第三章 はじまり
とある日の事だった。
また彼女に出会った。
それはいつもの屋上だった。
「よお、この間の。えーと、あんたの名前、何だっけ?」
突然彼女はやってきた。
「僕…?夢野創だよ…」
「あーそうそう。夢野ね。この間はごめん。たまたま苛立って屋上に行ったらあんたが居たもんでさ。本当、すまなかった!申し訳ない。」
彼女は深く頭を下げた。
僕は少し驚いた。かなりの問題児として有名な彼女だが、無愛想ではあるけどとても礼儀正しくて僕みたいなやつには到底無理だろうと言うほどの『申し訳ない』という反省の感情を見せた。
「いや!そんなに言わなくてもいいんだ…少し驚いただけだから…」
そんなに謝られるとは思ってなかったので戸惑ってしまった。
「いや!本当に悪かったんだ!読書の邪魔もしたし、突然面識もない奴に愚痴られるし、嫌だったろう?この間家に帰ってすげー反省したんだ!だからな!謝りたかったんだ!」
「いやいや!!そこまで言わなくていいんだ!そんな気にしてないよ!」
こちらが申し訳ない気分だ。
「いや!!!…?」
ガガガ、という音がどこからが聞こえてきた。
ドッ!!!!
いきなり地面が揺れた。
「うわっ!地震!?」
「いや…来たか…」
「は!?」
「おい!あんた!来い!」
「え?は?な、なんの事だよ!?」
意味もわからない僕は突然彼女に抱き抱えられたかと思うと、屋上のフェンスを登ってそのままジャンプした。
「ヒッ!?!?」
「落ちるなよ!」
彼女は人とは思えない脚力で飛び、そのまま校庭に着地した。
「な、な、な、なんだよ!?どうしたって言うの!?」
「今は危ねーんだ!下がってろ!」
そう言うと彼女は校内からパニックになった生徒と逆方向に走ってゆく。
「どこ行くんだよ!」
「うるせー!お前らは危ねーから下がってろ!」
「待ってよ!」
そうすると、視界がグニャリ、と曲がった。
何があったかはわからない。
ただ、そこまでは覚えていた。
目が覚めた頃にはまた屋上に居た。
「…?夢…か…」
でも、夢にしろやたら現実感が残っているような。
何だったのか。
結局分からなかった。
そして手元にはいつもの小説と
目の前には彼女が居た。
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