第419話:残る違和感。
正直言うと俺は、あの時のシルヴァの言葉をあまり信じていなかった。
俺がカオスリーヴァの空白を埋める事で回復を促す。
ただ、ママドラを納得させる為の方便だろうと思っていたし、ママドラもそれを分かっていながらそれに縋るしかなかったのだと。
そう思っていた。
しかし、ママドラはカオスリーヴァを確かに感じる事が出来ると言う。
もしかしたらいつの日か、本当にカオスリーヴァが自我を取り戻し復活できる……そんな未来が来るかもしれない。
『実は私もほんとかなって疑ってたし、方便なんだろうなって感じてはいたわ。でもリーヴァの最後の願いを聞かないわけにもいかないし、自分を納得させる為にはその可能性に
賭けるしかなかったのよね。彼の想いを台無しにしたくなかったから……』
ママドラも不安な自分を押し殺して辛い決断をした。
結果的には可能性が繋がったので結果オーライだったけれど、俺がママドラの立場だったら同じ選択ができただろうか?
……というか俺の中でカオスリーヴァの自我が復活したら頭の中でイチャイチャされるんだろ……?
やばいそれかなりキツイ。復活したら早々に切り離してしまおう。
『まったく君って人は……そんな事悩んでもなるようにしかならないしまだまだ先の話よ。彼の力だって今は必要なんだから』
分かってる。どちらにせよ全部丸く収まってからの話だな。
いや、待てよ……?
仮に平和な世界が来てカオスリーヴァも復活して、切り離したとしてもそれはそれで俺の身体をママドラが奪って物理的にイチャイチャし始める可能性もあるのか?
その方がよっぽどキツイぞどうしよう。
既にイルヴァリースは俺で俺はイルヴァリースなんだから逃げ道なんてどこにもない。
詰んだ……!
『諦めて私達と共に生きなさいな♪』
はぁ……とりあえずその時になったら真剣に考えよう。
それより、異次元に封印されていたカオスリーヴァをこっち側に引きずり出すなんてギャルンもとんでもねぇ事考えやがったよな。
ラヴィアンでの実験はこの為の布石だったんだろう。
でもラヴィアンでのギャルンの言葉を信じるのならばその時は目的が違ったはず。
もしかすると並行世界の六竜や魔王なんかを利用しようとしているうちに異次元のカオスリーヴァに気付いた……という可能性もあるか。
その辺の事実はギャルンにしか分からないが、どちらにせよ並行世界なんてふざけた物が存在しなくてよかった。
……んー、やっぱりなんか変だな。
『どうかしたの?』
ふと疑問に思って……というよりラヴィアンでギャルンの話を聞いた時からずっとおかしいと思ってた事があるんだ。
あの時点ではキララはまだ眠っていたし、だとしたら誰がギャルンに並行世界なんて概念を吹き込んだんだ?
この世界の常識だけで並行世界なんて概念にどうやったら辿り着くんだ?
やっぱり腑に落ちない。
ベッドに横になったままそんな事を考えていると、しばらく黙ってお茶を飲んでいたシルヴァが重い口を開く。
「……言うか言うまいか迷ったのだが、問題が一つ発生している」
俺は体を起こし、続きを促す。
「問題なんて山積みだろ? 何があった」
「……異次元に穴をあけた方法は覚えているか?」
「そりゃ障壁を張ってた街から光が……ん? そう言えばそれも変な話だよな」
そもそもなんで世界中の街から突然光が……?
「障壁を張っていた各街からあの光は立ち昇っていた。……この先は言わなくてもわかるだろう?」
「クソが……! そういう事かよ」
結論としてはとても簡単だが、違うと思いたかった。
「シルヴァ、俺は少し出てくるぞ」
「ああ、止めはしない。ミナトの好きにするがいい」
『ミナト君……』
いい、何も言わないでくれ。
俺はシュマルの研究所まで転移して目当ての人物を探すが、そこにはどうやら居ない様だ。
「ミナト! 久しぶりに会えて嬉しいぞ」
「……お前、シャイナか?」
研究所内に居るのも不思議だったが、そんな事よりも俺の知っているシャイナとは随分装いが違ったので一瞬気付かなかった。
「に、似合わないだろうか……?」
「いや、よく似合ってるさ。しかしどういう心境の変化だ?」
目の前に居るシャイナは以前ガリバンの防衛隊で会った時の男勝りで機能美を追求したような装備とは違い、とても可愛らしいワンピースを纏っていた。
髪の毛も首のあたりで二つに分けて縛っており、身なりに気を使いだしたのが見て取れる。
「……その、私、ミナトに来いって言われてたのに同盟会議に出席できなかっただろう?」
「あ、そう言えばそうだ。なんで来なかったんだよ」
実は俺もあの後ラヴィアンの件があったりイリスの件があったりでかなりドタバタしていたからシャイナに来るように言ってた事自体忘れてた。
ここで本人に「忘れてた」なんて言ったら完全に最悪な奴なので口が裂けても言えないが。
『さいてー』
うぅ……否定できん。
「本当は私だって行きたかったんだ。でもあの時ちょうど親戚に不幸があって出席できなくて……」
「そうだったのか。そういう事情なら気にする事は無いさ。むしろリザイン達が俺にその辺の事情を一切説明しなかった事の方がどうかと思うぜ」
……というかそれに出席できなかった事がその服装になるのとどう関係あるんだ?
『君は本当にそういう所ダメな子よね』
……分からん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます