新人作家は書けずに消えるのではなく、書かせてもらえずに消えていく
最近、ユーチューブを見ることが多い。ミステリ作家の七尾与史さんの『印税生活ch』にアップされていた「デビュー作がベストセラーになるとどうなるのか?」を視聴して少し衝撃を受けた。
詳しい内容は直接ユーチューブで見てもらいたい。作家志望者には役に立つと思う。
話の中に出てくる「売れていない作家」というのはネコ係長にもあてはまりそうだ。
さっそく、彼の家を訪れてそのあたりの事情を尋ねることにした。
例の七尾さんの動画の話題をふると、ネコ係長はすぐに飛びついてきた。
「俺もあれは見た。作家系ユーチューブはチェックしているからな。言っていることは本当のことで、実際、売れていない作家はあれよりももっとひどいんじゃないかな。もっとも、売れている作家の実態は知らないんだけどな(苦笑い)。話に出てきたように売れているいないで編集者の対応が違うのは業界あるあるだ。知り合いの作家なんてゲラの終わった原稿が五ヶ月もほったらかしだったと言っていたし、刊行日がどんどんずれていって、本当に出版されるのか不安だという話も聞いた。俺だってプロットを提出してから、三ヶ月放置とかよくあることだ。売れっ子作家は別として、新人作家は次作のプロットを提出して、それが通らないと書かせてもらえない。少し前ならいざ知らず、一発でプロットが通るなんてことはない。というのも担当編集者の信頼がないからな。向こうだって慎重になるわけさ。デビュー作が売れれば、担当さんは七尾さんの話に出てきたようにメモ書き程度のプロットだってOKが出る。編集者は一人で何十人もの作家を抱えているから、売れている作家から時間を割くのはあたりまえだ。売れていない作家に時間をかけていたら、それこそコスパが悪い。で、売れていないとどんどん優先順位が下がっていって、後回しにされる。担当者の返事は次第に遅くなり、何ヶ月も連絡がないという状況になるのさ。よく新人作家が五年後に生き残っている確率は五パーセントとかいうじゃないか。つまり五パーセントの作家は優先的に書かせてもらえるから生き残れる。最初に売れないという烙印を押されたら、あとはもう知るべし。作家が消えていくのは、作品が書けなくなったからではなく、書かせてもらえないからなんだ。二年間プロットを提出しては駄目出しされて、いつまで経っても何も書かせてもらえなかったら、普通の人間だったらいやになるだろ。プロットが通って、初稿を書き上げたら没になったなんてケースもあるし。本がどれだけ売れたか、いまは調べる方法があって、版元以外でもあの作家のデビュー作は売れなかったという情報が筒抜けになっているから、違う版元からだって仕事の依頼は来ない。厳しい時代だよ」
本が売れているかどうか、業界内で情報が共有されているというのは、おそろしい話だ。冒頭の七尾さんの話ではないけど、デビュー作が売れるかどうかで、その後の作家生命がだいたいわかるというのは本当らしい。
私もデビュー作は精魂を費やしてみよう。ネコ係長のようにはなりたくない。
とりあえず、こんなところですが、またなにか思うところがあれば、追加するかもしれません。
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