ほぅら、気になるでしょ~?」と言わんばかりに堂々と干しておく。
売れば結構な金にもなるだろうし、伯父さんみたいに「竜宮城」の話に憧れを持ってる人は特に…持って帰るだろう?
それでさ、その甲羅には何かの呪いをつけておく。例えば水分を奪うとか、な。
甲羅を持っていった人は乾いていく。
笑うなよ?
俺、この段階でカッパは非常食を作ってるんだと思うんだ。乾物な。保存きくように水分しっかり抜いて干しとくんだよ。
良い感じになったら取りに来る。
それまで放置すればいいんだし、楽だろ?甲羅を干しておくだけなんだから。
単に人を食べるつもりだけなら川でもどこででも襲えばいいだろ?
それでも腹が減ったら非常食を食べればいい。
賢いな、おい。
更に腹が減ったら、畑を漁ってキュウリを盗むしさ。
魚だって乱獲して生で食べるだろ。外来種、もっと食べていいんだぜ?ワニとかアリゲーターガーだっけ。あいつらには気を付けろよ。
伯父さんにはほんと悪いんだけどさ。
あんた、夢見すぎだろって思う。精々カメ助ければ竜宮城へにでも連れてってくれるかもとでも思ってたんだろ?
(ぽりぽり)
伯父さんが亡くなった後、息子のあいつがどうしたか知ってるか?
伯父さんの部屋の物、全部売っ払ったんだ。
あの人の賭け事で奥さんとか親父も泣かされたからな。あいつもあいつで悪いと思ってたんだよ。
俺はあいつが悪いとは欠片も思ってないんだけどな。
おう、もっと食えよ。
(ぽりぽり)
無駄に欲を出すとろくなことにならないって。
伯父さんの結末もそうだし、やたらと人を襲おうとすれば俺らだって黙っちゃいないんだぜ?
適度、ほどほどが一番なんだよ。
(ぽりぽり)
じゃあ、俺帰るな。
あいつのこと、助けてやってくれよ。
(がぁ)
あ、最後にさ。
(ぽりぽり)
(がぁ?)
お前の甲羅って、結局お前の一部?それともマジでカメの?
(くいくい)
ああ…そっち。
川の岸には山になって眠るカメたちと、その中に混ざる幼いカッパがいるのだった。
スッポンもいくらか混ざっている気がする。
俺の横には、あの夜伯父さんを喰らっていたであろうカッパが手土産であるキュウリの浅漬けを食べていた。
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