第3話

僕が結婚生活の中で許せなかったことはほとんどなかなった、といえば嘘になる。今僕が一緒に人生を歩んでいるのは、彼女なのに、彼女はどうしてか僕の前の嫁を気にしがちであった。

前はどんな生活だったかとか、どんなものを食べてたとか、時間はどうしてたかなど、どんな人かよりもどんな生活をしていたかを気にしているようだった。

彼女曰く「普通の夫婦生活ってどんなのだろうって気になって。」だそうだ。

ただ僕が言いたいのは、離婚した普通の夫婦生活は参考にしてはならい、だ。

「前のことはいいじゃん。今ふたりで作ることが大事でしょう。」と言うのだが、「どこがいけないのとか、いいのかとかそれすら分からないから基準がほいいのよ。奥さんのどこがよかったけど、ここがなおしてほしかったとか教えて欲しい。」僕は思った。そういうところだよ。そいうところが僕は傷ついている。

「奥さんは君でしょう。」そう言うと、彼女は少しかたまって悲しく笑うのだった。

「まだ実感ないのかもね。」彼女は素直というか良くも悪くもストレートに言葉にする。僕が以前、人に言われることで傷つくことがあまりない、と話した時に「よかった、私結構ストレートに言うから傷つくって言われるの。」と言っていたのを思い出す。

いつになったら実感が湧くんだい。どうしたら実感してくれるのだろう。

婚約指輪はいらないわ、と言った君に素直にわかったといった僕に後悔してる。こんな状況だから海外の新婚旅行も行けず、身内の挨拶もオンラインですませてしまったのがよくなかったのだろうか。

「あなたは2回目だから派手じゃなくていいじゃん。私も派手なの苦手よ。」

そう言った君の目を伏せて話していた顔が今でも思い出されるよ。

きみは、僕と結婚していたんだよ。

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狂喜夫婦 聡明英知な夫と才子多病な妻 野水 志貴 @mametibi

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