第14話 油断大敵

マイオン村を出てからいくつかの街や村を旅した。ブルメシアから逃亡して早3ヶ月ほど過ぎた。

今俺たちは緑の国、黄色の国の国境も超えて橙の国オレジニアス王国の街道沿いの森を通っている。まぁ逃亡者だから堂々と街道には出られないしな。


いつしかマティルダの短かった髪は肩まで伸びていた。可愛い。好きだ。


「オレジニアスの国は果物が名産らしいわ。暑くて育ちやすいんだって。でもほんと暑い!森の中通っててもやっぱり暑いわ。水浴びしたいわ」


「どこかにあればいいんだけどな…」

とたわいもない話をしながら歩いているとふいに


「きゃあ!」

とマティルダが叫び足元を見ると蛇がいた!

俺は蛇を一瞬で凍らせた。


「…………」


「大丈夫か?」


「うん…。そう言えば私たち青の国出身なんだから湖が無くても魔法で何とか涼めるわね…。この暑さで忘れかけてた」


「ああ…俺もだ」


適当な場所を見つけてマティルダが手を広げて風魔法で土をえぐりポカリと穴を開けて俺はその周りに氷の岩を落とし、最後に水魔法で簡易な水場を作り上げた。


「やったー!ちょっと休憩しよーー!!泳ぎたーい!!」

とマティルダは上の服を脱いで薄い白い下着服そのままでバシャンと入った!


「トラヴィスもおいでよー!冷たくて気持ちいい!!」


「え…いい、後で…俺は見張っておく…魔物とかから」

と赤くなる、いくらなんでも一緒に入るのは恥ずかしい。恋人でもないのに失礼だしマティルダのことは好きだけど馴れ馴れし過ぎてはダメだ。けじめをつけなければ。


俺は足だけつかり手を洗う程度で涼むことにして遠くからマティルダが泳いでいるのを見てた。


後、マティルダが上がった時用にリュックからタオルも出しておこう。森を見回して俺は気付く。木の上に美味しそうな果実発見。

よし、マティルダの為に取っておこう。


と氷の魔法を刃に変えて落として拾った所だった。

首元に白い剣が突きつけられ


「動くな!」

と命じられた。

周りには無数の気配。しかも女だらけだ。

やたらと露出が多い服を着ている。

奥から巨大な豹柄の猫魔獣に乗ったセクシーな女が出てきた。


「ボス!!このイケメン見て!!すっごいイケメンだよ!?売ったらいくらになる?」

成る程、こいつらオレジニアスの女盗賊団かもしれない。


ボスと呼ばれた女は真っ赤な紅をして化粧も香水も濃い。髪は橙色に瞳は茶色。小麦色の肌をしてまあとにかく胸がデカ過ぎる。首のスカーフは虎柄で服はとにかく派手なスリットの開いたスカート。爪も真っ赤。


「おやおやおや、あんた!!すっごいイケメンじゃないか!!」

とペロリと赤い舌を出した。


「お前たちは女盗賊団か!?」


「そうだよ、あたし達は女盗賊団フルグラさ!あたしはボスのノーラだよ!ふーん?あんた…どうにも手配書の王子に似ていないかい?その青い髪はブルメシアの人間だろ?それにイケメン!!悪い魔女も手配されてたが逃げてきたのかい?」


「人違いだな…俺は確かにブルメシアで産まれたが王子とかじゃない…」


「そんなの確かめればいいだけさ!上手くいけば報奨金も貰えるしね!…でもその前に…イケメン王子様の味見をしたいね♡」

と言われ、身をクネクネさせ近づく。俺は剣を構えた。


「おや?女を本気で斬るつもり?できるかな?」

と笑っている。


すると後ろから


「ウィンデルアロー!!」

とマティルダが風魔法で女盗賊達を吹き飛ばす。


「ちっ!なんだい?あんた…ああ、もしや手配書の魔女か?そっちは大した額じゃなかったね?どうだい?あたし達の仲間になるならあんたは見逃してやるよ?」


「盗賊の仲間?ふざけた事を!私達の顔を見られたからには全員ここで殺すわ」

とマティルダは物騒な事を言う。


「さすが悪い魔女様だ!でもね、盗賊は欲しいものは力ずくで奪うもんさー金も男もね!!」

と女盗賊団ボスのノーラは指を鳴らすとワラワラとと森からそれは可愛らしい小動物が出てきたのだ!!これに食い付かないマティルダではない!!オレンジの可愛い猫もいた。


「キャンわいいいいい!!!」

マティルダがもはやモフモフに恍惚になりながら幸せ色に変わった。

あ…終わった…。

俺は仲間の女盗賊達に縛り上げられ猫の魔物に括り付けられてあっという間に連れ拐われた!!


「マティルダーーーー!!!」

叫ぶとようやく気付いて


「あっ!待って!トラヴィス!!」

とこちらに来ようとするがマティルダの顔面にフワモフ兎がぴったりくっ付いていてマティルダは…


「うごふっ!!モフモフが邪魔をする!!うごふっ!」

と最後に聞こえた。


気が付くと俺は縛られて豹柄のベッドの上で沢山の動物の剥製の生首が見下ろす部屋の中に放置されていた。趣味が悪すぎて吐きそうだ。

部屋の装飾もギンギラギンに光り黄金の髑髏やら虎縞のソファーやら目が痛くなる。

こういう落ち着かない部屋によく居られるな!!


するとバァンと扉が開いて虎のバスローブ一枚の女ボスノーラがやってきた!!

ひっー!

襲われる!!


「ふっ王子様、お楽しみの時間だよ?まっ、国じゃ色んな女を抱いたろうけどあたしが1番気持ちよくしたあげるよ!」

と言いながら近づく。


「やっ!辞めろ!俺は結婚するまでそういうはしたないことはしないぞ!」


「まっ!まさかの童貞!?こりゃいい!!優しくしてやるよふふ」

と笑いながら迫る。

……ああ、きっとマティルダは抵抗できずに…。俺もそうなるのか。


ノーラが俺の上に乗り頰を撫で回していると下から


「ぎゃあああ!!」

と悲鳴が聞こえた。ノーラは


「んー?何だい?どうした!?」

と叫ぶと子分らしき女が


「はぁはぁ!!ボス!大変です!あ、あの女が来て!あの魔女が来て!!皆を人質にしてっ……」

そこまででその女は首から上に薄い幕を貼られてその中に水が入っていて苦しんでガボガボ言っている!!


そこへマティルダがやってきて睨んだ。しかしその腕にはしっかりと兎がいた!!


「この女盗賊共!!私にモフモフを仕掛けるとは中々やるわね!あやうくモフ死ぬ所だったわ!」

と言うと後ろ手にナイフを構えたノーラが


「女の子は可愛くて小さなものが大好きだからね」

と俺の首にナイフを突きつけた。


「仲間を離しな!妙な魔法を使うなら王子様の命は無い!」

しかしマティルダは


「ふふふ、そんな男どうでもいいわ。殺したければそうすれば?でもあんた達は殺す…」

と仲間の水をさらに増やして首から上で子分は溺れて死にそうだ。


「ちっ!!」

とノーラはナイフを床に捨てた。それを見てすかさずマティルダはノーラに風魔法で身体を捕まえてグイングインと動かしてノーラは天井に頭をあちこち打って


「ぎゃあ!!いてっ!!うえっ!!ひいっ!」

と喚いて床に叩き落とされた。


最後にマティルダは


「フィルメイルリアーノ!!」

と唱えた。

するとふっとノーラ達の意識が途絶えた。気絶魔法か。

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