(9)色々と決着

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 タマモがムサシの地を公領化したことで得られるマナの量は、世界樹自身が公領化をするよりも減っていた。

 具体的にどれくらいの量が減っているかはきちんと計測しないと分からないが、少なくとも感覚的に少ないと感じるくらいには減らされている。

 ただマナの得られる量が減っているとはいえ、タマモが侯爵位だった時には特にマナが入っていなかったことを考えれば、公爵になることを勧めたのは間違いではなかったと思えた。

 タマモという眷属ではない存在に統治を任せて、世界樹が得られるマナの量が減っているのは当然だとさえ考えている。

 むしろ他の魔物に任せている状態なのに、その土地からマナを得られるだけでも十分だ。

 もしその土地から十割得たければ、他の魔物に任せるのではなく自分で統治すればいいという上(上司)からお達しなのだろう。

 それよりもタマモが公爵になったことで予想外にいい結果を得られることができたのは、因子を得ることができたことだった。

 タマモが侯爵だったときにはこれらの因子は全く手に入っていなかったので公爵になっても手に入ることは無いだろうと考えていたので、望外の結果だったといえる。

 

 新たに得た因子を使って新しい属性魔石を作って眷属たちに渡すと、彼(彼女)らは早速進化ラッシュを始めていた。

 今回の進化では全員が属性進化だけになっていて、大きな進化を起こすことは無かった。

 もっともそうなるだろうということは事前に眷属たちから話を聞いていたので、そこまで予想外だったというわけではない。

 むしろ属性進化だけで収まるという予想通りになったことに驚いたくらいだ。

 

 魔物の進化については端から見ている分には全く予想がつかないのだが、眷属たちはある程度事前に予想をつけることが出来るらしい。

 それを知った俺は何かの法則があるのかと期待して聞いてみたのだが、残念ながら得られた魔石を見て何となく感じることが出来るもので、統計化するのは無理だという答えが返ってきた。

 結局のところその時になってみなければわからないという答えに落ち込みつつも、進化先がある程度予測できることで進化にかかる時間が事前に把握できることも嬉しいことだった。

 眷属たちの進化は時間がかかることから順番に行っているのだが、時間の予想が立てられるのであれば交代もスムーズに行えることが出来るからだ。

 

 そんな眷属たちの進化ラッシュが進んでいる中で、珍しくミアと一緒に近寄ってきルフからこんな提案を受けた。

「バフ(主人、少しいいか?)」

「うん? どうしたんだい?」

「バフ(我が子たちをそれぞれの公領地に送ろうと考えているのだが、いいだろうか?」

「それぞれの公領地に……? わざわざそう言ってくるってことは管理のために送るって意味だと思うけれど、何か理由でも?」

「バウ(一番は海を渡る手段ができたからというのがあるが、子供たちの繁殖地を求めてというのもある)」

「ああ、なるほど。ここで一か所に固まっているよりは、子供たちを公領地に散らせて管理さえたほうが増えやすいってことか。土地の広さ的に」

「バウ」

 俺の推測にルフがすぐに同意してきて、ミアも頷いていた。

 

 狼種たちの現状の役目は、その足を利用してエゾの広い領地を見回ることに特化している。

 突発的に強い魔物が発生したときには、鳥種以外には狼種が早く現地に到着することができる。

 早さという点においてはゴーレムのゴレムとは正反対の能力を持っている狼種だが、それでも限界というものはある。

 それが何かといえば、今ルフが言ったように海を渡るのが難しいという点だった。

 

 ルフやミアほどにもなれば北と南にある海峡を泳いで渡るなんてこともできるのだが、やはり地上を走るのに比べれば段違いに遅くなる。

 今は転移装置が置かれているので泳いで渡る必要などないのだが、それでもホームから向かうよりも現地に狼種を置いた方がいいと判断したのだろう。

 時々ではあるが、確かに少数の蜂種や蜘蛛種では対応が難しい魔物の出現ということも起こっているので、狼種が現地にいてくれたほうがいいのは間違いない。

 そういう意味においてこれから先、さらに広い領土を得ることを考えれば、ルフの提案は渡りに船だった。

 

「ミアも一緒に来ているということは納得しているからだと思うんだけれど、本当にいいんだね?」

「ワフ(子供たちもそれを望んでいるので、むしろお願いしたいくらいです)」

「あら。すでに子供たちとも話し合い済みか。だったらこっちから言うことは何もないよ。誰をどこに配置するとかは任せるよ」

「ワン(ありがとうございます)」


 突然受けた二人からの提案だったが、こちらとしても特にデメリットは見当たらなかったので即決で決定した。

 これまでずっとホームにいた子眷属がいなくなってしまうという寂しさはあるが、そもそも転移装置を使えばいつでも会いに行けるので大した問題ではない。

 それよりも狼種の子眷属が現地にいることで得られるメリットの方が大きすぎるともいえる。

 それもこれも狼種の数が安定して増えて来たからこそできた提案だとも言えるだろう。

 

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 そうこうしているうちに東北地域の攻略も順調に進み、あとはボスを残すのみという状態になっていた。

 タマモの公領化も終わって安定してきたことからこちらもさっさと終わらせてしまおうということになり、今回も俺自身は討伐に参加することなく倒すことになった。

 

 結論からいえば東北地域の公領ボスもほとんど犠牲を出すことなく討伐に成功することができた。

 ただ犠牲が出ていないとはいってもそれはあくまでも最悪の事態にまで行っていないということで、残念ながら重傷者はそれなりに出ている。

 できることなら公領ボスも軽傷程度で済むくらいにまで成長すればいいと考えているが、そこまで行くのにはまだまだ時間がかかるだろう。

 子眷属ではなく眷属だけでかかればどうにかできるかもしれないが、それだとあまり意味がないので敢えて子眷属も参加させての結果ではあるのだが。

 

 とにかくこれで、マツシリに続いてオウウも公領化することができた。

 人族はユグホウラに対して味方というわけではないのでどうなるか不安だったところもあるが、敵対している(?)人族がいようがいまいがこちらにとっての領土/公領化には全く影響がないことがわかった。

 それさえわかってしまえば、人のいる場所を無視して領域化を進めることができる。

 タマモやルファといった存在がいる以上は、できる限り広い土地からマナを得られるようにしておきたい。

 

 こうなってくると次の目標としては、できる限り早く本土、九州、四国と制圧をしていきたい。

 侯爵、公爵と爵位を続けて得ることができているのだからさらにその上も当然あるだろうと予測してのことだ。

 日本列島を全て領域化すれば国王とかそれに近しい爵位を得ることができる……かどうかは分からないが、今までの流れを見ていればそう大きくは外れていないはずだ。

 大陸からのちょっかいが無いとも限らないことが分かった現在、できる限り早く日本列島を領域化していきたいという願望も出てきている。

 

 西と東にある大陸についても調査を進めようとしているが、それは二番目三番目の目標になる。

 まずは第一に日本列島の制覇を目指してユグホウラの舵をとることに決めるのであった。




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