(2)ステータスと外
本日(2020/11/22)投稿1話目(1/3)
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いつまでも嘆いていても仕方ないので、無いものは無いと割り切って今ある
まず『名前』は、そのまま名前だろう。たぶん。
本名(?)が括弧書きになっているのは、ゲーム用の名前を付けろということだと理解することにした。
で、どうやってその名前を付けるかということだなんだけれど……特に入力端末があるわけではないので、ステータスを表示したときのように脳内でその名前を思い浮かべてみる。
ちなみに思い浮かべた名前は、ゲームやなんかでいつもつけているキラという名前だ。
本名のまんまじゃないかって?
……いいんだよ、それで。
わかりやすいじゃないか。
――と、この状況を見ているはずの誰かさん(運営:上司)に言い訳をしつつ、そのままステータスを確認の続きを行う。
付けた名前はしっかりと反映されていて、『名前:キラ(桂木昭)』となっている。
続いて『種族』と『職業』だが、これは≪未設定≫となっているので確認のしようがない。
一応脳内タップのような真似をしてみたが特に反応することはなかったので、このまま放置するしかないと諦めた。
そして今のところ一番重要だと思われる『所持スキル』。
現在持っているスキルは、『魔力操作』と『分体生成』の二つ。
少しの間考えた結果、俺が勝手に『塊』だと思っていたアレが魔力で、木の体の中を自由に移動していたことが『魔力操作』のスキルを獲得できた理由だと思われる。
そしてもう一つの『分体生成』だが、こちらはその魔力を使って外に出ようとした(ちょっと外に出た)結果がスキル獲得に至ったわけだ。
どちらも決めつけだと言われればそれまでだが、そう大きくは外れていないと考えている。
(……で、まとめたのはいいんだけれど、だから何だと言われればそれまでなんだよなあ……。……いやいや。こういうことも考えていくことも重要! ……だと思うことにしよう)
そんなこんなで今わかっていることはある程度まとめられたのだが、一つ重要なことがある。
それが何かといえば、スキルにレベルは存在しているのか、ということだ。
現状スキルレベルは表示されていないが、この理由が最初からレベルは存在していないからなのか、レベルまで見ることができる
通常のゲームだとヘルプ的な何かがある場合も多いのだが、この
何しろステータスを確認するためだけでも、かなりの苦労をしているのだから。
だからここに来るまでどれくらいの時間を使ったのか、考えてはいけないと目はないけれど涙をこらえることしかできなかった。
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何やら一時自虐モードに入ってしまったのだが、どうにか立ち直って改めてこれからすることを考え始めた。
(ステータスはこのまま何もしなければ、これ以上の進展はしないはず。となれば、やっぱり今できることをやってみるしかないわけで――)
今できることといえば、ステータス確認のために中断してしまった塊――魔力を体外に出してみることだ。
それがすでに『分体生成』だろうと当たりはつけているが、それが事実かはきちんと検証しないとわからない。
というわけで、早速先ほどと同じように魔力を外に出してみた。
するとスキルがあるお陰なのか、最初にトライしたときと違って何の苦労もなくあっさりと魔力を体の外に出すことができた。
もう少し手間取るかと考えていたので少し拍子抜けしたが、毎度毎度外に出るたびに時間がかかるよりは遥かにいいだろうと納得することにした。
そして肝心のできた分体についてなのだが――――。
「……え!? あれ? もしかしなくても、目が見えてないか? ――ってか、こ、声が! 耳が!!」
分体を作った結果現れた劇的な変化に、思わず感激の声が出てしまった。
だが今は何と言われようとも、目が見えて、声が出せて……と、以前できていたことが当たり前のようにできていることが嬉しかった。
そう。分体生成でできた分体は、そのまま人の形態をしていたのである。
目が見えて宙に浮いていることが分かっても、背中に羽らしきものがあると感じても、人の形は人の形だ。
ただの魔力の塊のままよりは、はるかにましだと前向きに考える。
とはいえ、いつまでも感激に浸っているわけにもいかなかった。
その理由はただ一つ。
嬉しいという感情に浸っていたいがために敢えて無視をしていたのだが、目が見えるとわかってからずっと視界にチラチラと映っている存在がいるからだ。
しかもそれは一つだけではなく、複数存在している。
そして≪≪彼ら≫≫は、一様に思い思いの格好で俺に対して敬意を表している――ように見えるのである。
彼らの姿かたちを確認してみれば、見覚えのある形から想像上の姿の者まで様々だった。
俺に対して敬意を表している存在は、見えているだけで全部で六体。
それ以外にもいるのかもしれないが、少なくとも現在の姿で確認できるのはそれだけだ。
一応ほかにいないか見える範囲で確認したが、特に大きな変化は起こらなかった。
というわけで、改めて彼ら――六体のことを確認してみる。
一体目は大きな梟で、二体目は恐らく木の枝で作られているであろう人形(木人?)、三体目は下半身がクモで上半身が人であるいわゆるアラクネ。
四体目は銀色をした犬か狼で、五体目は時々体毛の先から火の粉が舞っているように見える大きな熊で、最後の六体目が人の体に昆虫の羽のようなものがついている女性だ。
大きさについてはそもそも基準となるものがまだよくわかっておらず、自分自身の大きさが大きいのか小さいのかの判断ができないので、いまいちよくわからない。
確実にわかっていることは、六体すべてが自分よりも確実の大きいということだけだ。
そんな感じでつぶさに彼らを確認していたわけだが、さすがにそろそろ黙ったままというのが何やらいたたまれなくなってきた。
彼らが動かずにジッと黙ったままでいるのは、俺から声をかけられるを待っているからだと思いついてからはなおさらいたたまれなさが強くなってきた。
見た目だけで判断すれば、彼らが俺自身を攻撃して来ればひとたまりもないということは考えなくてもわかる。
ただ襲う気があるのであればとっくに襲ってきているはずで、そうではないということは俺のことを仲間か何かと思っているということだ。
そもそも見た目が全然違う彼らが、お互いに牽制するでもなくジッとしているということ自体が、野生ではありえないことだ。
そんな理由付けをしたところで、ようやく話しかける覚悟を決めた。
「え、えーと……。初めまして、でいいのかな?」
そう言葉をかけると、それまでほとんど動いていなかった彼らが、一斉に頭を下げるような仕草をした。
その姿は、誰がどう見ても上位の存在に対して敬意を表しているようにしか見えない。
だからといって油断するわけにもいかず、さてどうするべきかと考えていると、六体のうちの一体――昆虫の羽を持った女性が話しかけてきた。
「主様。よろしいでしょうか?」
「あ、主? ……って、俺のことか。うん。いいよ」
「主様はどうやら表に出てきたばかりで混乱されておられる様子です。ですので、私どもが分かる範囲でお教えしたいと思いますがいかがでしょう?」
「そうだね。できればそうしてくれると嬉しいかな」
まったく情報のなかったところにようやく情報が得られるとわかったので、威厳も何もなく速攻で同意するのであった。
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