第279話:場を荒らすのが趣味の奴。


『君ってどうして相手の気持ちが自分に向いてない時は純粋にえっちな事考えられるのに自分に向いた途端そうなっちゃうの?』


 待って人聞き悪い事言わないでくんない?

 俺がいつ純粋にえっちな事考えたんだよ。

 お5

 そもそも純粋にえっちって何?


『いつも特殊性癖全開じゃない。試験の時だってある意味特殊性癖の発露でしょう?』


 ……おま、俺の事いつもそんなふうに見てたのか……。

『そりゃそうよ』

 即答!?


「ユイシスに謝った方がいい」


「……うぅ」


 そうか、なんかデジャヴ感じると思ったらシャイナって出会ったばかりの頃のアリアにちょっと似てるのかもしれない。


『確かに意外と頭の中ピンクな所とか似てるかもしれないわね。アリアの方がボンキュッボンだけど』


 ボンキュッボンって言い方久しぶりに聞いたわ。

 でもスレンダーなのが悪い訳じゃないぞ? 控えめな胸には控えめな胸の良い所があるんだよ。


『……キモ』

 待ってどうしてそうなるの? 俺はシャイナを擁護しただけだが!?


『いつもはおっきい胸にメロメロな癖に急に貧乳を庇いだすからよ』

 俺はシャイナみたいな純粋な子を貶めたくないだけだってば!


『へぇ……つまり、ヤレそうなら誰でもいい……』

 人聞きの悪い事言わないでくれる!?


『……まぁそうよね。君は豊満バディが好きな反面ラムちゃんみたいなロリっ娘にも欲情できるペド野郎だものね。貧乳は貧乳の良さがある、か。覚えておくわ』


 ママドラの中で俺がどんどんヤバい奴になってくじゃん……。


「はぁ……ネコ、もういいからこっち来て座れ。俺の膝の上以外でな」


「はぁ~い♪」


 ネコはさっきまでほっぺを膨らましてこっちを威嚇してたのに、そんな事無かったかのように満面の笑みでテーブルの反対側から椅子を引っこ抜いて俺の隣に持ってきて座る。


 ……あっち側でいいのになんでこっちまで移動してくるかなぁ。


『ミナトノコトガ、トゥキダカラー!』

 うっさい。


『ちぇー、ノリ悪いゾ?』

 ティアみたいな喋り方すんなお前暇なのか?


『私が暇じゃない時など無いっ!』


 ……それもそうか。いろいろすまんな。


『よく考えたら誰かの頭の中に住み着いてそれを眺めてる事しか出来ないって相当辛い気がする。ママドラも文句言いながらいつも助けてくれてるしちょっと言い過ぎたかもしれない。もっと優しくしてあげよう』


 俺の感情を捏造しないでくれる?


「で? 大事な話ってのはなんだ?」


「う、うむ。そうだったな」


 やっと話が進められる……いったいこれだけの事でどうしてこんなにも時間がかかるんだ。


「じ、実はだな……その、入隊後になってこんな事を言うのは順序がおかしいのだが、情報の伝達がうまく行ってなかったのかミナト達のギルド登録時の情報がこちらにやっと流れてきたんだ」


 ……あぁ、そういう事か。


「……あっ、そう言えば君等は全員姉妹と記載されていたが……姉妹でそういう? えっ、姉がご主人? いや……でもそういう事もあるのか……? まだまだこの世は私の知らない事だらけだ……」


 なんか勝手に何かに気付いて勝手にへこんでいるようだがこれについては説明が難しい。

 姉妹として登録してしまった以上この国で俺達は姉妹だ。

 だけどシャイナの妙な誤解を解くためには姉妹でないと説明しなければならず、でもそれをカミングアウトするわけにもいかない。

 甘んじて姉妹百合疑惑を受け入れるしかないのだ……とほほ。


「と、とにかくだ。ミナト達のステータスなどを一通り確認させてもらったのだが……」


「おう。何か問題でもあったか?」


「……いや、どう考えても問題しかないだろう? なんだあのステータスは。誰がどう見てもおかしいだろう」


 シャイナは眉間に皺を寄せて自分のこめかみを拳でぐりぐりしている。


「ユイシスはともかく全員高レベル過ぎる。勿論ミナトの実力を目の当たりにした私にはそれが事実だと理解できているが、レベル18で神官職のユイシスが試験で見せたあの驚異的な強さ……アレはどういう事なんだ?」


 ほらアルマのせいでおかしな事になったーっ!


 どう考えてもやりすぎなんだよ。

『それは君も人の事言えないけどね』


「うちのネコはちょっと特殊なんだよ。半獣人……つまり獣人と、」


「人間とのハーフだろう? それくらいは理解している。だとしてそれがなんの説明になる?」


「実はそれだけじゃないんだ」


 適当な事言って場を濁すしかない。


「これはネコ本人もちゃんと自覚してない事なんだが、こいつの先祖にドラゴンの血が混ざってる」


「な、なんだって? つまり、ユイシスはドラゴンと人間と獣人の血を引いている、と?」


「つまりはそういう事だ。親が人間と獣人なんだから半獣人なのは確かだが、ステータス表記に家系図まで出ないからな」


 ネコは不思議そうに首を傾げてこっちをじーっと見ている。ちゃんと今の状況理解してるか? 俺がなんでこんな事言ってるか理解してるか? 頼むぞ余計な事を言わないでくれよ?


「なんと……なるほどな。ユイシスの強さの秘密はドラゴン……」


「はいですぅ♪ 身体に宿るドラゴンとお話もできますよぉ♪」


 ……ほら余計な事言った。こいつアホや。


「身体に宿るドラゴンと会話……? 血を引いているだけでなくユイシスの身体の中にはドラゴンそのものが眠っているというのか!?」


 ガタン、とシャイナが椅子から転げ落ちる。


 頼むからこれ以上事態をややこしくしないでくれ……。


 でも俺は忘れていた。

 話をややこしくするのが大好きな奴が居たって事を。


「……私はユイシス・ウィンザー・ニャンニャンの中に眠る六竜のアルマですわ。頭が高いですわよ人間」


 ……ほら出やがった。


 シャイナの反応が全くないのでそちらを見てみると、地面に尻もち付いた状態で極限まで目をかっぴらき、口は半開きで、目の前の半獣人が何を言ったのか理解できずにフリーズしていた。



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