第2話 マンションにて

 部屋に入って冷房をかけ、冷えるのを待ちながらシャワーを浴びる。医者の言葉も夏の景色の暴力も、水と共にキレイさっぱり流れていく。頭から浴びた水が、顔から背中から、あらゆるところを経由して排水溝に消えていく。禊、という言葉が浮かんで消える。毎日毎日、浮かんでは消える単語たち。ひっきりなしに浮かぶ君達のせいで、すっかり私は不眠症者だよ。考えが散らかって来た、そろそろ出るとする。


部屋に戻ると、すっかり心地よい空気が出来上がっていた。プールの後のような気怠さと、空気の心地よさでだんだんと眠くなってくる。時間はまだ13時を回ったところだ。有給もとったことだし、昼寝という贅沢も良いじゃないかと、布団をいそいそと敷く。横たわったところまでは覚えている、すぐに眠りに落ちてしまった。


どのくらい寝ていたのであろう。薄く目を開けると部屋の中が仄暗い。窓に目を向けると、昼間の強烈なお天気とは一転、大雨となっていた。気温は少しは下がったのかしら、と窓を開けたらば予想外の驟雨で、慌てて窓を閉めた。


そのときである。するり、と私の脇の下を何かが入り込んだ。蛇?はこないだろう、ここは5階だ。何だったんだ。部屋の中を見回しても、別段変わったものはいなかった。何かを脳が誤判断したのであろう。私は一般的な人から見たら狂ってる。何かが入った気がする、くらい可愛いものだ。気を取り直して、もう少し寝ていようか夕食を作ろうか迷う。時計を見ると、16時だった。食欲はない。雨のせいか、中途半端な昼寝のせいか、怠かった。まだ暖かい布団に潜り込んで、タオルケットに包まれて幸せを満喫した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る