第30話 モフモフと結婚祝い
私とトラヴィスは空き家を使っていいと正式にご領主のジェローム・ケネス・サックウェル伯爵に言われた。こちらの事情もあっさり飲んでくれた。
伯爵は私と同じくめちゃくちゃ猫好きであり、猫好き同好会の仲間になり猫について月3回くらいは語るようになりトラヴィスの氷のような嫉妬の視線に毎回ジェローム様は震えてお土産持参で何とか機嫌を取っていた。
私は猫を2匹飼うことにした。薄いピンクはサクラ。可愛らしい女の子。それから藍色の虎模様はアイク。すぐ眠る。
私はあれから魔力障害になり魔力が暴走しないよう力をコントロールするリハビリをしている。トラヴィスがいつも補助してくれる。
もうおばあちゃんみたいな心境だわ。
「トラヴィス…いつも…ごめんね…」
と言うとそっと手を握り物凄い真面目な顔をして
「何が?俺はマティルダを補助できて嬉しいが」
と言う。猫ももっと沢山飼って良いと言われたけどまぁ外にも沢山猫ちゃんはいるし普通に私達の家に集まってくる。たぶん空き家だった頃ここ猫ちゃん達の集会場だったらしくそれはもう毎日毎日可愛い猫ちゃんが入れ替わり私を楽しませてくれるのだ!猫ハーレムである!!
ある日トラヴィスが頑張ってカンワイイ猫のケーキを作ってくれた。彼は料理作りに目覚め私に食べさせることが日課になりつつあった。
魔力障害で辛い私をベッドから起こしてあーんと口に運んでくれる。
夜は青猫になりサクラとアイクは専用の寝床に入れて、自分は私の布団に潜り込む。
そんな生活が続いた頃…。
ある夜いきなりトラヴィスは言った。
「マティルダ…その…何というか…」
妙にもじもじしている。どうしたんだろう?
「その……今更なんだが…俺と結婚してくれないか?」
とスッと指輪を出してきた!!
「え…!?」
私達もう結婚していたんじゃなかったのか!?一緒にい過ぎてもう家族になったつもりでいた!!そういえばプロポーズされてなかったと今思い出して今言われた。
「あ…うん…よろしくお願いします…。というか指輪なんて買うお金よく有ったわね?」
「ああ…この村の工房に王家の俺の剣を売ってあの剣は溶けてこの指輪になった」
と言うから目ん玉が飛び出るくらいビビった!!
「ちょっ!!あの剣の成れの果て!?いいの!?ひええええ!!王家の剣が!!」
「いやもう必要ないだろう。こうして指輪になったし別にいい」
とトラヴィスは全く気にしていない。
トラヴィスは村の警備隊の一員になってハンフリーやブライアン達と友達になりよくつるむようになった。コミュニケーションがど下手くそなトラヴィスが友達を!
と親のような心境で見守っている。ケーキなどはハンフリーの奥さんに料理を教えて貰っている。
なんというか…主夫である。私がこんな身体なばかりに苦労をかけるわねぇ。
「それじゃ明日証書を領主に出してくるからここに血判してくれ」
とトラヴィスは結婚証書の紙を出してきた。用意周到か!!
とりあえず私は血判を押した。トラヴィスはそれを眺めた後、ツーと涙を流した!!
「ええっ!?ちょっ!?トラヴィス!!?大丈夫!?」
トラヴィスは私に抱きついてきた。
「ああ!!ようやくマティルダに遠慮なく触れる!!」
「ええ?今までも触ってなかった?」
「今までは介護補助としての名目で触ったが着替えや風呂は別で大変だったろう?マティルダ…。こここ…これからはそれも俺がしよう!ずっと着替えと風呂は補助なしだから心配してたんだ!!結婚すればそれも出来るし!」
その前に恋人だからそれも別にすればいいと思うんだけどトラヴィスは例の
結婚するまでは淫らなことはしないという主義だし未だに童貞である。
「それからようやくマティルダと子作りできる…」
と真顔で言う。いやそここそが照れる所なのに何で真顔なのか!!?こっちが照れるわ!!
「めんどくさいがシャーロットが子供を産んだらしいと手紙が来た。クリフォードが顔を見に来いだの、お前らまだ結婚してないのかこの不能の変態野郎と馬鹿にされるんだが…」
と静かな怒りを含んで手紙をグシャグシャにするトラヴィス。
「めちゃくちゃ子供自慢してきて鬱陶しくて堪らない。だから何というかあいつらよりもめちゃくちゃ可愛い子供が欲しくなった。魔力障害を治すのにも何というか子作りする時に俺の魔力をマティルダにあげる事で良くなると教えてもっもらい…ブライアンが…そのぅ…」
「そうね…。私はトラヴィスがいいなら別に今すぐに子作りしてもいいわよ?なんか今更だけど」
するとトラヴィスは赤くなり
「今日は猫じゃないけどいいのか?」
と言って手を握る。
「血判も押したしもう夫婦だわ。明日提出するけど」
「………そ、そうか…。な、ならマティルダの魔力障害が治ったらきちんと結婚式を挙げよう。村のお針子さんは張り切っていてさっさとプロポーズしろと言われてたんだ」
ああ、そっちからも言われまくってようやくというわけか。
「まぁ、後村の女達の視線がいろいろ痛い」
と言う。まぁトラヴィス程のイケメンが村に君臨したことで若い娘の憧れの的になる事は当たり前よね。
「確かに…トラヴィスが他に浮気をしたら困るわね」
と言うと額にキスされ
「するわけない…。俺はもうげ、限界だ…。ごめんマティルダ!」
と優しくトラヴィスに押し倒された。
*
それから次の日にトラヴィスは早速領主様に証書を出しに行き私達は正式に夫婦となった。
トラヴィスはクリフォード達にめんどくさいからと言って結婚した事をしばらく報告しなかったのでクリフォードはシャーロットと赤子を連れて村に来た時にトラヴィスに
「言えよっ!この冷徹野郎!!」
と炎を纏い庭で争っていた。トラヴィスも水魔法で相殺している。うちの旦那様はクールに鼻で笑って攻撃を避けていた。
シャーロットの子供は女の子で可愛かった。髪の毛がピンクである。ううむ。ピンク色…。
「サクラって名付けようかしら?」
と言うから
「いや、うちのサクラと被るからやめてよ」
と猫のサクラを見て言うと
「ええ、日本らしくていいと思ったのに!こっちを変えなさいよ。仕方ないからローズマリーにするわ」
と言った。せめてそういうことはクリフォードと決めなさいよ!
「そうだ結婚祝い持ってきたわよ?」
とシャーロットは何も無い空間からドデンと何と冷蔵庫らしきもの、洗濯機らしきものを出した。
「うちの国で魔道具をかねて研究したの。電気の代わりに魔力を少し流せば動くわ」
おっほっほっ!ドヤァと笑うシャーロット。
しかし…
「ごめんそれもうあるわ…。私が案出して職人に言ったら作ってくれて藍の国でも既に普及しつつあるのよね」
と言うとシャーロットは
「ええっ!!?くっそーー!先越された!!これだから転生者は!!」
と睨まれた。次はテレビをどちらが先に作るか揉めている。
「魔力障害が治ったら式をあげるんでしょ?今度はさっさと知らせなさいよ!?トラヴィス様にもちゃんと言ってよ!?」
と念を押されてついでにトラヴィスには何かサイズ感ピッタリの礼服をプレゼントとして持ってきていたがトラヴィスは後日それを金に変えていたとは口が裂けても言えなかった。
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