(7)ドラゴン戦
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『Gyaaaaaaaaaooooooo!!!!』
ステータス画面を使ってボスを召喚すると、戦闘開始の合図のつもりなのか、ドラゴンから気合の咆哮が放たれた。
あるいはその咆哮には、相手を威圧する意味も含まれていたのかもしれない。
現に子眷属の中には、その咆哮で動きを止めてしまったものもいるらしい。
とはいえ俺の傍にいる眷属たちは、そんなことにはならずに即座に動――こうとしたところで俺の声でその動きを止めることになった。
「ストップ! ブレスが来るぞ! 各自防御!」
ドラゴンが開けた大口の中で、巨大な光の塊のようなものが発生しているのを見つけた俺がそう指示を飛ばした。
その指示に従うように、シルクが作った糸を放って壁のようなものを作り、その周囲にラックが放った強化魔法が展開される。
そのタイミングからわずかにずれて、予想した通りのドラゴンのブレスが放たれた。
どうやらドラゴンのブレスはそこまでの距離が届くようなものではなく、戦闘を陣取っていた俺たちのところまでしか届かなかった。
シルクの糸とラックの強化魔法で守られた壁によって、俺たちへのダメージは全くと言っていいほどなかった。
ただしブレス攻撃の余波によって、周囲に生えていた草花が焦げていたり凍り付いていたりしている。
それを見ただけでドラゴンのブレスは、熱と冷気の両方の性質を持っている厄介なものだということがわかる。
シルクとラックは難無く防ぐことに成功していたが、もしかすると子眷属が完全に守るのは難しいかも知れない。
そう考えた俺は、すぐさま子眷属に距離を取るように指示を飛ばした。
今の場所が限界であれば問題ないのだが、それ以上の距離を出せるとなると厄介なことになりかねない。
今回の戦いで子眷属たちが近距離攻撃をする予定はないのだが、遠距離攻撃は担ってもらう予定でいる。
ドラゴンにとってはさほど効果がない攻撃だったとしても、外からプチプチと地味に痛みを伴い攻撃が来るだけで精神的になるだろうことを狙っているのだ。
ドラゴンのブレスは連発できないと予想していたのだが、どうやらその予想は大当たりのようですぐにブレス攻撃が来ることはなかった。
一応連続で来たとしても防げるような手段は用意しておいたのだが、その手段を披露する機会はなくなった。
その代わりと言わんばかりに、シルクとラックが作った壁を一足で飛び越えたファイがドラゴンの巨体に向かって行く。
体長が三メートルほどもあるファイは眷属の中で巨体を誇っているのだが、ドラゴンに比べればそこまで大きく見えないから恐ろしい。
スケールでいえば大人のニホンザルが世界最大級の巨大ワニに向かって行っているような感じだが、戦いの様子はそんなのんびりしたものではない。
そもそもドラゴンにはイメージ通りに羽がついていて、空を飛んでいる。
そのドラゴンに向かって大きな熊がとびかかっているのだ。
物理学的に考えればどんな脚力をしているんだという突っ込みが来そうだが、実際には魔法などで強化をしているのだろう。
そのファイの一撃に効果があったのか、ドラゴンは空を飛ぶことを諦めて地面に降りてきた。
さすがにこれほどの短時間で降りてくるとは考えていなかったのだが、それはいい意味で計算違いだった。
ドラゴンが空から降りてきた理由は、ファイの攻撃が当たっただけではなくクインの攻撃やアイ、ラック、アンネが放っている魔法攻撃も大きかったのだろう。
鉄製の武器では絶対に攻撃が通らなかったであろうドラゴンのうろこが、そこかしこで白い煙が上がっている。
ファイの物理攻撃やそのほかの魔法攻撃がドラゴンにとってどれほどの効果があったのかは分からないが、地面に近い位置に降りてきたことは間違いない。
それを確認してすぐに、例によって根を動かしてドラゴンを拘束――しようとしたがすぐにその動きに気付いたドラゴンによって根は焼き払われてしまった。
溶岩がある空間にも耐えられるようになっているのだが、ドラゴンが放ったブレスか魔法(?)には耐えられなかったらしい。
とはいえそれだけの結果で止めてしまうわけではなく、懲りずにそのまま根での攻撃は続ける。
ちなみにドラゴンの動きを封じようと動いているのは世界樹の根による縛り付けだけではなく、シルクの糸も同じような効果を狙っている。
どちらの攻撃もドラゴンの動きやスキル(?)によって阻まれているが、何度も諦めずに続けている。
他の攻撃も来ているのに真っ先に俺とシルクの攻撃を防いでいるということは、ドラゴンがそれだけ縛り付けられるのが嫌だと考えているからだろう。
実際に縛り付けられるのが嫌だと思っているのではなく本能的に防いでいるだけだとしても、他の攻撃を繰り出すための補佐になっているのは紛れもない事実だ。
それでも領土ボスを一対一で倒せるようになっていることを考えれば、このドラゴンが今まで以上の強敵であることは間違いない。
そのことが分かっているからこそ入念に準備を進めておいたのだが、その甲斐はあったようだ。
ドラゴンはその特徴的なブレスだけではなく、力強い尾による攻撃や軽く空に舞い上がって地にいる俺たちに向かってジャンプ攻撃のようなことを仕掛けている。
それ以外にも四本ある手足を使った攻撃をしたりと、予想以上に多彩な攻撃をしてきていた。
ただし最初の頃のように空に浮いたままでいるほどの余裕はないのか、必ず地面に降りている時間がある。
そうなったときには俺やシルクだけではなく、ルフとミアの狼夫婦の攻撃も加わっている。
ミアはルフの子を授かっているはずなのだが、今回の戦いには出ると強く希望してきたので参加を許している。
とはいえ子供も大事なので絶対に無理はしないという約束をしたのだが、その約束がどこまで守られているかは少し不安が残っている。
ミアが動くたびにハラハラしながら見守りつつも、根による拘束を狙った攻撃は続けている。
そして眷属たちによる攻撃が効果を発揮してきたのか、ようやく俺とシルクによる拘束が効果を発揮するときがきた。
着実にダメージが当たって動きが鈍くなっていったドラゴンは、ついに根だけではなく蜘蛛の糸によって頭から尾まで雁字搦めにされた。
何度も根を絡ませて地面に括り付けられながらも、その強大な力によって破られてきたことから考えても、ようやくといった感想を持った。
地面にはりつけにされたドラゴンを見ても、油断をするようなことはない。
拘束によって物理的な動きは封じることができたが、魔法的な動きまでは封じることはできないのだ。
ただし動きを封じたことによって、これまでできていなかった新しい攻撃を加えることができるようになった。
それが何かといえば、これまで遠方で待機していた子眷属たちによる遠距離攻撃だ。
子眷属たちは時間をかけて練った魔法だったり、仕掛けておいた大仕掛けの物理攻撃(投石機など)を使ってドラゴンに攻撃を加え始めた。
これまでプチプチとしか与えられていなかった遠距離のダメージが、それによってドラゴンの体力を大きく削っていくことになる。
それらの攻撃の合間を縫って眷属たちも攻撃を加えているのだが、子眷属たちが仕掛けている攻撃の間に大技を放つための時間を稼ぐことができるようになっていた。
それらの結果から好循環が生まれていき、ドラゴンに大ダメージを与えられるようになった。
最終的には、何やら気合溜めと居合切りの合わせ技のような攻撃をしたファイの攻撃が、ドラゴンの首を綺麗に切り落とすことになった。
一体どうすれば無手でそんな技ができるのかと疑問に思ったが、とにかく結果は勝利で終えることができた。
そして例によってメッセージが来たことで、勝利を確信するのであった。
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