第2話 カーシャでございますわ!!

 精霊石を集め終わると、その数に心もとなく思った。

 もちろん幾つあれば良いというものでは無いが、魔法が使えないとなるとカーシャにとっては不安なものだった。


 周りを見回していたカーシャは閃いた。

「そうですわ、あの街灯の中にも精霊石があるに違いないですわ……」

 そう思い、人が居ないことを見計らって街灯に登りだした。

(少し、はしたない格好ですが仕方がありませんわね)


 上まで登って中を覗いてみたが特に目ぼしいものは無い。

「なんですかこれ?精霊石らしきものは見当たりませんわ……えっ?精霊石の反応は愚か魔力系の力も何も感じませんわ??……それどころかこの明かり、熱く寒くも無いではないですか?」


 たぶんLEDはカーシャの常識では理解できないものだ。

「この透明なものはガラスだと思いましたけど、なんか違うような気がしますわ…叩いた時の音が軽いですわ、どのような物で出来ているのでございましょうか?……」


 見たことも無いものに興味が湧いて、長い間街灯の上で一心不乱に色々やっていた。

「こらっ!!、そこで何をやっているんだ!!」

 下から声を掛けてくる者がいた。


 見ると帽子を来た男が二人こちらを見ていた。

(いけませんわ、珍しいものを見たので集中し過ぎましたわ、私としたことが迂闊でしたわ、仕方ありませんわ、なにか言い訳……、そうでございますわ)


 咄嗟に言い訳をするカーシャ……

「申し訳ございません、酔っ払いでございますわ……」

 今まで散々そう言われたので、そう答えたのだがあまり良い言い訳では無かった……


「坂上さん酔っ払いだそうですよ……」

「女の子だぞ……こんな時間に、大体言い方がおかしいぞ?ともかく保護しよう」


 一人の男が大きな声で叫んだ。

「ともかく降りて来い!!」

 

 このままではどうしようもないので、降りることにしたカーシャ

「しょうがありませんわね、降りることにいたしましょう……」


 カーシャは降りて行き、二人の側に寄った。

「おい、酔っぱらってなんかいないじゃないか……薬でもやっているのか?」


 カーシャは、また咄嗟に言い訳を考える。

「申し訳ございません、先程おかしな男が追いかけて参りましたもので、逃げていたのですわ」


「坂上さん、ストーカでしょうか?

 最近この辺りで被害が有ったとは聞いていませんが?」


「ともかく名前と住所を教えてくれるか……」


「名前はカーシャでございます、住所はえ~っ、遠いところでございますわ」


「遠いところ?馬鹿にしてるのか、しらばっくれても直ぐに分かるんだぞ……」


「ちょっと来てもらおうか……」


「あなた方こそ、乙女の色々なことを根掘り葉掘り聞きだそうとされるとは何者でございますか?ことと次第によっては相手になりますですわよ!!」


 カーシャは後ろに下がりながら格闘の型を取り始める。


「君ね……我々は本物の警察だよ……」

 そう言って手帳を見せる二人の巡査達。


 そう聞いて少し安心するカーシャ。

「手帳など見せて頂いても困りますわ、でも、警察のお方でございましたか、お仲間でございますね……」


「お仲間って……まずは署で話を聞こうか……」


 男は無線で連絡し始めた、そしてしばらくするとカーシャが始めて見るパトカーとか呼んでいる自動車とかいう乗り物が来た。


 そのパトカーというものに興味を持ったカーシャ、ジロジロ見ながら上や下を見ていた。


「この馬車は、馬は何処に隠してあるのでございますか?それとも馬は無くても魔法で動くのでございましょうか?そうでございました魔法は使えないのでございますよね、では精霊石の力でございますね?」


「何を言っているか分からんな、流行りのラノベの読み過ぎか?早く乗って……」


 そう言われ、カーシャは後部座席に乗せられた。

「座るところなどふわふわでございますね、凄いですわ、王様の馬車でもこんなフワフワでは無かったと思います!!」


 動き出すともっと驚いた。

「前の青や赤の綺麗に光輝いている文字が出ている水晶板は何でございますか?なにか魔法陣が出ているのでしょうか?……それとやはり、この乗り心地は揺れもなく本当に快適でございますね」


「少しは黙ってくれるか、ラノベの話は良いんだ、それより住所を教えなさい……」


「申し訳ございません、今日来たばかりでございますからこちらの住所はございませんのよ」


「家出少女か……、どっから来た」


「信じられませんでしょうが、別次元か別世界であるかと想像しております」


「ははははは、冗談は良いから君の居たところの話をしなさい」


「困りましたわ、本当のことを言っても信じて頂けませんね、どういたしましょうか……」


 カーシャは少し不味い状況だと判断し最終手段を取ることにした。


「申し訳ございません、本日は色々あり疲れてしまいましたわ、ふぁ~あ(あれ、はしたない)、もう寝させていただきますわ」


 男は慌てたように話しかける。

「おい寝る前に……」


 カーシャは寝息を立て眠りに着いた。ただし狸寝入りだが……

(このままではまずいですわね、なんとか脱出しなければダメでございますね……それにしても警察機構のわたくしが何故同業者の警察から逃げなければなりませんの?)


「西田、こいつ寝てしまったぞ本当に疲れていたんだろうな……家出少女か……相当な事情があるんだろうな署の仮眠用のベッドで寝かしてやろう」


 カーシャはその言葉を聞いていたが、眠ったふりは続けた。

「あれあれ、何やら優しいお言葉でございますこと……」


 警察署(交番とかいう所だったらしいが)に付くと「少し休んで良いが、後から調書取るから」と言われ仮眠部屋で眠ることを許された。


(どの様にして逃亡いたしましょうか……)

 カーシャはそう考えていた。


 ドド、ドン……


 だがその時大きな音がした。

「坂上さん大丈夫ですか?」

「西田逃げろ、銃を奪われた……」


「お前も銃を寄こせ……」


(あちらが、何やら騒がしいようですわね)

 そう思い様子を見に行くと二人が3人組の襲撃者に襲われていた。


 カーシャは魔法陣に術式を記述し、精霊石を握って術式を起動した。

「非常事態でございますからね、この術式は戦闘のための『身体強化』でございますわ」


 カーシャは3人組の一人に取り付き腹の急所に向けて高速チョップを入れる。

「うわっ!!」

 そう言うと男は気を失った。


「どうでございますか、別世界のお方もここは効きますでしょ……」


「こいつ何処から」

 そう言うと襲撃者の男が銃を撃ってきた。

 バン……


「ヒューン」と玉が音速を超えた速度でカーシャに向かってきた。

 だが身体強化しているカーシャは身体高速化もできるため、飛んでくる銃弾を一瞬でかわすと、その男の側に移動し武器を取り上げた。


 そして同じく急所を攻撃し倒した後、もう一人の方を向いた瞬間。


 その隙をついて、もう一人がナイフで襲ってくる。


 カーシャは瞬間的にショートソードを物入から取り出し男のナイフを迎えうった。


 ナイフとソードが打ち合わさる。


 カキーン

 

 ナイフは簡単に真ん中から真っ二つに切れた。


「如何でございますか、ミスリルのショートソードでございます、そんな鈍らナイフでは役に立ちませんことよ」


 そう言うと同じく腹の急所を攻撃し相手を倒した。


 ケガをした坂上巡査の傍ら行くカーシャ。

「大丈夫でございますか?、これを飲んでみてくださいませ」


 坂上に回復薬を飲むように言った。

「大丈夫か?変な薬じゃないよな……」


 何が起こったのか分からないまま、勧められた回復薬を飲む坂上巡査。


 西田巡査に「そこのあなた!!、犯人方を直ぐに拘束していただけますでしょうか?」と指示を出すカーシャ。


 犯人の拘束をし始める西田巡査。


 一方坂上巡査は驚いた。

「何が起こったんだ……、ナイフで切られた傷が消えている……」


 坂上巡査はカーシャの方向を信じられないという顔をして見た。

「君は…何者だ……」


わたくしはカーシャと申しますのよ、以後お見知りおきをお願い申し会上げますわ」

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