後悔

宵闇(ヨイヤミ)

第1話

その日の天気は大荒れで、強風に横降りの雨と音を立てて鳴り響く雷が空を光らせていた。川は氾濫し海は荒れ来るっている。

そんな雨の中で歩いていた俺はただの馬鹿だな。こんな天候の中、外に出るやつはまず居ないだろう。なのに何故俺が外に居るのか、それにはちゃんとした理由がある。それは、妹を探すためだ。朝はまだここまで天候は悪くなかった。その隙に買い物に行くと言って近所のスーパーへ行ったっきり帰ってこない妹を探している。勿論行くと言っていたスーパーには行ったさ。だが何処を探しても、店員に聞いても、そんな子は来ていないというじゃあないか。

ここ以外の場所へ行くとは考えにくい。買い物に来ていないのなら、一体何処へ行ってしまったのだろうか。

「お兄ちゃん…!」

後ろからした声に、動きが止まる。それは妹の声そのものだった。急いで後ろを振り向くと、確かに声のしたはずの妹の姿なんて何処にもなかった。

どうやら幻聴が聞こえてくるようになってしまったらしい。すぐ横を流れる川の流れは激しさを増していた。


〜数時間後〜


親から《もう帰ってきなさい》と連絡があり俺は家へ向かった。どうやら妹は見つかったらしい。誰かは分からないが連絡があったそうだ。きっと何処かの家で厄介にでもなっていたのだろう。

「ただいま」

「やっと帰ってきたのね」

「うん、それで何処に居るの?」

「……落ち着いて聞いて」

そして母の口から語られたのは、とても信じ難い現実だった。


どうやら妹は、川で溺れ溺死してしまったというではないか。しかもその川がさっき俺が近くに居た川だそうだ。先程後ろからした妹の声は、もしかしたら川に落ちて俺の姿を見た妹が、必死で俺を呼んでいた声だったのかもしれない。

もし俺があの時、後ろではなく川の方を見ていれば、妹を助けられたかもしれない。妹は水泳が得意だった。だがその特技もあんな川じゃあ通用するはずがない。俺もはなんてことをしてしまったんだ………


〜その後〜


俺は家族と一緒に遺体の確認に来た。遺体安置室は少し寒かった。長袖を着ていたのでよかったが、これがもし半袖だったらきっと肌寒いだろうな。

台の上に置かれた妹は既に色白くなっていた。そんな妹を見て母も父も涙を流していたが、俺は涙よりも後悔が強く流すことが出来なかった。

そっと妹の指先に触れてみる。それは冷たく、冷えきっていた。いつもの温もりはない。死んで冷えきった指先を辿り手を握る。室内の寒さで冷えたてで、まるで真冬の空から帰って来た妹の手を温めるように、そっと握る。

何をしても妹は帰ってこない。俺が川を見れば助かったかもしれない命を…俺が妹を見殺しにしたようなものだ。



_____この後悔は一生ついてくるだろう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

後悔 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ