(3)広場でのあれこれ
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
広場についての大まかな話し合いが終わった後も、各々が集まって話し合いが始まっていた。
そんな中で龍の人さんが、皆で決めた内容に沿って今後中心部となるであろう建物を建て始める。
広場の中心になるのが運営が管理する役場になるのは確定で、そこを中心に十字に道を広げて基本的には碁盤の目になるように土地を作っていくことになった。
中には面白みがない町になりそうだという意見も出ていたのだが、最終的には道を確定していくのに一々話し合いの場を持つのが面倒だという意見で却下された。
そもそもプレイヤーは最大で百名と決まっているので、あまり広い土地を持っても仕方ない。
広場を中心にして世界が広がって魔物が出てくるようになるとかなら話は別だが、今のところそんな話も出ていない。
一応龍の人さんが作ったダンジョン(の一部)であることには間違いないわけで、恐らく魔物も出したりすることができるはずなのだが、そんな機能を持たせても仕方ないだろう。
もしかすると娯楽目的で闘技場なんかの施設ができるかもしれないが、それはまだ先の話だろう。
ちなみにあまり広い土地を持っても仕方ないというのは、建物自体にも同じことが適応される。
そもそも広場に出来る建物は生活の場になるわけではない上に、多くの人を招くこともないはずなのでそこまで多くの建物を持っても仕方ないのだ。
生産職であれば工房、戦闘職であれば採取したアイテムなんかをため込んでおく倉庫はあった方が良いかも知れないが、生活の場という意味ではそこまで多くの部屋なんかは必要にならない。
俺のように多くの眷属を抱えている人外系も広場に常駐させるなんてことはないだろう。
あるとすれば生産系のプレイヤーが店を作った時に常駐させる人員が出てくるはずだが、それも大人数ということにはならないとのことだった。
逆に店を構えた時に常駐させる店員をどこから賄うかという問題が出てきたが、それについては案内人さんがあっさりと解決案を出して来た。
その解決案とは、もちろん有償にはなるが店番用の人員を用意するというものだった。
一応眷属なんかを使って店番をさせることは可能だが、どちらにしても広場に何十人もの人員を用意するプレイヤーはいないだろう。
そうした諸々のことを考えて一つ一つの区画を広さを決めて、龍の人さんがそこに建物を用意していく。
ただしそれだけだとただのだだっ広い空間に一定の間隔を置いて建物がおかれていくだけだが、ここで何故か俺の出番が来ていた。
区画について話をしているときに精霊巫女さんが何気なく振ってきた話で、スキルを使ってこの場に植物を植えられないのかと問われたのだ。
さすがにダンジョンに植物を植えたことなどあるはずもなくその時の答えは「分からない」だったのだが、そこはノリのいいプレイヤーが集まっているということですぐに試してみることになったのだ。
結果からすればスキルを使えばあっさりと植物を植えられる&育てられることがわかり、それも計画の一部として組み込まれることになった。
まずは中央にある役場の周囲は少し広めの公園ということにして、そこに俺が適当に植物や花を植えて行った。
今となっては短時間で成長させることもできるので、すぐに成長した樹木や色とりどりの花が咲くことになる。
ただし色彩などのセンスに関しては全く自信がないので、アイや女性プレイヤーなんかの意見を取り入れつつ植えて行く。
そんなこんなで広場に解放者たちが集まってから数時間後には、小さな村の中心部と言える程度には体裁が整っていた。
ちなみに役場のすぐ近くになる一等地にはひときわ大きな建物が一つだけ建てられているが、これはデパート的な役目を持たせた建物になる。
この建物に各プレイヤーのテナントが入って商品を売り出すことになるのだ。
そもそもプレイヤーはあまり人数が多いとは言えないので、個別で店を構えても仕方ないという精霊商人さんの案を取り入れて作った建物になる。
勿論、小さなものでもいいから自分自身の店を持ちたいというプレイヤーもいるだろうし、それは各自の自由にしている。
というわけで大体の大枠が出来上がったところで、解放者以外のプレイヤーにも広場ができたことを周知することになった。
解放者全員が書き込みをするとわけが分からなくなるので、話が上手そうな精霊商人さんと魔導士さんが中心となって掲示板に書き込みを行っていた。
当然だがプレイヤーたちの反応は上々……というよりもいささか過熱しすぎのような気もしたが、待ちに待った施設(?)ができたということで仕方ないことでもある。
これら以外にも道を繋ぐ際の料金が払えないがどうすればいいのかなどの質問も出てきたりしていたが、それぞれお互いに話し合いをしながら解決していった。
中には別に今すぐ利用できなくてもいいというプレイヤーもいたが、それは個人の自由なので関与する者はいなかった。
そうこうしているうちに丸一日近い時間が経つことになり、ようやく広場解放の騒動は一応の落ち着きを取り戻すことになった。
ただようやく落ち着いたといっても、ここから先は個人個人で建物を用意したり、店を用意したりなどがあるのでしばらくは賑やかになるだろう。
俺自身も何故か建てた建物に植物を植えてほしいという依頼が来ることになり、それに対応する必要が出てきた。
勿論断ってもいい依頼ではあるのだが、折角他のプレイヤーと交流できる機会ということなので出来る限り対応することにした。
それが無理でも依頼自体は受けることにして、俺自身がいけない作業は子眷属が行うことにしている。
勿論それは依頼をくれたプレイヤーからの許可を取った上でのことで、それでも良いというプレイヤーがほとんどだったのでそういう形で落ち着いている。
ちなみに忙しくしていたのは俺だけではなく、龍の人さんを含めたダンジョンマスターになっている三人の人外系プレイヤーは建物の建築で忙しそうに動き回っていた。
とはいえダンジョンマスターには数に限りがあるので、建物のの建築は順番待ちが発生することになった。
その結果として意外な利用のされ方をすることになったのが、最初のうちに建てておいた例のデパート的な役目を持たせた建物だった。
当初は内装工事をして店ごとに区切りをする予定だったところをさらに小さく区切り、建築待ちのプレイヤーに貸し出しが始まったのだ。
プレイヤーが広場に来るためには道の出口になる場所を決めなければならず、そのための場所がブース的なものとして登場したというわけだ。
さすがに順番待ちをしているプレイヤーに対して文句を言う商人系プレイヤーもおらず、しばらくの間はその建物で店が開店するということはなくなった。
というよりも、そこで店を開きたいプレイヤーも自身の建物が建つのを待っているという状態だったので、文句が出るはずもない。
結果として建物が建ってブースが解放されるごとに、店の準備も始めていくということになっていた。
広場での騒動に関して一番助かったと思ったのは、時間の流れが転生世界に合わせてあるということだろう。
何しろ広場で色々とやっているうちに、あちらの世界では何か月も経っていたなんてことになれば笑えない。
時間の流れが同じなのであれば、あちらの世界と広場を行き来しながら様子見をすることもできるので、安心して広場に自分の居場所を作ることができていた。
ちなみに特に女性プレイヤーからの依頼で忙しくしていた俺自身は、最初に建てられた建物を落札していたので順番待ちをするということはなく居場所を準備することができていた。
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます