第9話 告白

 新しい現場が決定して数日後。俺は彼女、佐野さのさんを呼び出した。

「好きです。彼氏がいてもいい。2番目でも構わないので付き合ってください」

 俺はそう言って、告白した。色々な問題は後で考えればいい。とにかく自分の気持ちを伝えたかった。彼女に嫌われたみたいで焦っていた。ずっとあった胸のモヤモヤを晴らしたかった。

 彼女はとても困った顔をして、しばらく黙っていた。その間、俺は「あぁ、彼女を困らせてしまった」と自分を責めていた。

「無理です。ごめんなさい」

 彼女はそうはっきりと断ってくれた。しばらく黙っていたのは、俺を傷つけない方法を模索していたのだろうか。それとも、マジかよ、既婚者なのに何言ってんだよといきどおっていたのか。

「分かった。無理言ってごめん。忘れてください」

 俺はそう言って、無理に笑顔を作った。これで彼女が仕事がしづらくなってしまったら、申し訳ない。彼女には一切の非がないのだから。

 彼女が去ってしまっても、俺はしばらくその場を動くことはできなかった。

 無理だとは思っていた。それでも、フラれるのはショックだ。

 きっと心の何処かで1パーセントでも可能性があると思っていた。いや、そう信じていたかったのだろう。

 とにかく俺は彼女にはっきりとフラれた。

 今後は何事もなかったかのように仕事を続けるだけだ。

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