第22話 シャーロットと戦う
「何故お前がここにいる?」
俺は白い髪の女を睨む。彼女はそれに頰を染めて
「ああっ!どうしてですって?運命なのよ!私どうしても貴方を忘れられないの!もちろんクリフォードにも優しく情熱的に愛して貰ったけど…貴方のその冷静で落ち着いたクールさとか私に中々手を出さないのも今なら判るの。
…貴方…きっと本当に好きな子には手を出さないタイプなんでしょ?だから…ふふふ」
と大いに勘違いしてる女を無視して俺はモーリスさんを支えて城から逃げる。
「待って!待ってよ!どうして?何処へ行くの?愛しい私が目の前にいるのよ?ていうかそのマッチョおっさん誰よ?邪魔!」
とシャーロットはモーリスさんを白い光で包み込み
「うわぁぁ!!」
とモーリスさんは叫び声を上げてその場から掻き消えるようにして消えた!!
「お前っ!モーリスさんをどこへやったんだ!それにその魔法はなんだよ!?」
見たこともない魔法。白の魔法!?一体こいつは何だ!?
警戒して一歩下がり剣に手をやる。
「私は貴方の運命の女よ!あの元侯爵令嬢の女に洗脳されている可哀想な王子様…今、私がそれを解いてあげるわ」
と彼女が俺に近付いて来ようとしたので
「来るな!俺に触れたらその指切り落とすぞ!」
と言うとシャーロットは可哀想にという目で俺を見て
「ふふっ…私がクリフォードと仲良くなったから嫉妬しているんでしょう?大丈夫よ、私…クリフォードに好きにされてる最中も貴方のことを考えていたの。寂しい想いをさせてしまったわね?…もういいのよ?遠慮せずに私の所に来て」
とこの女はもはや頭がどうかしているなと思った。そしてまたあの匂いがしてきた。
また俺を誑かそうとしているのは明白!だが俺はマティルダを愛している!
水を自らに纏い、水鮫を数匹出現させた。
いつでもこの女を噛みちぎれる。
「私と戦おうと言うの?どこまであの魔女に洗脳されたの?まさか一線は越えてないわよね?トラヴィス様だもの!きっと大丈夫よね?ふふ、貴方は私のものなの…。直ぐに洗脳を解いて上げるわ!」
「抜かせ!!魔女は貴様の方だ!!もう堪忍ならない!!お前を殺す!」
と俺は鮫達をシャーロットに向け放つ!
しかしシャーロットは白い魔法で鮫達をモーリスさんのようにあっさりとどこかへ消してしまう!!
「!?」
俺は怯んだ!こいつは何でも消してしまう!!白の魔法…見たこともない魔法をこいつは使える。どこの国でもない特殊な魔法だ。
「その魔法はどうやって会得した!?貴様は一体何者だ!?」
と問いかける。しかし応えはない。嘲笑い俺に近付く。
彼女は手を掲げて俺の水を纏った境界魔法を吸い取っていく!!
「ふふふ、私は…ヒロインだもの!この世界の唯一の女!白の魔法を扱える女よ!白の魔法はどんな色より最強なのよ!?学生の頃は騒がれたくなくて隠していたのよ。ふふ」
「何故だ!何故そんな魔法を使える!ヒロインとは何だ!?」
「くくっ!やはりね、知らないのねトラヴィス様…マティルダから聞いてないのね。あの女もかなり魔法を勉強したようだけど所詮は悪役令嬢!2属性の風と水が限界のようね!
何もできやしないわ!あはは!」
マティルダには何か俺に言えないことがあるとは感じてた。でもきっといつかは話してくれると思う。それがこいつの言っているよくわからないことや白の魔法のことなのか?
「トラヴィス様…もう私我慢できないわ!さぁ…私の寝室にいきましょう?」
「お前…正気か?こんな戦火の中…クリフォードも外で戦っているだろうに…」
「だからチャンスじゃない?皆が戦っている中私達は愛し合うの…素敵ね…」
とぼうっとしている。あほかこいつ!!
すると背後からゴウっと風の魔法がシャーロットに向かった!!シャーロットはそれも打ち消した。
「………シャーロット…久しぶりね!」
とマティルダが立っていた。
「平民のマティルダ!よくもトラヴィス様を洗脳してくれたわね!」
「それは貴方でしょ?汚い手を使いトラヴィスを騙して心を奪おうとした!判っていたからかしら?ヒロインの余裕で?……でもとっくに本編は終了したわ!ここからのお話で私は自由になれるの!」
「はっ!確かに本編は誰か一人しか攻略できないし、手頃なクリフォードで手を打ったわ!でも私の推しの1番はトラヴィス様なの!前世からずっと好きだった!部屋にポスターだって飾ってるしグッズもキャラクター香水も買った!トラヴィス様の抱き枕に毎晩香水をかけてキスをして眠るの!」
と訳の分からないことを言い出したシャーロット。前世?ほんぺん?
マティルダはため息をついた。
「本編は終わったし、私はトラヴィスを洗脳なんか一切してないし、私達は真実の愛を誓ったわ。諦めてシャーロット!貴方にはクリフォード王子がいるでしょ?二股なんて良くないわ。それにトラヴィスを渡す気もない!」
とマティルダは攻撃態勢に入るから俺もそうした。
「何よ?あんた…邪魔なのよ!トラヴィス様は私のものよ!!あんたなんか消えちゃえ!」
と白の魔法がマティルダを包む。不味い!消される!!
しかしマティルダはバチンと白の光りを黒い光りで打ち消した!!
シャーロットも驚いて見ていた。
「なっ!?」
「私が今までどれだけ魔法を勉強していたか知ってる?学生時代もトラヴィスに無視されるくらい必死で勉強し、独自の魔法を開発してきた!この日の為かもね。いつか白の魔法を打ち破ることができる黒の魔法!私の…奥の手よ!」
とマティルダは言い、黒い光りを手に集めた。
「お前!!?」
マティルダとシャーロットはお互いに睨み合って一歩も引かない。
「トラヴィス…。私…貴方と恋人同士に慣れて良かったしキスもしていて良かったわ!…シャーロットは…この世界にいてはダメだわ…。ここで私が始末しないと!」
「マティルダ!?何を…」
と俺が言うと黒い光りが俺を取り巻いた。
「エンヴァルの所に送る!ここは私に任せて!…さようならトラヴィス!!」
俺の身体が消え始める!
「待て!マティルダ!!俺は君と!」
しかしマティルダは振り向き微笑んだ。俺の好きな微笑みだ。
それを最後に俺は気付くとエンヴァルの背中にいた。周辺は瓦礫に埋れている。
「トラヴィスか…この辺りはあらかた破壊したぞ!そこの赤の王子も縛り上げておいたわ!くく!魔法無効の鎧もぶっ壊しておいたしな」
と笑ったが俺は
「マティルダが!まだ王城の中でシャーロットと戦っている!!」
「話は聞いている。マティルダは荷物を取り返してこちらに直ぐに来た。荷物は安全な場所に隠して俺に教えた…。マティルダは…シャーロットと決着を着けると言っていた。…お前を頼むとも…」
「はぁ!?そんなのは聞いてない!!俺は…俺はマティルダを守ると誓った!!俺だけ逃げろって言うのか!!?またマティルダだけに押し付けて!」
俺はエンヴァルから飛び降りて王城へと走った。
「待て!!あれを見ろ!!」
エンヴァルに止められて王城を見ると
黒い光りと白い光りがぶつかり合い王城が…消え始めて…ポカリとそこだけ無くなった。
俺は土に膝をつき
「そ…そんな…マティルダ…」
と呟いたまま…唖然とした。
「マティルダ……」
俺を…置いてかないでくれ!捨てないでくれ!一緒に藍の国でスローライフとか言うのをすると言っただろ!?俺はいつだって君だけの猫になるし、側にいる…。
結婚してもしなくてももういっぱい君に触れるから!キスもたくさんするし…許してくれるなら……それ以上のことも…。
だから戻ってきてくれ!!
「マティルダ!!マティルダーーーー!!」
と俺は叫び声をあげ泣いた。
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