第130話:超絶完璧奥手人間ミナト君。


 俺達は一度家に帰り、一通りの事を皆に報告した。


「次は私を連れてってくださいよぅごしゅじーん」


 一息つくためにオッサに料理を作ってもらい、軽く食事を取ってその日は寝た。

 で、起きると隣にネコが居たという訳である。


「お前……勝手にベッドに入ってくるんじゃねぇよ」

「まぁまぁそれはいいじゃないですか~♪ そんな事より、次は女の子しか入れないんでしょう? だったら私! 私の出番ですよぅごしゅじん♪」

「じゃあお前がなんの役に立つんだよ……」

「ひどい……」


 ネコがぶわっと、分かりやすい泣き真似をして俺を揺さぶってくる。

 俺はこいつが自在に涙が出せるんじゃないかと思っていて、あまりネコの涙を信じていない。


『割と酷い奴ね』

 こいつのせいだろうが……。


「たくさん役に立ちますよぅ。性欲処理とか♪」

「それを見せられるアルマの身にもなってみろよ」

「アルマさんは意外と乗り気ですよぅ♪」

「……マジか」


 本当にアルマはネジが幾つかどこかへ行ってしまったらしい。


「ごしゅじんが私を連れて行くのが嫌ならせめてここで……!」

「分かった分かった、今回はネコ連れてってやるから。な? とりあえずベッドから出ろ。おい服を脱がそうとするな!」


「ミナトさまー? もうわたくし準備出来てますわよ! いつになったら出発するんで……す、の……? な、な、昼間っから何をしてるんですの不潔ですわーっ! やっぱり外見が女でも、六竜と同化してても、男は男なんですのね汚らわしいですわーっ!!」


「い、いや待て、これは違うんだって!」


 ネコに襲われかけているところを突然部屋にやってきたぽんぽこに見られてしまい、きっとあちこち走り回って言いふらすのかと思ったがこのお姫様は俺の想像を軽く超えていく。



「まったく、ミナトさんと言う人はっ、一体こんな所でっ、こっそりと、二人きりで、何をされていたんですのっ!?」


「待て待て、なんでこっち来るんだっ!?」


 ぽんぽこは肩を怒らせながらズカズカと部屋に入って来た。


「そもそもっ! ユイシスさんはミナトさんの妻なのですか!?」

「うにゃっ? 違いますよぅ。ごしゅじんは私のごしゅじんです♪ 勿論妻でもいいですけどぉ」

「という事はっ! 婚約している訳でもないのにいかがわしい事を!?」

「お、落ち着けって」


 こいつは何かヤバい。俺の本能がそう告げている。まともな奴の目じゃない。


「わたくし抜きでっ!」


「「……えっ?」」


 不覚にもネコとハモってしまった。


「六竜の一人イルヴァリースを宿したミナトさんっ!」

「は、はいっ」


 物凄い剣幕に思わず返事をしてしまった。


「貴女が愛人と何をされようと構いませんが中身は男性なのですからきちんと責任は持つべきですわ!」


「は、はい……?」


「つまりっ! する事をするのなら妻としてめとるべきだと言っておりますの! 勿論その中の一人としてわたくしは遠慮などするつもりありませんのでっ! そこの所忘れるべからずですわっ! では下で待っておりますのでお早めに済ませて来て下さいましっ!!」



 あまりの事に俺もネコも何も言えずに彼女の後ろ姿を見送った。


「ごしゅじん……つまり、どういう事ですぅ?」


「わ、分らん……何が言いたかったんだ?」


『朴念仁に分かりやすくかみ砕いて説明してあげましょうか?』

 あまり聞きたくない気もするが頼むよ。


『やる事やるなら責任を取ってちゃんと妻にしなさい。その中の一人にわたくしも入っているので覚悟しておけ……よ?』


 待てよ。前半はまだ理解できなくはない。至極全うな事を言ってる。それは分ってる。

 でもさ、後半おかしくねぇか?


『何が?』

 俺のどこにぽんぽこ姫に気に入られる要素があったよ!?


『そりゃ君が姫様に説教したり道を示したり目の前でかっこよく敵を倒したりしてるからでしょ?』

 それ本気で言ってるのか?

『遊び半分♪』

 だろうな……。


「しかし困った……」

「何が困ったんですぅ?」


 気が付いたらネコが俺の服の胸元部分をバガッと開けて谷間に顔を埋めていた。


「……お前なにやってんの?」

「だって姫様もやる事早くやってこいって言ってたじゃないですかぁ♪」


「はぁ、もう突っ込む気にもなれん……」


 最近俺の理解が及ばないような事ばかり起きてて疲れてしまった。

 こんな時は一発夢の種でもキメてから出発するかねぇ。


『危ない薬みたいに聞こえるけど大丈夫?』

 はは……でもそれくらいの楽しみがないとやってられんよ。


『ネコちゃんにとって今この時がソレなんじゃないの?』


 ……なんだと?


『彼女にとっての唯一の楽しみがミナト君といちゃいちゃする事なんじゃないの? って言ってるのよ』


 ……ふむ。仮にそんなふうに思って貰えていたとしよう。俺はそれに対してどう思う?


 別に悪い気はしない。悪い気はしないのだが……うーん。あまり宜しくはないよなぁ。


「おいネコ」

「うにゃ? ご、ごめんなさいそろそろやめますぅ」


 額に汗を浮かべながらネコが離れようとするのでその頭をとっ捕まえてわしゃわしゃ撫でまわした。


「な、なんですかぁっ!?」

「別に今みたいに服ひん剥いたりしなければたまには隣で寝たっていいぞ」


「……へ? ほん、とうですか?」


 おい、急にマジな顔するのやめろよ。


「ごしゅじん、私……ごしゅじんの事大好きですよ♪」


「わ、分ったから今日はここまでだ。ぽんぽこも待ってるんだから早く行くぞ」

「ふみゃっ、ごしゅじん待って下さいよぅ!」


 一刻も早く二人だけの空間から逃げ出したかった。これ以上は俺がもたん。


『はぁ……どうして君は人と親密になるのを怖がるのかしらねぇ』


 ……ろくな事にならねぇのを知ってるからだよ。


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