第278話:クソが!
「そ、そうか……つまりユイシス殿がミナトの本妻でその他の子達も皆ミナトの……そういう事なんだな?」
「全然ちげーけど!?」
「その通りですぅ♪ ごしゅじんはこうやって否定してますけど、地元にはまだまだ沢山の女の子がごしゅじんの帰りを待ってるんですよぉ♪」
マジで黙れ貴様……!
俺がいくら睨んでもネコは「むっふー!」とか言ってドヤ顔を崩さない。筋金入りのアホだ。
「な、なるほど……これほど強いミナトなのだから自然と周りに人が集まってくるのも分る。英雄色を好むと言うしな……」
「いや待て誤解だ。俺はそんなんじゃ……」
「いいんだ。無理に気を使ってくれなくても。別に私だって……ミナトには出会ったばかりなのだからそんなおこがましい事は言わない」
そう言ってシャイナは掴んだままの俺の襟元を離し、ゆっくりと立ち上がる。
「しかし、だ。これから私を知ってもらう努力はさせてもらうぞ」
「だからなんでそうなるんだよ!」
こいつもなんか頭の中どうにかなっちまったんじゃないのか!?
『だとしたら完全に君の自業自得なのよねぇ……』
俺が何をした!
「……わ、私は……想いを募らせる事も、許されないのだろうか……?」
「ごしゅじん酷いです!」
うっすらと瞳に涙を滲ませるシャイナと、それを見て俺を非難するネコの図。
待って、これ俺が悪いの……?
『どう考えても君が悪い』
なんでよ……?
「シャイナさん、いいですか? 誰かが誰かを想う気持ちは尊いものです。私はそれを否定したりしませんよぉ! ご主人は共有財産なんですから諦めちゃダメですっ! ただ……独り占めはダメですからね?」
「お前は黙っとれ!」
ミナト共有財産化の動きは一体いつどういう流れで可決されたんだ? 俺の意思は何処へ行った!?
『君にとってはおいしい話でしょ? 何も損しないじゃない』
神経がすり減るの!
「ユイシス……分かった。本妻の君が言うのであれば私のこの想いは諦めなくてもいい物なんだな」
「その通りですぅ♪ でも私達の同志になるのなら協定違反は厳罰ですよぉ?」
「ふむ、詳しく聞かせてくれないか?」
「一つ、抜け駆け禁止。一つ、独り占め禁止。一つ、本妻の私を出し抜いてはならない。ですぅ♪」
知らねーなそんな協定いつ決まったんだよ!
『みんなずっと前からそういう話してたじゃない。君が皆の想いを無視して耳を塞いでたから来るとこまで来ちゃったのよ』
だからなんで俺のせいみたいになってるの?
「……分かった。肝に銘じておこう。つまり私はユイシスの許可さえあれば……」
「はい♪ 勿論大丈夫ですよぅ? なので一緒に頑張りましょうねぇ♪」
「ユイシス!」
「シャイナさん!」
ひしっ!!
『女の友情っていい物ねー』
抱き合っている二人を見てママドラは良い事言ったみたいな雰囲気を醸し出してくる。棒読みだけど。
「でもえっちなのはまだダメですよぉ? それは私からって決まってるので!」
「え、えええエッチな事!? そ、そんなの、私……恥ずかしい」
シャイナは自分の胸を腕で覆うようにしながらこちらを見て顔を赤らめる。
可愛いかよ糞が!
『なんでそこでキレるのよ……』
「それにごしゅじんは結構にむっつりさんなのでえっちな事で迫るとちょろっ、ころってなっちゃうので、禁止ですぅ」
「わ、分かった……そうか、ミナトは……むっつり……」
「待って、俺の目の前で俺の尊厳がどんどん奪われていくんだけどお前らいい加減にしろよ……?」
『ネコちゃんさすがよく見てるわねぇ……本質を理解しているわ』
うるせぇよ。
『でも待って、つまりネコちゃんはいつもエッチな展開を君が拒絶してるのは、むっつりで葛藤しながらもなんとか拒否してるって分かってるのね……うわー恥ずかしい』
やめて! それ以上は俺に効く。
「そんな事より! シャイナ、俺に何か話があったんじゃないのかよ」
「あっ、だから私も……ミナトを……」
「それじゃなくて! ジンバに何か頼まれてたんじゃないのか!?」
「……?」
どうしてそこで不思議そうな顔するんだよ。
「……ハッ、そ、そうだった! 大事な話があったんだった!」
「お前忘れてただろ……」
「ご、ごめんなさい……だって、私の感情今ぐちゃぐちゃで……み、ミナトのせい……なんだから」
可愛いかよ糞が!
『だからどうしてそこでキレるの……?』
「分かったから本題に入ろうぜ。ネコも座れ」
「はいですぅ♪」
俺が椅子に座ってシャイナに向き直ったら俺の膝の上にネコが「よいしょっと♪」とか言って座ってきたので部屋の隅に放り投げた。
「ふみゃーっ! ご、ごしゅじん酷いですぅ……」
「そうだぞミナト! 今のはいくらなんでも酷いじゃないか!」
えぇ……?
シャイナって真面目で純粋な感じあるから強く言い返せないんだが……。
「君の本妻なのだから照れ隠しで酷い事しちゃダメじゃないか……好きな人に冷たくされたら、その……結構……傷付くんだぞ?」
シャイナは胸の前で人差し指をちょんちょんとくっつけたり離したりしている。
あーもうその乙女ちっくムーブやめろ!
『だからなんで……』
可愛いからだよクソが!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます