第213話:邪教も邪教。
「ラムちゃんの予定じゃこれからどうするつもりだったんだ?」
「だからラムちゃんと呼ぶなと……まぁ良いのじゃ。これから、など勿論敵の拠点を叩くのみじゃっ!」
いやいや、そうはいかんでしょうよ。
ラムは椅子から立ち上がって腰に手を当てふんぞり返っていたが、そううまく行くとは思えない。
「いきなり本拠地はどう考えても無謀だろう?」
「拠点と言っても総本山という意味ではないぞ? 敵の拠点、なのじゃ」
ランガム教の拠点が本拠地以外にいくつかあるという事だろうか?
「儂らが調べた限りでは奴等の拠点は三つあるのじゃ。出来れば拠点攻略に協力してもらいたいんじゃが……」
ここまで来て断る方がどうかしてる。
それに俺は少女の涙には弱いからな。
『やーいろりこん。やっぱりロリペド犯罪者の血がうずくのかしらね?』
今だにどいつの事か分からんがそいつの話はするな俺とは関係ない。
『それもまたミナト君なのにねぇ?』
「……協力するのは構わない。乗りかかった船ってやつだしな。拠点の位置や敵の数とかは分かってるのか?」
『また無視? まぁ今は幼女との会話を楽しむ時間だものねぇ』
しつこい。
『むーっ!』
「拠点三か所はそれぞれ五百人程度駐留しているようじゃ。勿論完璧に、とは言えんがおおよそその程度じゃろう」
五百人……それが三か所で千五百人か。
「正直、全部落としたとしても数の優位性は揺らがないな……」
「しかしながらこれは儂らにとって大きな一歩なのじゃ。これを繰り返していけばいつかは……!」
気の長い話だ。しかし、今までもこの子らはずっとそうやってきたんだろう。
「ちなみにランガム教の親玉ってのはどんな奴なんだ?」
「知らぬ」
「知らぬってお前……」
いくら相手がでかい宗教団体で教祖やら親玉だかが表に出てこないとはいえ何も知らないって事はないだろう。
「知らぬ物は知らぬのじゃ。いつしかこの国に現れ妙な宗教を広めた。そして洗脳されたかのように人々はそれに従った……儂が知ってるのはそれだけじゃよ」
そいつの詳しい情報が広まる間もなくこの国を掌握されたって訳だ。なかなかのやり手だなそいつも。
「そして奴はこの国の名前を消し去った。今ではランガム教国と言い張っておる」
「ランガム教国ねぇ……ちょっと気になったんだがランガム教、って言うからには神として信奉している対象がいるんだろ? そいつらは何を信奉しているんだ?」
ラムは俺の質問にとても苦い顔をした。
「それを聞いても……まだ儂の味方をしてくれるじゃろうか?」
「当然だ。俺は一度決めたらそう簡単には揺らがねぇよ」
『本当かしら?』
ほんとなの!
「……六竜じゃ」
「……あ?」
六竜を信奉している宗教なのか?
じゃあ間違いなく破壊の権化だわ。
『失礼ね! 君絶対今私の事言ってるでしょ!?』
お前が昔暴れたせいでそんな信者ができたんだろうが……。
「ダリル王国にも聖竜教ってのがあるが……」
聖竜教に関してはそんな過激派じゃないけどな。
「おそらく信奉している竜が違うのじゃな」
『あっ、なんか物凄く嫌な予感がしてきたわ』
奇遇だな、俺もだよ。
「奴等が信奉しておるのは六竜の中でも最も危険と伝えられているカオスリーヴァという竜じゃ。お主がイルヴァリースならば知っているであろう?」
ほら来たよ……。邪教も邪教じゃねぇか。
お前の旦那だろ? なんとかしろよマジで……。
『元旦那よ元! あんな奴知らないわっ! それに……カオスリーヴァを信奉してるってだけで、奴が関係してるとは限らないじゃない』
まぁそりゃそうだわ。
「ちなみに俺達はそのカオスリーヴァって奴の分離体と交戦した事がある。面倒極まりない奴だからあいつが絡んでたら厄介だな……」
「ほんとなのじゃ!? という事は撃退しておるんじゃな!?」
「喜ぶのは早い。あくまでも大昔に分裂した分離体らしいからな」
もし奴が後ろに居るのなら今回も妙な策略を練ってるに違いない。
あいつの面倒な所はその力というよりも趣味の悪さだからな……。
「ど、どうじゃ……? 力を貸してもらえるじゃろうか?」
そんな潤んだ目で聞かれたらイエスとしか言えねぇよ。
『このろり……』
だまらっしゃい。
「カオスリーヴァなんて名前聞いちまったら余計手を貸さない訳にはいかなくなったよ」
「で、では……」
「おう。任せときな。で、どう攻める? プランは考えてるのか?」
ラムがボスだというのならば作戦等もこいつが立てているのだろうか?
「勿論じゃ。まずはきっちり拠点を潰したい。援軍が来る暇も無いほど一気に、纏めて殲滅できるのが理想じゃ」
もしそれを本気でやろうとしてるのなら戦力の分散が必要になってくるな……。
「一つはレジスタンスを一同に集めて攻め落とす。もう一か所はお主等で対応してもらえるとありがたいんじゃが……」
俺達三人で拠点一つ? もう一つがレジスタンスとして、まだ一か所あるだろう?
「残りの一か所は……儂が出る」
「そ、それはなりません!」
今まで黙って話を聞いていたヨーキスが慌てて立ち上がり、叫んだ。
「黙れヨーキス。無関係のミナト達がここまで力を貸してくれるというのじゃ。儂がのんびり高みの見物しとるわけにはいかんじゃろ」
言うじゃねぇか……ただ隠れている形だけのボスではないという事か。
ただ簡単にヨーキスが納得するとは思えない。
その証拠に、ヨーキスは鬼のような形相をしていた。
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