第7章

(1)売買機能

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 二度目の領土ボスを単独討伐したあとは、前回と同じように眷属たちとささやかな宴会を行った。

 そのあとは、こまごまとした用事を済ませてからハウスに戻った。

 戻る際にラックに伝えたのだが、今回の帰郷(?)は長くなる可能性があることをしっかりと言ってある。

 理由としては領土ボス戦の振り返りを落ち着いてやりたかったのと、たまにはのんびりと過ごしたいという思いもあった。

 領域の運営についても、もう少しすれば冬になって魔物の活動も落ちていくのでそこまで忙しくなることはない。

 その間に眷属たちには、適度に活動してもらうつもりでいた。

 ただクインとシルクについては、以前から頼んである偵察部隊の編成があるので、他の眷属ほどにゆっくり出来るというわけではない。

 とはいっても既に部隊の中心となるはずの女王種は生まれているので、二人の役割はその女王種に指導をするということになりそうだ。

 

 それらの下準備をしてからハウスに戻った俺は、久しぶりにベッドインして惰眠をむさぼった。

 普通に考えればベッドなど必要ないはずなのだが、何となく寝るという行為によって疲れが癒える気がして用意したのだ。

 ある意味で無駄な出費ともいえなくはないのだが、くず魔石は現状余っているので用意させてもらった。

 それ以外にも娯楽品ともいえるものも多少は増えているのだが、どちらかといえばそれらは向こうに持ち込むために買っているものも多い。

 

 ホームから戻って数時間ほどベッドインした後は、毎度のことのように掲示板の確認をしておいた。

 今のところ戦略ゲーをやっているのが俺だけということで参考になる部分はそう多くはないのだが、基礎的なところでは重なる部分も多いので参考にできることもある。

 主に魔法関係では色々とお世話になっているので、以前は転移魔法について投げたこともある。

 結果として色々と騒がしいことになったようだが、これは『ゲーム』を進めていくうえで必要なことだろうとありがたがられることはあっても煙たがられることはない。

 

 というわけで、何か新しくわかったことは無いかと情報収集を始めたのだが、最新まで進めたところで重要な話があることに気が付いた。

 どうやら俺以外に売買(ショップ)機能が使えるプレイヤーが出てきたようなのだ。

 売買機能の解放は、上級職になることと一定量以上の魔石の換金を行ったことと言われていたが、どうやらその予想は当たっていたようだ。

 ちなみに上級職になるのは別に神殿とかで変わるというわけではなく、周囲の認識の変化で勝手に変わっているらしい。

 

 職についてはともかく、今は売買機能についての確認が優先である。

 とはいってもこればかりは相手がいないと話が進まないので、二番目の解放者となった商人さんを待つことになる。

 かといっていつまでも掲示板を占有しておくわけにはいかないので、こういうときこそ例のメモ帳の出番となる。

 そして掲示板にメモ帳で待っていることだけを伝えておくことしばし、数時間ほどで例の商人さんがやってきた。

 

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 木の人 :こちらでお待ちしております。

      入力制限はどうしましょうか。

     

 上級商人:お待たせしました。ちょっと向こうで商売をしていたら遅くなってしまいました。

      入力制限は、このままでいいのでは?

      会話に交じりたい方もいるでしょう。

      

 木の人 :気にしていないので大丈夫ですよ。

      制限については了解です。

      

      それで早速ですが、待っている間に幾つか商品をあげてみました。

      どうでしょうか。

      

 上級商人:ショップ機能とオークション機能に別れているようですが、どちらに……。

      失礼いたしました。ショップの方でしたね。確認します。

      

 木の人 :現状二人しかいないようですからね。

      オークションに上げても仕方ないと思いました。

 

 上級商人:ははは。確かにその通りですね。

      ……で、木の人さん。これはなんですか?

      

 木の人 :え? 何って……。

      私が作れるものをあげてみたのですが?

      

 上級商人:そうですか……。あなたが作れるのですか……。

      こんなものあちらの世界で見たこともないんですがねえ。

      場所柄によるものでしょうか……。

      

 木の人 :え? そうなんですか?

      珍しいとは考えていましたが……。

      

 鍛冶師 :おおーい。二人だけで納得していないで何を売ったのか教えてくれ。

 

 上級商人:ああ~。ここで秘匿してもいずれはばれるから言ってしまってもいいでしょうか。

      木の人が上げられたのは二つ。とある種ととある魔石ですね。

      ちょっとばかり雪の中で育つと書いてあったり、属性が混じっていたりしますが……。

      

 鍛冶師 :どういうことかわからん。

 

 上級商人:でしょうね。私も目の当たりにしても納得できませんでしたから。

      これ以上は実際に目にして確認してください。

      

 木の人 :ええっと。何か問題でもありましたか?

 

 上級商人:いえいえ。まあ、問題といえば問題ですが、要はどう扱うかです。

      これ、このまま買ってしまってもいいのですよね?

      

 木の人 :そのつもりで出しましたから問題ありません。

 

 上級商人:それよりもこんな値段で大丈夫なのですか?

 

 木の人 :ああ。値段設定は、固定値があってそこから±五十%といったところのようです。

      それ以上の値段で売りたければ、オークションを使えということでしょうね。

      

 上級商人:なるほど。あちらの世界での混乱を避けるためでしょうか。

      それはともかく、私が出せるもので木の人が喜びそうなものは――。

      

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 こんな感じで売買機能の確認を終えた。

 ショップ機能、オークション機能、それぞれで使い方があるようだが、人数が少ないいまはあまり使い分けも必要ないかも知れない。

 そう考えていたのだが、どうやらオークションは期間を設定してその間見せておくことが出来るようで、敢えて無期限であげておくことも出来るようだ。

 無期限にした場合は、出品者が好きなタイミングで入札を止めることが出来るようで、その時点での値段で落札となる。

 これらのことは、上級商人さんと協力してわかったことである。

 

 それらのことが分かっただけでもありがたかったのだが、上級商人さんからとあるものを仕入れることができた。

 それが何かといえば、魔物の卵だ。

 もう少し具体的にいえば、何かの蟻種の魔物の卵だということまでは分かっているらしい。

 ショップで表示されていた説明欄にも同じことが書かれていたので間違いないのだろう。

 ちなみにショップの機能では、名前も説明欄もプレイヤーが自由に記載できないので、詐欺行為的なことはできないようになっている。

 

 手に入れた卵はあちらの世界に持って行って孵化するつもりだが、俺自身はもうしばらくこちらで休んでいくつもりだ。

 魔物の卵はこちらで孵化することはないらしく、それについては特に心配はしていない。

 そんな感じで売買機能については一通りの確認が終わって、まったりモードに突入するのであった。




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