第317話:新たなる問題。
「日程はいつ頃になる? こちらは出来る限り調整しよう」
『本来はそろそろだったのだがね、ミナトがのんびりしていた為に延期する事になった』
「おいおい、丁度良かったって言ってたじゃねぇかよ!」
『おや、覚えていたかね』
そう言ってシルヴァは笑う。
こいつ……さらっと俺のせいにしようとしやがって……。
『まぁ先ほどのは冗談でね、三週間後程度を予定している。ちなみに具体的な日にちが確定したら現場をどこにするにせよ移動手段はこちらで用意しよう』
「……ふふ、三国同盟か……こんな日がくるとは思ってもいなかった」
リザインが感慨深そうに天井を見上げる。
『いや、残念ながら三国、ではないかもしれない』
「は? おいシルヴァ、それはどういう……」
嫌だ、嫌な予感がビンビンする。
『君には他にもやってもらう事ができた、と言ってあっただろう?』
「おいおい……まさか四国目、なんて言わないだろうな?」
『そのまさか、だよ。これは私も想定外だったのだがね……君はラヴィアン王国という名前を聞いた事があるかな?』
ラヴィアンって言ったら……確か南の方にあるっていう領土の半分以上沙漠で覆われてるっていう国だったか。
「ラヴィアンは半年ほど前に滅びたという話を聞いたが?」
「えっ、そうなの!?」
リザインの話によるとラヴィアン王国は原因不明の光によって首都が消し飛んだ、という事らしい。
「……で、その滅びたラヴィアン王国がどうしたって? まさかなんで滅びたのか調査しに行けとか言うのか?」
『うーん……当たらずとも遠からず、と言ったところかな』
どうにもシルヴァの態度が煮え切らない。
「どうした? 言い淀むなんて珍しいな」
『うむ、それがな……まだ未確認の情報なのだがラヴィアン王国が復興しつつあるというのだ』
「結構な事じゃないか」
『原因不明の光で消し飛んだ首都がそのまま当時の姿で復活している、という情報が入っている』
……は?
消し飛んだはずの首都が元通りに復活してるって……?
「どういう事だよそりゃ」
『分らん。だから確認をお願いしたいと言っているのだよ。それに引っかかる部分もある』
こういう時は絶対ろくでもない情報が飛び出してくるに決まってる。
聞きたくは無いが止むを得まい。
「何が引っかかってるって? どうせお前の事だから何かしらの憶測はあるんだろう?」
『ふむ。やはりミナト、君は僕の事をよく理解しているね。好意に値するよ』
「待て待て、それはもういいから早く教えろ」
タチバナが居る場所で妙な事言い出すんじゃないよ。
「おー? 今のセリフどこかで聞いた事があるなぁ?」
ほら言わんこっちゃない……。
「タチバナ、今大事な話してるから口挟まないでくれ」
面倒な展開になる前に潰しておくに限る。
『実はな、その時発せられた謎の光、というのが気になって手を尽くし情報を収集していたのだ。先日やっとその時の光を遥か遠方から記録していた映像を見つけてね』
「映像記憶だと……? それも魔法か?」
『リリアにはそれなりに優秀な魔導士は居るがそれとは別だよ。旅の商人が偶然バードウォッチングとやらをしていたらしくてね。鳥の映像を特殊な魔道具で撮影していた所遥か遠方で謎の光が上がった、という流れらしい』
それを撮影した魔道具ってのも気になるが、そんな事よりよくもまぁそんな商人を見つけてきたな……。
「お前が見た所その光ってのはなんだったんだ? 大規模魔法か何かか?」
『うむ……それがな、どう見ても……ランガム大森林で作られていたという兵器に近い物を感じるのだ』
「なんだと!? ま、待てよ。お前は実際ランガムで作ってるっていう兵器は見てないだろう?」
そんなもん俺だって直接見てない。
イリスの一撃できっと消し飛んだと思っていたが……。
『実は暇を見つけてランガム大神殿へ出向き残骸の調査をしてきた』
こいつ暇人なのか……?
ランガム大森林の話を聞いてラムの表情が曇っていく。
嫌な事思い出させやがって……。
『既に建造されていた兵器は使い物にならない状態だったのだがね、その概要を見ればどんな物かは容易に想像がつく。完成していればきっと、あの映像に残っている光のようになっていただろうとね』
「じゃあ何か? ラヴィアン王国はあれと似た兵器を既に完成させていると?」
『その可能性はある。あるいは、暴発させたか……そのどちらかだろうね』
暴発……実験に失敗して自国を滅ぼした……?
『だとしても消えた街がそのまま復活しているのは不自然だろう?』
「なるほどな、そこで俺に調査してこいと?」
またこりゃ面倒な展開だな……。
『君がやるべき事はまずラヴィアン王国へ行き首都がどうなっているのかの確認。その上で可能ならば同盟参加を促す事、そしてあの光の正体を突き止める事、兵器だと確認できれば確実に破壊する事。最後に……首謀者を突き止めて消す事だ』
「問答無用で消すというのは賛同しかねるな……」
リザインは一応良識を持っているようで、シルヴァの言葉に引っかかる物を感じたようだ。
『この状況で首謀者が安全、或いは平和的解決を求めているとは到底思えない。問答無用で殲滅するのが一番確かな方法だ。更なる悲劇を生まない為にはね』
……更なる悲劇、それは俺に対しての皮肉だ。
「……分かった。その代わり現地に行ってどうするかは俺に一任しろ」
『……いいだろう。その代わり、迷いは捨てたまえよ』
シルヴァはいつになく真剣な声でそう言った。
そんな事は言われなくたって分かってんだよ。
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