第29話 久々のモフモフタイム

「しかし姫様亡き後戦争で一度国が滅び生き残った王族が悲劇を繰り返すことなかれと…国を改革し余計なトラブル禁止令が敷かれた。悪人達には心を浄化する歌の魔法を使い良い人間に変えていった…じゃから藍の国では平和に…トラブルなく、人に優しくのんびりと動物を愛でたりする国となった…」


「だからあんた達みたいなヤバイ連中も受け入れる。もし俺らに手をあげようとしたら…」

 コトリとブライアンはオルゴール人形を置いた。何か魔力が宿っていると気付いた。


「この曲にはある種の洗脳魔力が入ってる」


「つまり…良い人間に作り替えるということか…」


「そうだよ…もしもこれを壊されて俺たちの平和を壊したり殺人などを犯した者には王宮から騎士団が派遣され…魔獣達の餌にされて終わり」


「魔獣だと??藍の国は魔獣を手名付けているのか?」


「まぁね…魔獣とも友達みたいなものだよ…王宮に化け物みたいな魔獣がいる。お話できるのは姫様の血を引く王族だけ。よほどの事がない限り人間を餌になんかしないから安心しなよ」

 とハンフリーも言う。


 外面はいいが…何か言い知れぬ怖さがある村人達だ。洗脳か…。オルゴール人形を見て考える。


「俺はシャーロットが回復したら国に帰る。何かこの国気持ち悪いしな。そうだ!シャーロットに直ぐに医者をお願いしたい!赤子が無事か診てくれ!!」

 と言うから村長達は驚き立ち上がる。


「何で早く言わないんだ!!うわぁ!大変だ!すぐに手配を!医者を!」


「助けないと!!あわわ!」

 とバタバタと医者を呼びに行った。

 村長はお茶をすすり


「まぁ…他の国からしたら違和感のある国だと思うじゃろうが…ワシらはこうして生きてきた…。そうしなければ国は滅ぶ。火種さえ撒かなければ穏やかに誰も苦しむ事なく暮らせる。あの青の魔女さんが元気になったら空き家があるからそこに住むといいだで。明日領主様をお呼びしますで」


「領主を?こちらから伺おうか?」


「いんや、ついでにこの前産まれた子猫もみたいなと言ってたし領主様すぐに駆けつけますよ」

 と言った。どんだけ猫好き?


 *

 医者に診せたシャーロットの子は無事であるそうだ。シャーロットは泣いてお腹をさすり何度もごめんねとお腹の子に謝っていた。

 マティルダも頭の怪我は全治3週間と告げられ、激しい動きは禁止と言われた。


 その夜マティルダにこの国のことを話した。この村が空き家をくれること、ここに住んで良いことなど。


 マティルダはそれらを知っていた。


「ええ…だからこの国を選んだわ」


「手紙に書いてたゲームの設定のうちか?出来すぎてると思ったんだ」


「流石トラヴィス…。まぁそうよ。これ以上は藍の国の王子ルートに関係してくるから私はあまり口を挟まないけど。それよりトラヴィス…さっきね…へ、変身薬をハンフリーに頼んだの!」

 と俺を見てマティルダは久々に嬉しそうにした。


「そうか…なら後で寝る前に触らせよう。でも外には沢山の猫達もいるがそいつらでなくていいのか?」


「当たり前じゃない!!トラヴィスの毛並みは最高よ!他の猫もでしょうけど、それはいづれまた…とりあえずトラヴィスをめちゃくちゃモフりたい!!そろそろ禁断症状が…」

 何のだよ!!


「判ったから安静にしろ。頭の傷に響くだろう?」

 と俺はそっと手を握る。

 マティルダは赤くなり


「トラヴィス…ここまでとても長かったわね…」


「あ…ああ…やっと幸せにスローライフとやらが始まりそうだな」

 と俺が微笑むと


「うん!元気になってモフモフ達に囲まれて生きるわよ!ついに私の夢が叶うわ!!…そこにはトラヴィスも一緒にいてね?」

 と言うから俺は嬉しくなる。


「もちろんだ!」

 と微笑む。

 夕食を済ませマティルダの部屋をノックして変身薬を飲み干した。久しぶりに俺は猫の姿になった。


「ぎゃーーーーっ!!!きききききたーーー!コレーーキターーー!」

 マティルダが異様に興奮しとる。いや、落ち着け、傷口が開く!マティルダはガッツポーズで震えながら俺を見ている。そろそろと俺が膝に乗ったら


「ああ…トラヴィス…何て心地いい感触!久々すぎてもう今夜はめちゃくちゃにしちゃうわ!」

 と言われて俺は覚悟した。


「マティルダ…存分に俺を可愛がってくれていい…今まで我慢しただろう?好きにしてくれ」

 と言う。


「ありがとうトラヴィス!でもにゃーんって言ってね」


「にゃーん!」

 ゴロゴロ。と俺はネコになりきり擦り寄り甘えた。マティルダの優しい手が俺の毛を撫で回した。ああっ!マティルダ!!そんなっ!優しく!!ああああ!!

 この君の柔らかな膝も久しぶりで嬉しい!

 もはや俺はおかしい。マティルダもおかしい。たぶん他人に見られたら引かれるだろう。


「にゃああ」

 マティルダは俺を抱えて鼻先にキスをしたり耳をフニフニと弄ったりする。ああっ…俺も興奮して死にそうだ。大好きなマティルダに触られて幸せだ。怪我は心配だけどマティルダが早く元気になってくれるならいつでもこの身体を差し出す!


 ペロペロと小さな舌で猫そのものになりきり俺はマティルダの頰を舐めてやるとマティルダも目をハートにしながら背中を撫でた。


「トラヴィスカンワイイ!!好き!!」

 俺も好きだよ…。愛しいマティルダ…。

 と撫でられまくってたら薄く扉が開いていて、桶を持ったクリフォードと目がバッチリ合った。


「…………………」

 クリフォードは何も言わずにソッと扉を閉めた。

 あ、何か見られたし終わった。と感じたけどもうどうでも良かった。

 あっ、マティルダそこおおおお!!


 *

 翌朝マティルダが起きる前に全裸の俺は服を着て顔を洗いに行ったらクリフォードがいた。

 無言で俺を見つめて一言言った。


「お前達…そんな特殊なプレイ持ちだったんだな」


「いや…何が?マティルダが猫好きなだけだよ。いやらしいことなどはしていない。俺が猫になりされるがままにされているだけだ。そして俺は幸せだ…」

 とキッパリ言うと真顔でクリフォードは


「この…ど変態が!!」

 と言われた。

 ……………。不能の次は変態と言われしばらく落ち込んだ。


 クリフォードはシャーロットが少し回復するとエンヴァルに乗り王宮へ向けて飛び去った。俺たちのことも黙っていてくれるし、時々お忍びで来てくれるらしい。


 シャーロットとマティルダも少し仲良くなったしこれからは領主の歓迎もあり仲良く暮らしていけるだろう。風の噂で俺の弟が王位に着いたと聞いた。追っ手も無くなり手配書はいつしか無くなった。俺も一息できそうだ。

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