(6)新しいメッセージ
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道南地域の領土化による新しいメッセージは、大きく二つの疑問を持つ結果になった。
そのうちの一つは『○○』となっている部分で、これは恐らくでっかいどーのことを指しているとも思われる。
これまででっかいどーだったり北海道だったりと呼んでいたのは、あくまでも俺が勝手に言っていたもので対外的に認識されているわけではない。
眷属たちは俺が言っている言葉はわかっているが、適当に『この島』とか『この地』とか呼んでいる。
本土(本州)の者たちからは外法の地と呼ばれているくらいなので、この世界ででっかいどーを正しく読んでいる名称は無いのだ。
だからこそシステム上(?)で『○○』と表示されているのだろう。
これには北海道全域を領土化したからには、正式な名前を付けろと言っているのだろう。
今後ずっとその名前で呼ばれる可能性があることを考えれば、その場の勢いでつけるわけにもいかない。
続いてもう一つの問題だが、これはメッセージの後半にあるボスについてだ。
わざわざ『新たなボス』と言っているからには、領土ボス以上の強さのボスが出てくる可能性が高い。
そうなると迂闊に呼び出すわけにもいかない。
メッセージから考えても強大な敵が出てくることはほぼ確定していると思われるので、これまでと同じようにきちんと準備を整えてから召び出すべきだろう。
――というわけで、一つずつ問題を解決しておくために眷属たちをホームに集めた。
「みんな、お疲れ様。子眷属たちのお陰で最後の地域の領土化は無事に終わったよ。ただ二つほど問題が出てきた」
「問題とは?」
代表して問いかけてきたアイに、俺もすぐに答えた。
「一つはこの島の名前についてだね。どうやらきちんと決めないといけないみたいだ」
「もう考えているのですか?」
「幾つか候補は考えているけれど、まだだね。皆に相談してからと思ってね」
そう前置きをしてから、考えておいた幾つかの候補を上げていった。
その中から皆の意見を聞きつつ決まったものを最後に確認をした。
「――それじゃあ、今いるこの島は『エゾ』ということでいいかな?」
『『賛成』』
他のプレイヤーに知られれば安直だと思われるかも知れないが、眷属たちが一番に気に入っていたので『エゾ』ということで決まった。
今後はでっかいどーとか北海道ではなく『エゾ』と呼ばれることになる。
一つだけ問題があるとすれば、これまで区分けされていた道央とか道北とかの呼び方がおかしくなってしまうのだが、これについては敢えて言及することしなかった。
エゾのすべての地を領土化したので、今後はわざわざ区分わけすることもないだろうし、もし必要になるのであればもっと細かい区分けが必要になると考えてのことだ。
そもそも眷属たちがエゾの中を移動するときは、世界樹を基準にしてどの方向という言い方をしている。
そのためエドを領土化した以上は、わざわざ呼び分ける必要もなくなるというわけだ。
「――あともう一つの問題だが、もう一体ボスが出てくることが確定した」
そう宣言した瞬間、眷属たちの間で空気がピリッとするのが感じられた。
これまでの経験から舐めた空気になることも懸念していたのだが、どうやら大丈夫そうだと判断して続きを話す。
「これは俺の予想だが、これまでの領土ボスよりも強いと思われる。エゾを統一できたからこそ出現するみたいだしね」
俺がそう理由をつけると一同は納得した空気になっていた。
もしかするとこれまでの経験からエゾを統一したら何かあるかも知れないという漠然とした予感を持っていたのかもしれない。
俺は全く気付かなかったがな!
……まあ、それはともかくとして、新しいボスが出てくることは皆と共有することはできた。
ボスが出てくると分かっている以上は、これをスルーするつもりは全くない。
敢えてシステムメッセージを出してまで警告をしてくるということは、その先には新しい何かがあると期待できるからだ。
もっと具体的にいえば、領土ボスを始めて倒した時のように世界樹が進化するのではないかと期待している。
それに
「次の戦いは、恐らくこれまでの戦いの集大成になる。ボスを出現させる場所は、敢えてホーム近辺を選ぶからな」
これは、次のボスが出てくると分かった時から決めていたことだ。
もしボスがこれまでと違った行動をするとすれば、そしてそのボスが空を飛べるとすれば、間違いなく世界樹そのものを狙ってくるはずだ。
次のボス戦がエゾを統一するための戦いだとすると、これまでエゾを領土化してきた世界樹が狙われないはずがない。
そのことが杞憂ならそれで構わないのだが、そうでなかった場合に備えて最初から準備をしておくべきだろう。
その俺の意図がきちんと伝わっているのか、眷属たちから反論はなかった。
これで俺から伝えておくべきことは、全て終わった。
あとはじっくり時間をかけてボス戦に向けて備えればいい。
勿論時間をかけるといってもそろそろ来る冬の前までには終わらせるつもりだ。
さらに加えれば、ドワーフたちが来る前に終わらせておきたい。
それからしばらくの間、来るべき戦いが総力戦になるという俺の気持ちが通じたのか、眷属は勿論のこと、子眷属たちが忙しく動き回っている姿が見られた。
忙しく動いている子眷属のことが見えているためなのか、その間ユリアや農作関係の研究に来ているダークエルフたちはそれぞれの仕事に集中していた。
俺自身もハウスに行って情報を集めたりしていたので、敢えて接触してくる気にはならなかったのかもしれない。
その代わりに言葉の話せる眷属たちに、何かしらの問いかけをしたりしていたようだ。
そんなこんなで世界樹のあるホームからは少しだけ離れた場所に準備を整えた眷属、子眷属たちは、その時に備えて集まっていた。
全勢力が集まってしまえば、魔法なんかを使って集中砲火で一斉に焼き放たれる可能性もあるので、各自決めた場所にある程度ばらけて集まっている。
人の戦いであれば戦力を分けるのは愚の骨頂とされるだろうが、相手が魔物の場合はその限りではない。
簡単に火のブレスを放ってきたり、広範囲に効果のある大魔法を使う可能性がある以上は、下手に戦力を集中させないというのも魔物相手には有効な場合があるのだ。
ちなみにこのまで大魔法やブレスを警戒しているのには、勿論理由がある。
その理由とは、領土ボスを召喚するときと同じように召喚されるボスが何か、ある程度のことがシステムによってわかっているからだ。
その相手というのが、ドラゴンだったのだ。
ただしドラゴンのいずれかの種ということまではわかっているが、詳しい種類まではシステム上には表示されていない。
それでもドラゴンが来るということが分かっているだけでも、十分ともいえるのだが。
今わかる情報をもとに十分な備えを用意した俺たちは、いよいよその時を迎えようとしていた。
俺の周囲には護衛を兼ねて、全眷属が揃っている。
なんだかんだで忙しく動き回っている眷属が、これだけ行う戦闘のためだけに集まるのは珍しい。
それだけ今回の戦闘に掛けている思いは、俺以上に持っているということだろう。
そしてすべての準備を整え終えて眷属、子眷属からの視線を集めることになった俺は、アイから渡された魔道具を使いながら宣言をした。
「これより戦闘を開始する!!」
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