第1章
(1)目がない?
本日(2020/11/21)投稿4話目(4/4)
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<Side:昭>
目が覚めてみると、そこは知らない天井だった――。
(――なんて一回は言ってみたかったんだけれどな。……ってか、ここどこ……の前に、真っ暗のまま?)
俺――桂木昭としては目を開けているつもりなんだけれど、真っ暗のままで周囲の状況を確認することさえままならない。
いや。それ以前に、今のセリフも言葉に出しているつもりだったが、そもそも音として聞こえていないような……。
――――よし。一回落ち着こう。
キャラクリエイトの時も同じようなことをしていたのだけれど、こうしないと落ち着いて物事を考えられない。
これはもう、自分自身の性格だから仕方ないと諦めている。
――――さて。
一回落ち着いてみたのだけれど、全く状況は変わらず。
ここでふと思いついたことをやってみようと、声(?)に出してそれを試してみる。
(ステータス!)
……………………………………………………あれ?
ここはキャラのステータス画面なりなんなりが出てくる場面ではないですかね。運営さん?
そう文句を思い浮かべてみるも残念ながら相手から返事があるはずもなく、意味もない言葉をただただ叫んだ(?)だけの結果になって空回り。
体感的には既に十分近く経っているが状況は全く変わらず、実は最初の頃から思い浮かんでいる嫌な予感がどうしても頭の中を支配し始めてきた。
一度その考えに囚われてしまうとどうしてもそれから離れることができなくなってしまう。
うん。どう考えても目も口もない生き物? ――に
……ってか、心臓、どこよ?
人であれば目を瞑ってある程度集中すれば感じられるはずのトクントクンというあの独特の感覚が全く感じられない。
いや。明らかにそれとは違った『流れ』のようなものは感じられるのだけれど……。
仕方ないので、その感覚を頼りに現状を確認してみることにした。
ただ一度やってみてわかったのだが、人でいえば血液の流れを自分自身で確認しているようなもので、その感覚で感じたものが正しいかどうかは全く分からない。
それでも他に頼りに出来そうなものもないので、今できることをやってみる。
現在感じとれる『流れ』を頼りに、徐々に周囲の状況を確認する。
そうして分かったことが、授業などで習った人の血液の流れよりもはっきりと自分自身の『体』を感じ取れることができるということだった。
そうとわかれば、あとはその流れに従って自分自身の体を流れに沿ってより強くイメージする。
『流れ』だけを頼りに形をイメージするので、大半を想像に任せることになってしまうのだがこれは仕方ないと今は諦める。
身動きどころか目視さえもままならない状況なので、この際贅沢は言っていられない。
しばらくその『流れ』に身を任せていると、ようやく体(?)の概要が分かってきた。
まず人でいえば体(胴体)の部分に当たる部分は、しっかりと存在していた。
それに合わせて手と足のようなものもあった。
目で物を見るために頭も必要なんだが……どうにもそれっぽいものはどう考えても感じ取れなかった。
……何となくわかっていたことだけれど、少しばかりショックを受けてから探索を再開した。
まず足の部分だがこれは二本だけではなく、複数存在しているようだ。しかも、タコやイカのような本数ではなくさらにもっと多くの『足』が絡み合うように存在している。
そして上に感覚を向ければ、腕と手のようなものもしっかりと存在している。
もっといえば、人の手でいえばの指先辺りには薄っぺらい何かがサワサワと揺れていた……。
ああ、うん。もう、わざわざ抽象的な言い回しは止めて、はっきりと言ってしまおう。
これ、どう考えても木ですよね。運営さん?
そりゃ、目なんかあるはずもないですわ。
…………いや。これからどうしろと?
そうセルフ突っ込みをしてみるが、当たり前のように答えは返ってこない。(2回目)
いっそのこと死に戻りなんぞを試してみようかという気にもなったが、そもそも木がどうやって自前でお亡くなりになれるかもわからない。
ひとしきり悩んではみたものの明確な答えは見つからず、さりとて運営に文句を言い続けるのも飽きてしまった。
ついでに、聞く相手もいないのにずっと文句ばかり思い浮かべるのも難しいもんだと、どうでもいい発見をしてしまう。
しばらくやさぐれてから、今唯一自分自身で確認することができる『流れ』を頼りに、もう少し状況確認を続けてみることにした。
といっても『流れ』で探れる場所は、それこそ毛細血管(?)に至るまで隅々まで移動できたと思う。
そんな思いにとらわれ――ようとした時に、ふと気づいたことがあった。
――――そもそも、この『流れ』を探っているのは何が移動しているんだ、と。
最初のうちは気付かなかったのだが、後半は明らかに何かの塊(?)のようなものを移動させて『流れ』に乗っていた。
となれば、その塊がどういったものかを探るのもいいだろう。
どうせ他にすることもないので、そのただの思い付きをさっそく実行してみた。
というわけでその塊に関して探ってみると、色々なことができることがわかった。
まず体内(?)の移動は最初の探索でできることが分かっている。
それだけではなく塊自身もきちんと『大きさ』が存在しているようで、基準になる大きさから大きくなったり小さくなったりできるようになった。
さらに体内の探索をしていた時には一定のスピードだったのだが、大きさを変えられるようになった頃から移動の速さも自在に変えられるようになる。
そこまでできるようになれば何となく「楽しい」という感情が浮かんできて、さらに色々なことを試すようになっていった。
そんなこんなで『塊』を使って色々と遊んでみたが、ふと思いついたことがあった。
この『塊』、体外(木の外)側に出すことはできないのか、と。
ぐるぐると体内を回っているときに気付いたのだが、なんとなくできそうな気がする。
そう思い込んでしまえば、あとは速かった。
それから試行錯誤、様々な方法で試してみたのだが――、
(――――おっ……!? もしかしてこの方法なら行ける?)
それは、体の一番外側――人でいえば皮膚に当たる部分に、塊をへばりつけるように伸ばしてみたときに気が付いた。
塊の何かの濃度が濃い時ではなく、薄くなった時に体外に出やすくなるのではないかと。
そう思いついてしまえば、あとは実行あるのみ。
というわけで何度目かのトライ&エラーを繰り返して、ついにほんのわずかだが塊のごくごく一部分を体の外に出すことができた。
そう思った瞬間――。
【初めてのスキルを手に入れることができました。これ以降、ステータスを確認することができるようになります】
そんな音になっていない『声』が聞こえてきた。
何となくだが、その声が例の講堂で会ったあの美人さんのものに聞こえなくもなかったが、これはあくまでも自分が長い間誰とも話をしていなかったことによる錯覚だと思う。
あまりに突然のことだったので、詳しく考察できるほど余裕を持って聞き取ることができなかったのだ。
とにかく初めてゲームらしいことが起こったので、塊を外に出す実験は一時中断してさっそくメッセージにあったステータスを確認することにした。
(ええと。ステータス確認は、どうすればいいんだ? ――ステータス?)
脳(思考)内で思い浮かべるのは初めの頃の恥部が思い出されるため一瞬ためらったが、今回はメッセージ通りにあっさりとステータスとやらが確認することができた。
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ステータス
名前:未設定(桂木昭)
種族:未確認
職業:未確認
所持スキル:魔力操作、分体生成
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ええと。これだけですか、運営さん?
もう少し詳しく教えてくれてもいいのですよ?
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本日の投稿はここまでです。
明日は3話(8時、14時、20時)の投稿になります。
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