(10)眷属強化
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ゴレムを無事に(?)眷属化した後は、蟻の子眷属たちが少しだけ時間をかけて地下から穴を掘って外へと連れ出した。
勿論地上に出るための通路は、ゴレムが通れる広さになっている。
自然にできていたゴレムがいた空洞も、その後蟻の子眷属たちが整地を進めて数日後には綺麗になっていた。
折角できた空間なので、そこはゴレムの普段使いできる部屋……のようなものになる予定だ。
話を戻して地上に出てきたゴレムは、太陽の光のまぶしさに手をかざ――すようなこともなくゆっくりと俺たちの後に着いてきていた。
ただゴレムがいた場所はホーム周辺からは多少距離の離れた場所なので、地上に出てすぐに転移で送ることになった。
今回の進化によって俺が使える転移魔法もバージョンアップしているようで、他の存在も一緒に転移できるようになっていたのだ。
そのことに気付いて早速ゴレムを連れて試してみたところ、見事上手く行ったというわけだ。
ホームまで来たゴレムには、いくつかの魔石を渡しておいた。
それを使って進化するようにというわけだが、最近作れるようになった上位の魔石は渡していない。
それは別にケチったというわけではなく、いきなり高品質の魔石を渡してもそれを十分に生かした進化はできないと眷属たちに言われていたためだ。
ゴレム自身もそのことを理解しているのか、特に文句を言ってくるようなことはなかった。……ゴレムは常に無言なのだが。
その流れで他の眷属たちには、新しく作れるようになった上位の属性魔石を渡しておいた。
俺自身が進化したこともそうだが、因子がバージョンアップしているお陰でかなり質の高い魔石が作れるようになっているのだ。
この魔石のお陰で、眷属たちの進化もはかどるはずである。
余談になるが、ハウスに戻ってこの魔石を数個オークションに上げておいたら、これまで見たことがないような高値がついていた。
嬉しいことは嬉しいのだが、そもそもそれだけの金を何に使うのかという問題が発生することになる。
少し未来にそんな問題が持ち上がるなんてことはつゆ知らず、眷属たちに魔石を渡し終えた俺は一仕事終えた気持ちになっていた。
あとは眷属それぞれが自分の思うように、魔石を使って進化をするだけだ。
勿論その魔石を使って進化できるのかという問題もあったのだが、最初にアイに渡した時点で問題ないことがわかっていた。
魔石を渡されただけで自分が進化できるかどうかわかるのは不思議な感じもするが、そういうものだと言われればそうかと頷くしかない。
とにかく新しい魔石を渡された眷属たちは、これまでの通りに順番に進化をしていくことになる。
進化に時間がかかるのはいつもの通りだが、これまで以上に時間がかかったのはやはり進化の度合いが強く大きくなっているためだろう。
前回は一週間ほどで全員が進化で来ていたのが、今回は半月以上かかったのだからかなり強化されていることがわかる。
実際にステータス画面で眷属の種族を確認してみれば、それぞれがこれまでと違った大きな進化をしていることがわかった。
実際に進化を終えた眷属から話を聞いてもその通りなので、やはり得られる魔力(魔石)によって進化の度合いが違ってくることがよくわかる結果になった。
進化したすべての眷属の種族名に『極氷熱』がついていたが、これは完全に因子の効果が表に出た結果だろう。
濃塩水の因子がどこにいったのかという感じはあるが、そこは文句を言っても仕方ない。
そもそも魔物の進化がどういうものになるかなど分かっているわけではないので、名前についてもなおさらわかるはずもない。
ちなみに今回の進化祭りには、ミアは参加していない。
さすがに身ごもっている状態での進化は何があるのかわからないからという理由で、皆から止められていた。
本人は残念がっていたが、さすがにこんなところで実験をしても仕方ないので、今回ばかりは俺自身が強く止めるように言っておいた。
結果として出産を終えてから進化するということになったので、ミアは子供が生まれたあとの春まで進化はお預けということになった。
ファイなんかはしっかりと進化を終わらせてから、張り切って樺太方面に向かっていた。
早速どのくらい戦闘能力が上がっているのか試しに行ったのだろう。
数日後には喜び勇んで戻ってきたので、かなりの強化がされていることが説明されなくても察することができた。
勿論それ以外の眷属たちも大幅に強化がされているようで、それぞれが言葉にはしないまでも何かしらの実感をえているようだった。
そんな感じで眷属たちの進化祭りを見守っていたら、この世界に来てから何度目かの冬がやってきた。
世界樹の根で守っている二つの卵は、予定通りに雪に埋もれることなく根の下の空洞でしっかりと息づいている。
眷属として新たに加わったゴレムも、仲間たちとトラブルを起こすようなこともなく活動していた。
ちなみにゴレムの主な役目は、ホーム周辺の警戒で見事なまでに世界樹の護衛役として役立っている。
そして、これまで通りでありながら新しい状態にアップデートを繰り返すという日常を過ごしていたある日アイからとある報告を受けることになる。
そう。以前からドワーフと協力して開発していた新金属がついに完成したのだ。
アイが報告をしに来たということは既に大量生産の目途も立っているということで、ようやく以前から少しずつ準備を進めていた大きなプロジェクトを進められるようになった。
そのビックプロジェクトが何かといえば、本島や大陸に渡るための船を作り始めることだ。
船を作るためには造船所が必要であり、その造船所や船を作るための材料を得るための生産工場が必要になる。
既に計画自体は以前から進めていたので、あとは実際に材料を用意して必要な建築物を用意していく必要がある。
建物に関してはアイの子眷属であるドールたちがメインで建てているのだが、建物の素材として蟻の子眷属たちも参加している。
地下空間の壁で使われている例の素材は、熱や寒さに強く建材としては最高級の部類なのだ。
金属生産工場は、ユグホウラとしては初の大型建築物になるので、特にドールたちの張り切りかたが素晴らしかった。
普通に考えれば一年以上かかってもおかしくはない大型工場なのだが、半年もかからずに作り上げることができていた。
さすがにそれには驚いたが、それもこれも事前の準備とドールを総動員しての連携が素晴らしかったからだろう。
勿論、荷運び屋として蟻たちが大活躍していたということもある。
金属の生産工場ができたあとはいよいよ造船所の建築ということになるのだが、それについては少しだけ待ってもらうことになった。
何やらツガル家で動きがありそうだという報告があったのだ。
金属生産工場は色々な方面から隠すために内陸側に作られているのだが、造船所は最初から隠すつもりはない。
であれば一番エゾに近いツガル家が一番に見つける可能性が高くなるので、まずはこちらの存在を明かしてからというつもりだ。
ツガル家との接触は冬が開けて春になってから――と考えていたのだが、それよりも早く大きな動きが起こりそうだ。
情報部隊からの情報で、ツガル家当主の人となりはある程度分かっている。
それによれば、上手く行けばできる限り穏やかな関係を築けるのではないかという予想もあったので、これまで慎重にことに当たっていた。
その成果が勝手に向こうから転がり込んできそうなこの状況を利用しない手はない――ということで、まずはツガル家への接触を優先することになったのである。
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