(7)新たなメッセージ
複数の領域主の討伐から数日が経った。
その後も相変わらずエリアボスの討伐を行っているが、今のところ複数領域のボスは出てきていないようだった。
その理由が主の入れ替えが激しいためなのか、あるいはもともそ領域を拡張しようと考えるボスが少ないからなのかはわかっていない。
他にも理由は探せばいくつも見つけられるだろうが、確証を得るだけの情報も少ないので本当のところの理由はわからないだろう。
ミアのように元領域主から眷属やそれに準ずるような存在に変わった場合に情報は得られるかもしれないが、そもそもエリアボスがどうやって仲間になるかもよくわかっていないので期待はできない。
ちなみにミアの場合は狼としての習性なのか、あまり領域を広げようとは考えていなかったらしい。
そう考えると領域主によっては一つの領域だけで満足する種もそれなりにいそうだ。
それなりどころか、これまでの経験から考えるとそういった種のほうが多いのかもしれない。
そんなこんなで、北方面の攻略は順調に進んでいる。
今はでっかいどーのとんがり部分の東と西の海沿いを飛び地にならないように、順々に領域化していっている。
特に複数領域の主がいた西側は攻略が進んでいて、あと二つか三つの領域を攻略できれば北の端っこ(納沙布岬)まで到達できるのではないかというところまで来ている。
こうなってくるとやはり最後は宗谷岬がありそうな領域を最後にしたいかな、なんて遊び心を入れたくなってくる。
そんな呑気なことを考えていたある日、予想していなかったメッセージを受け取ることになった。
『特定地域のうちの規定量以上を領域化することができました。これ以降、特定領域を領土化することが可能になります』
そんなメッセージと共に、ステータス画面に新たな項目が追加されていた。
その項目名はそのまま単純に『地図』で、そこを脳内クリックするとその名の通り地図が出てきた。
「……あー。折角シルクに地図を作ってもらったのが無駄に……いや、無駄にはならないか。皆にも見せることができるし」
比べるのが間違っているというのはわかっているが、シルク(というよりも子眷属たち)手製の地図よりもはるかに正確にできているように見えるその地図は、元の世界で使われていたものと変わらない。
その地図が、白と灰色で塗り分けされている。
白い部分が今まで領域化したところで、灰色がまだ未攻略のところなのは言うまでもない。
さらにその地図で判明したことは――、
「……うん。わかってはいたけれど、やっぱりどう見ても北海道だね」
どう見てもその地図に描かれている土地は、よく見慣れた地形になっていた。
これを見て北海道じゃないと言い張る勇者(?)はいないだろう。
ただ一つだけ懸念点をあげるとすれば、北海道以外の陸地は未だ描かれていないということだろうか。
北海道以外の部分は、一部の戦略シミュレーションでよくあるような靄がかかったような状態になっている。
縮尺的には北海道の南側の部分に青森が見えていないとおかしいはずなのだが、今のところは見えていない。
恐らくだが、探索を進めるか一部を領域化しないと駄目だということだと思う。
こんなところで運営が嘘の情報を入れてくるとは思えないので、今いる場所は北海道ということで確定していいだろう。
それ以外の地域については……分からないとしたいところだが、ほぼ以前の世界と同じとみていいはずだ。
となると今後の攻略についても考えが立てやすくなるのだが、今はまだまだそこまで考える余裕はない。
眷属たちが成長してくれば別だが、とりあえずは北海道平定に全力を傾けるべきだろう。
というわけで地図については以上だが、さらにもう一つの問題がある。
それはメッセージにも出ていた『領土化』という文言だ。
今までエリアボスがいたところを領域としていたが、一定以上の範囲を領域化すると領土と呼ばれるようになるということだ。
領土といえば国がすぐに結びついてしまうのだが、それがこの世界でどういう意味を持つのかよくわからない。
ただ、よくわからないといっても北海道全域の領域化は既に決めていることであり、今更変えるつもりは全くない。
となれば領土化すること自体は問題ないといえば問題ないのだが、よくわからないのは特定領域の領土化という文言だ。
文面を見る限りわざわざエリアボスを倒さなくても領域化できると見えるのだが、本当のところはわからない。
分からないものに下手に手を出していいものか――。
そんなことを考えていると、たまたま傍にいたシルクが変な動きをしていたことに気付いたのか、話しかけてきた。
「主様、先ほどから何か悩んでいるようですが、何かございましたか?」
「あっ……あー。まあ、あったといえばあったんだけれどね」
ここに来て発動してきた優柔不断に、シルクのお陰で気付くことができた。
「……? よくわからないのですが……ご相談に乗れるようでしたら乗りますわ」
「ありがとう。……そうだね。折角だから一人で悩むよりも皆に話したほうがいいか」
シルクから話しかけられたことによりそんな気分になった俺は、さっそく皆を集めることにした。
といってもファイは例によってエリアボスの討伐に向かっているので、それ以外の眷属を集めて話した。
――そして領土化についての話をした結果、やっておいたほうがいいのではないかという結論になった。
話の過程をものすごく端折ってしまうと、要するにどっちにしろ領土化することになるのであれば、システム的に終わらせてしまった方が早いということだ。
問題があるとすれば、領域化していない場所を領土化して組み込んだ際に元居たエリアボスがどうなるのかということと、一気に広げてその後の管理が大丈夫なのかということだ。
前者についてはやってみないと分からないということで現状無視するしかないが、後者については問題ないという結論になった。
クインとシルクはある程度余裕を見て子眷属を増やしているようで、北方面全域を領域化しても問題ないくらいの数は揃えている。
さらにもう一つ上げられたのが、結果どうなるのかわからないことは問題が起こっても小さく済むうちにやっておいたほうが良いということだ。
要するに、恐らく今が最小単位になるであろう領土で問題が起こっても被害は最小限で済ますことができるはずだと。
例えば領域を北海道全体に広げた時に一気に領土化して問題が起こっても、対処が難しい可能性があるとのことだ。
たしかにその言い分には納得できることがあったので俺もすぐに同意しだのだが、他の皆も同じ考えのようだった。
といことで領土化は今のうちに行おうということになったのだが、すぐに行ったわけではない。
今はファイが遠征に行っているので、帰ってくるまでは待とうということになった。
もし何かが起こって戦力が必要になった時に、個人では最大戦力であるファイがいないというのは問題がある。
それに加えて、事前にきちんと説明しておいた方が対処もしやすくなるだろう。
一応急ぎで知らせるためにラックを向かわせているが、その連絡かファイのエリアボス討伐のどちらがが先になるかは微妙なところだ。
というのも事前に決めていた計画では、ラックは既にエリアボスと戦いを始めていてもおかしくはないのである。
もっともその予想は一番早く着いた場合にという条件が付くので、どちらが先かは微妙という表現になっている。
どちらにしても領土化を試すのはファイが戻ってきてからということになるので、最低でも数日は今のままの状態ということになった。
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます