プロローグ2(Q&A)

本日(2020/11/21)投稿2話目(2/4)


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 荒唐無稽すぎる話を聞かされていきなり信じる者はいない――と言いたいところだが、何故だか室内はそういうこともあるのかという雰囲気になっていた。

 後から思えばそういう話に少なからず耐性のある者たちが集められていたことがわかるのだが、今の昭にはそんなこともわからずに多少戸惑っている。

『多少』で済んでいるのは、昭もいわゆるオタク方面の知識を持っているからである。

 昭がちらりと周囲を見回せば、中には満面の笑みを浮かべながら美女改め案内人の話を聞いている者がいる。

 いずれにしても、今この場に残っている者で変に案内人に突っかかろうとするものはいないようであった。

 

 自己紹介がてらの状況説明を終えた案内人は、個々人の前にあるプロンプターもどきの操作について説明をし始めた。

「――そちらの目の前にある端末は、あなた方の知る言葉でいえばタッチパネル式になっていますので触れれば起動します。後はそちらで細かいことを確認いただければと思います。もしわからないことがあれば、その端末から質問ができるようになっています」

 そこまで説明した案内人は、それ以上話すことはないと言わんばかりに昭たちから見て教壇を挟んで反対側に用意されていた椅子に腰かけた。

 その動きがいちいち優美で思わず見とれてしまうのは、恐らく昭だけではなかったはずだ。

 

 昭が案内人に見とれていたのは時間にして五秒ほどで、我に返った昭は次に目の前にあるプロンプターもどきに注目した。

「――さて。タッチパネル式と言っていたな」

 昭がそう言いながら右手の人差し指で画面に触れてみると、何も映っていなかった画面に黒い背景に三つの文章が表示された。


【はじめに(まずはこちらをお読みください)】

【キャラクリエイト(キャラ・世界観作成)】

【Q&A(何かあればこちらで質問をしてください)】


 これが通常のゲームの導入画面であればどれだけ安上がりに作ったのかと文句が言いたくなる作りだったが、ここでそんなことを言っても仕方ない。

 そもそも案内人が言っていることが本当だとすれば、既に亡くなっている者を集めて別世界へと送ろうとしている存在だ。

 敢えてそういう造りにしたのだと考えることにした。

 そんなことよりも昭にとって大事なのは中身の方なので、まずは【はじめに】から読むことにした。

 

 

 たっぷり時間をかけて【はじめに】を熟読した昭は、今一度自分の中で読んだ内容を整理することにした。

 ただ整理といっても【はじめに】に書かれえていた内容は、案内人が最初に説明をした話とその補足的なものだった。

 その補足部分は次のようなものになる。

 

・初期画面(一番最初に出てきた三つの文言がある画面)にあるキャラクリエイトを選択すれば、プレイヤーがこれから生まれ変わる世界の選択と自分自身のキャラ作成をすることができる。

・新たに転生した世界でどのように行動するかは自由で、特に運営側を意識する必要はない。

 (そもそも運営は、プレイヤーに何かを目的を持たせて行動を制限するつもりはない)

・死に戻りは自由。ただしキャラは一から作り直すことになる。元のキャラでやり直しということはできない。

 (同じキャラではないという意味では死に戻りはないといえるかも?)

・最初のキャラ作成には制限時間(二十四時間以内)があり。間に合わなかった場合は、参加意思なしと判断して輪廻の輪へと強制送還。


 これ以外にも書かれていたことはあるが、先ほどの案内人の説明の延長にあるような内容だった。

 そして昭が【はじめに】を読んで分かったことは、本当の意味でゲームのような世界に転生できるということだ。

 キャラクリエイトの画面をまだ見ていないのでどんな世界観なのかはわからないが、期待が大きくなってくるのが昭自身も自覚できた。

 そのおかげなのか、自分が既に死んでしまっているという事実よりも、この先どんなことができるのかという意識のほうが強くなっていた。

 

 とはいえ、基本的に「石橋を叩いて渡る」的な性格をしている昭は、すぐに【キャラクリエイト】の画面は開かずに、【Q&A】を開いた。

 昭が【はじめに】を読み始めてからそこそこ時間が経っているので、気の早い者たちが案内人に対して質問をしているのではないかと考えたのだ。

 その予想は正しく、昭にとっても有用な質問と答えが並んでいた。

 

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 ――ゲーム外について――

 

Q,そもそも何故俺たちが選ばれた?

A,こういった状況に適正がありそうな者の中からランダム。


Q,死んだときの記憶がないのは何故?

A,その時の記憶があると、皆様の今後の活動に支障が出ると予想されるためこちらで消去済み。


Q,プレイヤーはここにいる面子だけ?

A,今見えている人たちは一つのサーバー分だとお考え下さい。別のサーバーにも他のプレイヤーがそれぞれ存在しています。

  このようなサーバーは百ほど用意されており、それぞれが現在進行形でリリースされております。

  今のところ別サーバーでのプレイヤー同士の交流などは予定されておりません。


Q,これだけのことをできるのであれば、元の状態に戻せるのでは?

A,そもそもやる意味がないのでやりません。繰り返しますが、この状況に不満がある場合は、輪廻に戻っていただくだけです。


Q,近くの人と話ができないのは何故?

A,この状況に戸惑って騒がしくなるのを防ぐためと、周りの意見に流されずに自分の意志だけで選択してほしいため。


Q,お姉さんのお名前は? 

  運営さんは複数人?

  他の運営さんも美人さんが多い?

  イケメンな運営さんは?

  ぜひお近づきに……。

  etc,etc.

A,名前はまだないということで。

  今後の展開次第では私以外の運営の者とも知り合えるかも……?


Q,運営は神様?

A,神という定義が地域や宗教によって違っているので、そうだと断言することはできない。

  人にない力を持っているとか世界を管理しているという意味においては、そうだといえる……のか?

  


 ――ゲームについて――


Q,死に戻りがあるようだが、戻ってきたときはここに戻る?

A,プレイヤー専用のハウス(拠点)を用意しています。現在いる場所はあくまでもプレイ前の準備場所です。

  ハウスはカスタマイズ可能でキャラの転生先とはまた別の独立した世界になります。


Q,ハウスにはいつでも出入り可能?

A,初めて転生した時点でチュートリアルストーリーがあるので、それをクリアすれば自由に出入りできる。


Q,ストーリーは強制?

A,ストーリーらしきものは最初のチュートリアルもどきがあるだけで、基本的には自由行動。


Q,PKあり?

A,そもそもプレイヤー同士が転生した異世界で会うことはない。(それぞれ別世界に転生)

  転生した世界にいる住人たちに殺されることはあるという意味では、PKありということになるのでしょうか。

  ※プレイヤーはそれぞれ全く別の世界に転生することになるので、同じ世界で会うことはないです。


Q,PKなしってぬる過ぎね?

A,どういう意味でぬるいかはわかりませんが、そういうゲームだとご理解ください。

  (上司より)そもそもホモ・サピエンス人間同士の争いは、いくらでも地球上で見られるじゃないか。

        軽いもの(一対一)から重いもの(多対多)まで。こちらが用意したものでわざわざそんなものを見る価値がないな。


Q,プレイヤー同士で会わないということは、イベントや物品のやり取りなどもなし?

A,掲示板は最初から用意しているので好きに使える。ただし、ハウス入手後。

  物品の売買は今後のアップデートでサーバーごとの自動露店やオークションは用意する予定。

  プレイヤー同士のイベントなんかについては今のところ予定はないが、運営がやる気になればできるかも?

  (上司より)掲示板なんかで話が盛り上がればそれを参考に作るかもな!


Q,死に戻りができるということは、プレイヤーは不老不死?

A,死亡時のキャラはあくまでも再作成であって復活ではないので、最初から不老不死というわけではない。


Q,最初からということは、不老不死になる可能性もある?

A,可能性はゼロではないとだけ。


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 他にも細かい質問はたくさん出ていたが、この辺りが昭が読んでいて気になったところだ。

(A,)の文言がまちまちに見えるのは、答えているのが案内人と名乗ったあの美女だけではないからだそうだ。

 そのことは、掲示板内にわざわざ(上司より)という回答が混ざっていることからも分かる。

 運営に携わっている者たちは人知の及ばない力を持っているらしいが、それでもこれだけの人数の質問を一気に答えることはできないということだろう。

 

 そんなことを考えながら次はキャラ作成を……と画面に手を伸ばした昭だったが、その直前に室内に機械音声のような声が響いた。

『全てのプレイヤーの中から最初に転生した者がこのサーバーから出ました。最初に転生した者には特別な称号が送られます』

 とうやら早くもキャラ作成を終えて異世界へと旅立った者が出たようだった。

 そのこと自体も驚きだったが、それよりも音声の中にあった『特別な称号』というのが気になる。

 

 そう考えたのは昭だけではなかったようで、【Q&A】に戻ってみてみると既に説明を求めている者たちがいた。

 ただしそれについての返答は一律で、『他にもあるから探してみてね』というものだった。

 文言自体はもっと畏まってはいたが、言っていることは大体そんな感じで具体性のある説明はなかった。

 ゲームと考えれば当然であるが、いずれにしてもそれ以上のことは教えてくれなさそうだったので、昭は改めて【キャラクリエイト】の画面を開くのであった。



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