第170話:英傑王のしましまぱんつ。
「俺はともかくなんでぽんぽこまで一緒にって事になったんだ?」
兵士の後を付いて行きながら気になった事を確認してみると、兵士も困ったようにこちらをチラリと見た。
「いやぁ、それがですねぇ……理由は一切教えてもらえて無いんですよ。ただ一緒に連れて来るようにと……」
「それは誰からの命令だ?」
「えっとですねぇ……どうなんだろこれ言っちゃっていいのかな……」
煮え切らない兵士にぽんぽこが詰め寄る。
「言うなとは言われて無いって事ですわよね!? 誰ですの!? いいなさい今すぐに!」
「うわわっ、離して下さい! 言います言いますからっ!」
ぽんぽこが兵士の首をぎゅっと絞め、そのまま落としてしまいそうな勢いだったので慌てて止めに入る。
こんなところで騒ぎを起こすのはまずい。
ただでさえ城までの道のりは街中を堂々と通っていて、周りには見物人が山ほどいるのだ。
「も、申し訳ありませんわミナト様……」
「それより、誰からの命令なのか教えろ」
「けほっ、けほっ、ヴァールハイト様ですよ……」
「ヴァールハイト! やっぱりあいつ……! あの男が何か企んでるのは間違いありませんわっ!!」
……確かにぽんぽこの言う通り何かを企んでいるのは間違いないだろう。
おそらくだがヴァールハイトはぽんぽこの正体を知っている。そうでなければ一緒に連れていく意味が無い。
ロリナなんかは「私も一緒に行くのだ!」と駄々をこねだして大変だった。
ヴァールハイトがロリナの事も把握しているとしたら奴は絶対呼ばないだろうな。
騒ぎが大きくなるだけだし……。
「隙ありぃぃっ!!」
一瞬何が起きたのか分からなかった。
何者かの襲撃を受けた。
魔物? それとも俺を恨む何者か?
俺の視界は自分のワンピースの布でいっぱいになる。
「ひぃぃぃ!! 何をやってるのこの子は!! お願いです、命だけは、命だけはぁぁっ!!」
「……え、何これどういう状況?」
俺には今の状況がまったく理解できなかった。
ただ俺の目の前には小さな子供がいて、その子供を守るように母親らしき人物が俺に泣きながら土下座してる。
「英傑王のぱんつはしましまぱんつ! みんなーっ! 僕はやったぞーっ!」
『ぎゃははははっ!!』
え、何どういう事!?
ママドラが脳内で笑い転げている。
「ば、馬鹿やめなさい! 殺されるわ……! ミナト様本当にごめんなさい! 殺すなら私だけに、この子だけはどうか……お願いします!!」
「……えっと……? もしかして俺今スカート捲りされたのか?」
「み、ミナト様のしまぱんを公衆の面前にさらすなんて許せませんわ! しまぱんが、ミナト様のしまぱんが! 死刑! こいつ死刑ぃぃーっ!!」
正直めっちゃ恥ずかしいけど相手が子供じゃ怒るに怒れない。
それにぽんぽこがとんでもない怒り方してるもんだから逆に俺は冷静になってしまった。
というかしまぱんしまぱん連呼するんじゃねぇよ。
「こら落ち着けぽんぽこ!」
「でもミナト様のしまぱんが……」
「もういい、分かったから! そこの親子!」
俺が声をかけると母親がビクっと身体を震わせる。
「別にいいよもう。それよりそのガキンチョだ。お前そんな事ばっかやってると男友達には人気出るかもしれないが女から嫌われるぞ?」
「いーもん僕女なんか興味ないもん!」
あぁ、俺もちっちゃい頃はこんなんだったかもしれねぇなぁ。
しゃがみ、男の子の目線と高さを合わせる。
「お前くらいの年齢だとそうかもなぁ。でもこれは覚えとけ。好きな子ができた時に後悔しないように。それと男女問わず自分より弱い奴の事はしっかり守ってやれ。馬鹿やってもいいから自分の信念を持ってそれを曲げずに頑張りな」
「なにそれよく分かんない」
「分かんなくていいんだよ。ただ俺の言った事を覚えておけばいい。いつか分かる日がくるから」
「……分かった。じゃあおねーちゃんが僕と結婚してよ」
何言ってんだこいつ。
「こ、こら! やめなさい失礼でしょ!?」
母親は大慌てである。
「ふふっ、俺はガキが嫌いなんだよ。早く大人になりな」
「おねーちゃんの言った事が分るようになれば大人になれる?」
「かもな」
子供は自分の掌をぎゅっと握って、こちらをまっすぐな瞳で見つめ、「がんばる」と言った。
こういう純粋な瞳で見られるのが嫌なんだ俺は……。
『自分が汚れ切ってるから?』
その通りだよちくしょう。
「さ、それが分かったら帰りな。あと母ちゃんは大事にしろよ? お前を守るために自分の命を差し出そうとしたんだからな」
「分かった! ママも友達もみんな守る! 僕ジェスタっていうんだ。覚えてね!」
「はいはい。ジェスタ、俺との約束守れよ?」
そう言って軽くハイタッチし、ぽんぽこと兵士達に「時間取らせて悪かったな。行こう」と告げた瞬間だ。
ぶわりと背後から再びワンピースが捲られ再び俺のしまぱんが衆目に晒される。
「こんガキャぁぁっ!!」
振り向いた時、既に母親は子供を担いで全力疾走していた。
「じゃーねー英傑王のおねーちゃーん!」
「クソガキがーっ! 約束ちゃんと守れよー?」
担がれ遠くに消えていく子供がこちらに一生懸命手を振ってくるのでつい笑顔で手を振り返してしまった。
……で、だ。
「おい、俺のぱんつを見てた奴等、今すぐ記憶から消せ。英傑王のぱんつがしまぱんだ、なんて噂が広まるようならお前ら全員シバきにいくからな」
集まっていた民衆は無言で必死に首を縦に振っていた。
「さ、じゃあ城まで行くとするか」
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