第211話:辺境のしょっぼいドラゴン。
「それでじゃ、本題なのじゃが……」
「すまん、その前にちょっといいか?」
「なんじゃまだ話の途中じゃろうが」
いや、ちょっとそれ以前にいろいろ問題が発生している。
「聞きたい事は山ほどあるんだが、とりあえずそのキキララってのやめてくれないか……? 俺は同じ名前の奴にめちゃくちゃトラウマがあるんだよ……」
よりによってキキララとは……。
「人の名前にケチつけるのはどうかと思うのじゃ……失礼な奴め。しかしお主もダメかー。ヨーキスもダンゲルも呼んでくれんのじゃ。気に入っとるのにのう。仕方ない、ラムと呼ぶといいのじゃ」
実はもう一つとっても気になってる問題がある。
「じゃあラムちゃんがレジスタンスのボスってのはマジなのか?」
目の前のラムちゃんとやらはどうみても幼女なんだよなぁ……。
髪の毛は綺麗な薄紫色をツインテールにしており、瞳はピンクで、豪華な巫女服みたいなのをダブっと着ている。どう見てもサイズがあってないので肩のあたりがずり落ちてる。
そして……。
俺の中でとんでもない問題をもう一つ見付けてしまった。
「ラムちゃんとはなんじゃラムちゃんとは! 儂は正当なる高貴なエルフの末裔じゃぞ!? 不敬じゃっ、不敬なのじゃっ!!」
「やっぱり! マジでエルフなのか!? すげぇ初めてみた!!」
そう、俺が見つけてしまった問題というのは尖った耳である。
エルフと言えば健全な日本の青少年ならば誰だって一度は見たいと思う種族だ。
そして俺は大のエルフ好きである。この世界にはエルフなんて存在しないと思ってた。
「おぉぉ!! エルフだ、マジでエルフだ……!」
「な、なんじゃ貴様っ! 近いっ! 近いのじゃーっ!」
「もっとよく見せてくれ! 特にその耳を……!」
「貴様ボスに何をするっ!!」
『ミナト君! ストップ、すとぉぉぉっぷ!』
「ハッ……! す、すまんつい興奮してしまった」
「こんな外見のボスに、こ、興奮とは破廉恥な……!」
「待てヨーキス、こやつも儂の高貴なオーラに目が眩んでしもうたんじゃろう。許してやるのじゃ」
「ご、ごめんなラムちゃん。エルフに会えたのが嬉しくてさ」
「ちゃんはやめいっ!」
『君がこれほどまでにペドいとは思ってなかったわ……』
俺がテンション上がってんのは幼女だからじゃなくてエルフだからだよ!
『エルフの何がそんなにいいんだか……』
ネコミミ女とエルフは俺にとって特別なの!
『……へぇ~、エルフと、ネコミミねぇ? なるほどなるほど~?』
……ママドラさん、今のはちょっとした失言だから忘れてくれると助かるんだが。
『どーしよかなー♪』
……よく考えたらお前が誰かに言う訳でもねぇしいいや。
『えっ、その開き直りはちょっと寂しい……』
それより今は大事な話をしてるとこなの!
『ちぇーっ。面白くなってきたと思ったのに』
「……まぁよいのじゃ。それよりそなたら人間ではあるまい」
「なんだと!?」
「ヨーキス、お主は少し黙っておれ」
「……はっ」
これは驚いたな……。
この幼女エルフがボスってのは本当らしい。
あの術式がどうのってのも全部この子がやってたって事に信憑性が出てきた。
というかヨーキスが俺の事をめちゃくちゃ睨んでくるんだが。
「してお主ら何者じゃ?」
「……うーん、あまり言いたくないんだけど」
この国では俺の正体は刺激が強すぎる気がするんだよなぁ。
「貴様、ボスが聞いているのだぞ!?」
「ヨーキス!」
「はっ!」
ヨーキスの視線がどんどんきつくなっていくんだが……ほんとにロリナみたいだなこいつ。
「教えるのは構わないんだが……それを聞いても俺達を嫌ったり恐れたり疑ったりしないと約束できるか? それさえ約束してくれるなら俺はラムちゃ……ラムを信じて話すよ」
ラムは俺の言葉に満足したのかふんぞり返って腕組みしながら笑った。
「なんじゃそんな事か。儂を誰だと思っとるんじゃ? 約束してやるから早く聞かせるのじゃ」
「絶対だぞ? 約束だからな?」
「くどいのじゃっ! はよ言え! これだけ渋っておいて大した話でなければ儂怒るぞ!」
そこまで言うのならいいだろう。少なくとも俺はこの子になら話してもいいと思ってる。
『ろりこん』
違う。
「俺は元、人間なんだよ」
「元、ときたか……なるほど、確かに何か混ざり物の気配を感じるのう? しかしそれは何じゃ? いや、皆まで言うな、分かったのじゃ。ドラゴンじゃな? 儂ともなればドラゴン程度恐るるに足らんのじゃっ」
すげぇな。ほんとに分かるのか……。
ほんと興味深いわこの子。
『ろりこん』
ラムちゃんは「ドラゴンなぞっ」とか言いながらぷるぷるしている。
「ちょっと震えてるじゃん」
「な、なな何を言う! 儂がそんじょそこいらのドラゴンに怯える訳がなかろう! どうせ辺境のしょっぼいドラゴンじゃろ!?」
「……」
『おーい無視しないでよろりこん』
どう、すっかなぁ。
『おーいってば! ……もう知らないっ』
「お、おい。何か言ったらどうじゃ? それとも……お主に同化しているのは少しは名の知れたドラゴンなんじゃろうか?」
名の知れたドラゴンってなんだよ。固有名詞のあるドラゴンなんて六竜以外にいるのか?
『ふんっだ』
拗ねるなよ……。
「どれ、そのドラゴンの名を教えてみよ」
……まぁいいか。
「イルヴァリースって知ってるか?」
「……もう、一度言ってみるのじゃ」
「イ・ル・ヴァ・リ・ー・ス!」
「ぎゃーっ! ヨーキス! ヨーキス! 儂を助けよ! 早く! 早く、早くなのじゃーっ!!」
ラムちゃんは椅子から転げ落ちて椅子の影に隠れ叫ぶ。
「ヨーキスぅぅっ!!」
呼びかけられているヨーキスと言えば……。
「こ、殺さないで、殺さないで……!」
頭を抱えて蹲っている。
「ちなみにこっちはイルヴァリースの娘で、名前はイリス……」
「ぎゃぁぁぁぁっ! 殺される! 儂殺される! とうちゃんかぁちゃんババ様、儂は今日会いに行く事になるのじゃ、も、もうだめじゃーっ!」
……やっべぇなこのリアクション想像以上だな……。
なんというか、ここまで来ると逆にテンション上がるわ。
『やっぱりろりこんだわ……』
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