第3話 それぞれのみち
くるみ。
おれたち、このあたりが潮時だ。
精一杯やって、結果も出せた。
これからは、お互いに、無理をせずに、自分らしい道を歩もう。
ぇ?
なんて?
無理をせずに?
わたし、こむぎに無理をさせてたの?
うそ…、わたし。 わたしよ。
無理していたのは、わたしだよ。
ねぇ、でもね、わたしは、こむぎのために、
こむぎのためだから、、無理でもできたんだよ。だって、わたしはこむぎがす
だからさ。それがわかるから、もう潮時だって言うんだよ。
その気持ちに気づいていながら、おれはもうこのままくるみと一緒にいることが苦しいんだよ。
ごめん、くるみと同じ気持ちにはなれない。
それが理由?
ふたりで作ってきた作品は…、もういぃの?
正直、巷にはあふれてるよ。
ハードでオシャレなそんなもの。
今じゃ、小学生やちょっとしっかりした老人だって…。
もう、特別なもんじゃないんだよ。
くるみ、くるみは魅力がある。
くるみは人を引きつける華がある。
おれは覚えている。アンの舞台だったな。五真の代役で、初めてくるみがステージのセンターに立った時、まるでスポットライトを浴びているように輝いて、お客さんの目が、くるみの姿に釘付けになった。
くるみは、おれとじゃなくても、充分に輝いていられるんだよ。
おれは…。いつの間にか、くるみに頼ってしまうようになっていた。
つまり、おれは、くるみをりよ
待って、待ってこむぎ。考えてみてよ。
もっと、これからもあるでしょう? あなたとわたしでできること、まだまだいっぱいあると思う。利用されたっていい。わたしはまだ、こむぎのこれからのいろんな事に、関わっていたいの。あなたと一緒にいたいのよ。
くるみ…。
ほんとにごめん。
くるみに、そんなふうに言わせてしまって。
あのな。
おれ、、実は、礼一とやり直したいんだ。
礼一とは気負いなく、気軽にやってこれた。
昔はその気楽さが生ぬるく感じてさ、このままじゃおれの才能が発揮できないんじゃないか、、チャンスを見過ごす事になるんじゃないのかって、礼一との馴れ合いから離れたかったんだ。
けど最近、思うんだよ。おれ、昔みたいにやわらかくてちょっぴり甘酸っぱいみたいなさ、、そんなもんが作りたいって。
原点に戻ってシンプルにやってみたいんだよ。
ほんとに、勝手な事言ってごめん。
礼一、駿。星、舞、瞳(注1)今も変わらず地味だけどさ、良いもん作ってるんだよ。
おれ、またあいつらと組みたいんだよ。
わたしは、わたしは、何故一緒じゃダメなの? 仲間には入れないの? 教えてよ。なんで…
泣かないでくれ、くるみ。
くるみ、、おまえはさ、どうしても主役になっちまうんだよ。
どんなに脇役のつもりでも、、「これ、くるみが」って。印象に残るんだ。
だからさ、くるみは、くるみで。
主役のまま堂々と、生きてほしいんだよ。
まだまだくるみには可能性がある。
おまえにはおまえの道がある。
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